深夜に幼女と出会ってしまった男は、彼女によって異世界へ連れて行かれる。どんなモンスターも余裕で瞬殺できる最強のステータスと、あらゆる意味で都合のいい住民たちを与えられ、彼がネットで読み漁っていた物語の主人公のような生活を実現するにはうってつけに思われたが……。
異世界で暮らす人たちにもそれぞれの人生がある。
なのにこちらのごく普通の言動に感嘆したり、ちょっと接触しただけで発情するのは、どう考えてもおかしい。モンスターに故なく殺されるなんて間違っている。
そこに気づいてしまった時点で、彼は主人公たりえなくなってしまったのだろう。
目の前にいる人々を「物語を盛り上げるモブ」あるいは「飽きたら消せるゲームのデータ」と見なせない彼にとって、ここは地獄に違いない。
それでも、少しだけ想像してしまう。いずれ彼が良心に疚しさを覚えることなくこの世界で何らかの活躍を果たせる日の来ることを(幼女がその前に飽きてしまわなければ、という条件付きだろうけれど)。
こうしたければこうするよね、こうすればこうなるよね、こうなればこういくよね、と万能の幼女視点から見れば筋道立てて展開している――ゆえに、当初の願望の問題が見えてくる――作品でもある。そんな幼女(の姿をした何か)が妙に可愛いのも印象的。