海の中で閉ざすもの…
@MatuMi
1海の中
君は海の中でずっと、目をつむっている。
昨日も、そして今も。
力を抜いて、流れるように。
ボクはそれをずっと、上から見ている。
昨日も、そして今も。
力を入れて、落とされぬように。
君は海の中でずっと、手を挙げている。
ボクに気づいて、それからずっと。
がんばって、ボクに届くように。
ボクはそれをずっと、上から見ている。
君を見つけて、それからずっと。
どうしても、届かないように。
雨が降って、雨水が顔に当たって、
ボクの顔は、上から伝う水に濡れてしまった。
風が吹けば、水が乾いてくれるけど、
それではボクが死んでしまう。
君は海の中でずっと、本当はもがいてる。
深いよ、暗いよと、ずっと、
そこから、出られるように。
ボクはそれをずっと、本当は知っている。
なのに、ボクはコワいと言いながら、
君が目を、開けるのを待っている。
君が目を開けたとしたら、ボクの背中を誰かが押した
水しぶきと、数え切れない白い泡。
ふと君を見ると、
君はすでに、海の外だった。
「次は君の番」
次はボクの番。
ボクは静かに、目を閉じた。
海の中で閉ざすもの… @MatuMi
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