荒魂―アラミタマ―

藤堂梅

序章

 雨上がりの空は青く透き通り、どこまでも広がっている。

 新緑の葉は水滴を弾き、眩い光を受けきらきらと光輝く。

 だけど彼はそんな光景に目もくれず、ただ一点を見つめていた。

 その視線の先にあるのは穏やかに微笑む少女。

 巫女装束を纏い、境内を掃くほうきを持ちこちらに視線を向けている。

 見えている。

 彼にはそう確信出来た。

 小さな口がゆっくりと開き、何かを口にしたその瞬間から彼は心に決めた。

 ――何があっても、護ろう。

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