箱庭ノ幻想曲
ふぃーあ@白ワンピP(仮)
prologue
箱庭ノ幻想曲
プロローグ
小さい時、私は母を亡くした。
だからわからない。両親がいる人々の幸せの形が。
ピアノの方がずっといいと思う。昔からずっとピアノがお母さんで、お友達だった。お母さんが亡くなって、同情の言葉が痛くて、家から逃げてきた。父の暴力と、暴言が辛くて逃げてきた。ピアノと共に。
ピアノは私が弾けば答えるし、弾かなければ無反応、無関心。放ってくれる。だからピアノがずっと好きだった。いつか、留学して母より優れる演奏者になって、マスコミを黙らせて、父さんを返してもらう。それが夢だ。
…いや、野望か。
自己紹介が遅れたけど、私は終 姫乃。高校三年生。18歳。一応周りの人々からは容姿端麗、成績優秀、ただ運動神経が全くないと言われている。運動神経が…ってのは認めるけど。
私は、二年前に引っ越ししたマンションの一室でピアノの鍵盤を眺める。
「惑星より木星…ねぇ…。」
ふわり、ふわりとピアノに触れて思い切り手を鍵盤に滑らせるように弾く。ピアノの音だけが響くこの部屋で、私はただただ、夢と希望を音に変えていく。リビングにあるピアノは母の形見だ。このピアノはベーゼンドルファーのエンペラーモデルで母が特注で買った物だ。母は世界を股にかけるピア二ストだった。
病死するまでは。
優しい面影のあの人は、面影をそのままにした優しさの溢れる人だった。忘れかけているが。
こんな想い出話に浸っていないで、飯食って、風呂入って、寝ないと…あ、音ゲーしてから寝よ。
「…炒飯…?美味しいんだろうけど…あんま食欲ないし、前貰った粥にしよ…」
家庭科とかあんまり好きではないけど、友人に父がシェフと言う子がいるので、ファイリングされたレシピファイルをよく貰う。だからと言って美味しいとか思えなかったりもする。私はピアノ以外みんな不器用なんだろうな…。
七草粥を机まで運び、頂きますと言って手を合わせ、スプーンを手に取る。
「美味しい…かも。」
勉強に手を付けつつ、七草粥を頬張りながらイヤフォンを付けて曲を聴く。疲れた身体に音楽が染み渡る。勉強は嫌いではないが、好きでもない。音楽以外興味はあんまりないから。だから成績優秀とか言われても困る訳だ。迷惑極まりないし、正直めんどくさい。友達もピアノ以外いらないし、ピアノで作ればいい。そう思いつつ、勉強も、食事も終わり、風呂に入って、寝巻きに着替えた後、布団にくるまりながら、大好きな音ゲーをやろうとスマホを開いた。
ピカッ!
スマホ画面から眩しい光が見えたと思ったら、私の意識は飛んでいった。
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