Dived by replicater

ハルにゃ

Act 0 A mole of Victim

たくさん、たくさん円柱ピットが並んでいた。ズラリとその広大な敷地中に、敷き詰めるように。

ピットの中には培養液に浸かったモノ達が並んでいた。魚のような姿をしたモノ、水掻きや、えらに似た物がついたモノ。イルカみたいな頭のモノや、ただの球に見えるモノ。目に見えていたのは、胎児だった。


『ここは、培養層。ホムンクルスとして、最低限のカタチを持てるようになるまでこの生理食塩水に浸けられます。そしてその後________』


メカニカルな声が淡々と説明を続ける。僕はガタガタと耳障りな音を立て進むコンベアに揺られ、この第六工場を眺めていた。何で私がこんなところの見学をしなければいけないのか。心の中で父を睨む。


地球にシュトロムが落ちて、クリーチャが現れて、六年。人類は未だかつての暮らしを取り戻せていない。この工場の名が第六なのだってクリーチャ共に歴史を喰い荒らされて来たからなのだ。地球の上を鉄の塊が駆けたり翔んだりしていた時代はもう喰い尽くされてしまった。そのお蔭で今やチェーンとディーゼルエンジンを使い、やっとこんなにうるさいコンベアを動かすことが出来る程度。その上人類が支配していた領域の七割はクリーチャの楽園となった。良いところなんて自殺が簡単になったくらいじゃないだろうか。


揺れが収まった。ゆっくりと上にシャッターが曳かれ、地獄が目に映し出される。

一面に血液や臓物が飛び散り、泣き声が響いている。プレスされて肉の塊になった元のカタチを保っていない死。腹を裂かれ、てらりとした腸を覗かせる死。背骨が身体を貫いている死。

死。死。死!

吐き気を抑えようとしゃがみこむ。何度もえづく。そんな私のことを気にもせずメカニカルボイスは告げる。曰く『耐久テストである』『肉体の強度や刺殺等の耐性を調べる』『ホムンクルスのがここで失敗作だと判断される』

コンベアは骨の砕ける音と、血の香りを残して泣き出しそうな私を連れて行く。


最後の部屋に辿り着く。私は目を逸らさずにいられなかった。拘束具に縛り付けられ身体に細工を施されていく私と同い年くらいの少年、少女達。成功率1%以下の手術。それがここの部屋で行われている実験だった。知識と行動制御データを脳に書き込み、身体に武器を仕込んでクリーチャ相手に突攻するというなんとも馬鹿げた作戦。失敗したモノ達は男は労働者として、女は性処理の道具として扱われる。死ぬまでひたすらに歯車として動かされるのだ。


一人の少年と目が合った。

少年はつい先程書き込まれた知識を持って、


『死んでしまえ。』


そう口を動かして運ばれて行った。

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