ノーベル魔術賞を狙ってます?
もちもちおもち
第1話 マンゴラゴラをゲットしたい
私が目指しているのはノーベル魔術賞。
魔法使いなら誰もが一度は憧れる大賢者になり得るための賞です。
そして、私が今からやること、それは成し得るためのプロセス。
さぁ始めましょう。大賢者を目指す研究を。未だ見ぬ未知と私が目指すものために。
「助手君、マンドラゴラが欲しいです。腐女子を五人ばかり用意してください」
「はい!
私の名は
続いて助手を紹介します。彼の名前は
さて話を戻しましょう。そうそうマンドラゴラの話。
これの和名は、腐り女々天狗くちゃいくちゃい
無様な名前ですが、あらゆる万薬の素となるすばらしいキノコです。さらに取得方法もかなりリーズナブルで、いわゆる腐女子の頭に生えてるので引っこ抜けばよろし。なお一般人には基本マンドラゴラは見えないし触れないです。まぁ一般の人でも霊感ならぬ魔感が強い人なら見て触ることもできるでしょうが、そのへんはぶっちゃけめんどくさいので説明を省きます。ちなみにマンドラゴラの見た目は赤紫の人面キノコでいいかと思います。
***
「連れてきました! 師匠!」
「いつもながら仕事が早くて助かります」
助手君が私のいる魔術研究室まで腐女子を五人連れてきました。もちろん誘拐などの日本の法律を破った処置はしていません。目を見て洗脳する魔法を使ってはいけませんなんて法律はどこにもないので。むしろマンドラゴラを腐女子の頭から抜き取ると、取られた本人の脳内がすっきりして健康によろし。生気を吸い上げてるマンドラゴラがいきなりいなくなるんだから当然ちゃ当然ですけど。
唐突ですが私の魔術研究室は十畳程の小さなスペースに、研究に必要な壺やら、調合液体のはいったフラスコやら、その程度があるぐらいです。けど日当たりはいいですよ、日当たりは。魔女勢は陰気な奴らが多いなんて思われたくないのですよ。
「
どれどれ? 私は横一列に並ぶ少女から真ん中の少女に目を向けます。素晴らしい逸材です。山姥を思わせるぼっさぼっさな髪。きついアンモニア臭。白かったであろうTシャツは小学生が一年使った雑巾の色。やばい、率直にやばいです。頭に生えてるマンドラゴラが嬉しさの余りプルプル震えてます。そそりたってます。
「君を弟子にしてこれほど嬉しかったことはないですよ」
「いやいやいや、それはそれで悲しいですよ。誕プレとかいろいろイベントあったじゃないですか」
「誕生日プレゼントですか? なにかくれましたっけ?」
「あげたじゃないですか! 呪術用の藁人形」
「あぁあれですか。ぱちもんでしたよ」
「え?」
「試しに助手君の髪の毛入れて神木に打ってみたんですけど君はピンピンしてます。結果ぱちもんです」
「........つらたん、つらたん」
冗談はさておき。早速、私はマンドラゴラの回収に取り掛かります。用意したものは、銀の箸、大きめの銀釜。それを研究机上のIHコンロに設置して準備万端。
では早速抜いていきましょう。まず魔気を手に宿らせます。魔物に俗するものに触れる時は魔気がなくては触れられません。魔法を使うものならこれは常識です。
横に5名腐女子がいるので、左から順に頭のマンドラゴラを手で抜いていきます。スポっと抜いて銀釜へポイ。スポっと抜いて銀釜へポイ。こんな感じで五人全てのマンドラゴラを銀釜に入れましてIHコンロのスイッチオン。
「ぐぇぇぇぇぇえはははぁぁぁぁぁぁあああ」
マンドラゴラは生きています。もうダメだと思うとこのように断末魔を高らかに唄いあげるのです。かわいいですね。心がほっこりしますね。このまま銀箸でかき混ぜるようにしてしばらく炒めます。
「助手君、その人たち家に返してといてください」
「わかりました」
助手の
「助手君、ないとは思うのだけど私には洗脳魔法つかわないでくださいね」
「それなら安心してください。一回試みたんですけど全然洗脳できなかったので。やっぱ絶対的な魔気量が
なるほど。鬼畜の極みですね。これは
「よく平気で仮にも師匠を洗脳しようとしましたね。そのぶっとんだ思考回路とイカれた行動力には舌を巻きます」
「いやいやいや、そんなに褒めてもなにも出ないですよ。
褒めてないし、見た目普通だけど中身チャラ男だし、得体の知れない合コンの数合わせにされてるし……だいぶ死なないかなぁ。ドロドロの液体状になり始めたマンゴラゴラを見つめがらふとそう私は思いました。
「そうですか。私は合コンには参加しません。せいぜい性病うつされないようにがんばってくさださい。あと誕生日プレゼントにくれた藁人形、今度は本物をくださいね。現在少々、呪術というものを試してみたい人物がおりますので」
「へぇ〜。ストレス社会っすね。いいですよ、いいですよ。次は本物いっちゃいますよ。誰だって殺したいほど憎いやつっていますもんね」
渡したその日が彼の命日になるので、生命保険をたくさん勧めたほうがいいでしょうか? あっ労災保険もかけといたほうがいいでしょうか? 銀釜の中のマンドラゴラは完全に紫色のヘドロ状態になりました。これが完成系です。IHコンロのスイッチをオフにし、しばらく熟成させます。
10分後。完成。
「できましたよ。助手君」
「ほんとですか? 今回はなんの薬ですか?」
「頭の薬だよ。これを頭に塗ると、たちまち煩悩が消え失せ、正常な思考をしてくれるようにようになります。では早速、出来を確かめてみましょうか」
「そうですね! 唯花師匠」
私は横にあるガラス棚から銀のおたまを取り出すと、ヘドロ状になったマンドラゴラを助手の照斗君目掛けてブン投げました。見事に彼の顔面にヒットです。ざぁまあないです。直に鼻から嗅いで取れる強烈な刺激臭に悶えればいいのです。
3分程でしょうか。寝そべり、殺虫剤をかけられたゴキブリのようにのたうち回っていた照斗君の動きがピクっと止まります。くたばりましたかね?
「おーい。助手君。生きてますか」
私の呼び声で再起動する照斗君。立ち上がると顔についたヘドロ状のそれを取らずに、それはそれは綺麗な宝石のような目をして、
「私はなんて罪深い人だったのでしょう。偽物の藁人形を我が師匠に送ったなどという事実、許すに許しがたい。どうかその罰をお与えください。その滑らかなカカト落とししてください。なんなら毎日あなた様のパンツを洗う係に任命されても構いません。とにかくいじめてください。気がすむまで罵しってください。それが私に対するご褒........戒めなのですから」
そう高らかに言いのけた。
私は照斗君の言葉、照斗君のアヘ顏、照斗君のクネクネさせた身体の動きを見ると落胆した。実験は失敗し、どうやらドMを誘発させるタイプの薬になってしまったらしいのです。
実験が失敗したことにため息を零す私。これからやることは解毒剤の調合。流石にこのままに私の助手をしておくと面倒なので。
でもその前にやることがあります。私は横にあるガラス棚からデジカメを取ると照斗君の変態的な言動をこと細かに録画していきました。一時間を超える超大作です。
〜〜今日の実験結果〜〜
ノーベル魔術賞を取れる成果がこの先現れるのか、将来について不安になる今日この頃でした。
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