ショートショート

九里須 大

第1話ヒーロー

 偶然か必然の出会いと、非常識なアイテムのせいで、俺はある日ヒーローになった。

 拒否権はない。

 何かを信じる科学者みたいな奴に、悪と戦えと言われた。宇宙からか異次元からか、地球を征服するために何かの集団がやって来たそうだ。


 敵が来た。

 俺は変な掛け声とともに、目立たないように目立って変身した。

 非常識なアイテムは、俺の全身を強化スーツで包み込んだ。

 ホラー映画で出てきそうな人型の昆虫みたいな連中。うわ~、まじこえ~よ。全身スーツだから見えないだろうけど、顔がひきつっているし、足も震えている。


 グロテスクな集団が俺に迫ってくる。

 気持ちわりー!

 嫌だけど戦うしかない。

 俺はヒーローだから、やる気がなくても強い。がむしゃらにパンチやキックを繰り出しても、面白いように当たる。次々と悪を倒していく。

 雑魚キャラの後は今日のボスキャラ。一段とグロい奴。

 武器を持っていたり、光線とか出したりするけど、非常識はヒーローの方が一枚上手だ。

 派手な名前の必殺技でボスキャラを倒す。

 何故か爆発する。

 散々街中を散らかして、ヒーローは格好良く立ち去る。


 敵を殲滅するまで戦う。

 不規則な生活。眠れない日々。たまるストレス。プライベートな時間なんて一切ない。

 それでもヒーローは病気しないし倒れない。

 

 半年くらいそんな生活をしていると、食事を吐くことも夢でうなされることも無くなってきた。

 慣れてきた、と言うより、色々な感覚がマヒしてきたんだと思う。

 苦手だったゴキブリも素手で退治できるようになった。


 仲間も増えた。女の子がひとりいる。世間から隔離された生活。あまり外を出歩けないので、俺たちの性欲はその子で満たした。

 ヒーローは何をしても許される。

 

 この戦い、いつまで続くのか・・・・


 いつまででもいいさ。俺たちは死なないし、絶対に負けない。

 だってヒーローだから。

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