第4話 怒る男
――――、結論から言うと、俺は負けた。
天界に乗り込んで邪魔な天使共を蹴散らしながら神の住処に押し入ったのだが、当然ながら神は強かった。後から追い付いてきたエミと共闘したのだが、即席のパーティではチームワークを発揮することなどできる筈もない。むしろ同士討ちを恐れて一+一が二以下になってしまった感すらある。
俺には無駄に高いレベルのおかげで、力技で大木を根っこから引き抜いたり、鉄塊を飴細工みたいに捻じ曲げる怪力があるが、それも当たらなければ意味はない。
一応、神ののっぺらぼうみらいな一発だけ顔にいいパンチを入れてやって、その一発はそれなりに効いたみたいなのだが、何発もまぐれ当たりを許すような甘い相手じゃなかった。
『面白かったぜwww またいつでも挑戦してきな(笑)』
神は最後にそう言って、俺とエミは天界から蹴り落とされた。
ちなみに今は落下している最中だ。あと十秒くらいで地上に激突するだろう。
ゴッッ!
そのまま、一切勢いを減ずる事なく俺は地面に激突した。身体はほとんど土に埋もれており、俺が激突した辺りの地面はちょっとしたクレーターみたいに凹んでしまっている。エミは少し離れた所に落ちたようだが無事だろうか?
「あの野郎……(笑)」
地面に埋まったまま、俺はさっきの出来事を決して忘れないように繰り返し心の中で反芻していた。前世でも今生でも今まで感じた事のないような激しい怒りが燃え盛るのを感じる。
力だ、とにかく力が要る。
単純なレベル、ステータス、技術、そして仲間。
あらゆる手段を駆使して更なる力を得て、今度神の前に立つ時こそ必ずやぶちのめしてやる。
◆◆◆
「その為に具体的に何から始めようか?(笑)」
「やっぱり、まずは仲間を増やさないとねwww」
そうだった、頭に血が上って話の途中で天界まで行ってしまったが、エミは最初から仲間を増やす方向で考えていたんだったか。
「すまん、頭に血が上って予定を狂わせてしまったな(笑)」
「あんまり謝られてる気がしないわねぇww」
まあ、それに関しては仕方が無い。
「それに、収穫がなかったわけじゃないしww」
話を聞くと、前回エミ一人で戦った時よりもはるかに善戦できていたようだ。
神の野郎はすさまじく強いが、ダメージがなかったわけでもなかったようだし、戦力と戦法次第ではどうにかならない事もない、気がする。
「それで、仲間のアテだけど……www」
エミが『魔法大全』で調べた結果によると、俺達のような転生者らしき人物があと二人いるらしい。一人はこの国の都、もう一人は人里離れた山中にいるようだ。ちょっと探すのがイージー過ぎる気がするが、好き好んで苦労したいなんて思わないし、俺達にまともな聞き込みなんて出来そうにないので探す手段があってよかったと素直に思っておこう。
「その二人もどうせロクでもない目に合ってるんだろうな(笑)」
「同情するわwww」
そのまだ見ぬ仲間達がこんな言葉を聞いたら、怒られても文句は言えない気がするので、言葉の選び方は慎重にしなければ。
「ここから近いのは都にいる方ねww 先にそっちから行きましょうww」
「ああ、了解(笑)」
こうして俺達は仲間探しの旅を始めたのだ。
◆◆◆
「え、君達も日本人なの?(怒)」
「ひぃっ(笑)」
「ごめんなさい、ごめんなさいww」
特に苦労することも無く三人目の転生者が見つかりましたが、この人なんか超怖いんですけど。異様に迫力のある厳つい顔と身体付き、そして何よりドスの効いた声が魂を抉るようだ。まだ俺達とほとんど同じ年齢らしいけど、とてもそうは見えない。体育会系の運動部なんかだと、たまにオッサンみたいな風貌の十代がいるけど、まるで比較対象にもならない。
「別に怒ってないから、気軽に話そうよ(怒)」
「う、ウソだ(笑) あ、いや、ごめんなさい、命ばかりはお助けを(笑)」
そんな事を言ってるけど、言葉の裏から凄まじい怒気が滲み出ているんですよ。それも、そこらのチンピラみたいなのじゃなく、裏社会の頂点に君臨する親分(ゴッドファーザー)みたいな異様な迫力がある。口調自体はフレンドリーな雰囲気だけど、言われた通りに気軽に接しようものならコンクリ詰めにされて海に沈められそうな予感をヒシヒシと感じるのだ。
もし戦いになれば、そりゃあ俺達が簡単に負けることはないだろうと理性では分かっていても、本能的な部分にダイレクトに訴えかけてくるような恐怖感を感じる。
ぶっちゃけ、さっきまでの俺の神に対する怒りなんて子供だましだった事を思い知らされるというか、べつに悪い事をしてないのに土下座でもしたくなってくる。というか、実際に今している。気付いたらジャパニーズDOGEZAのポーズを無意識のうちに取っていた。異世界に転生しても俺の魂には日本人としての謝罪スタイルが根付いていたらしい。
「困ったな、せっかく同郷の人に会えたのに、これじゃちゃんと話も出来ないよ(怒)」
結局、多少なりともまともな意思疎通が出来るようになったのは、彼が俺達に会話に応じるように『命令』してからの事となるのだった。
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