SFで444書(あまぶん444書参加作品集)

生命のスープ(お題・スープ)

 生命のスープというものがある。非生物系の有機物を集めた、生物の素となったといわれる液滴だ。科学者はそこから生命が発生したことを証明する為、モデルケースでシミュレーションを行う、機器で深海並みの圧力を掛ける等、様々な方法で生命を創ろうと実験してきた。結果、細胞膜のようなものが生まれたり、細胞分裂のようなものを観測出来たが、生命が産まれることはなかった。それは億単位の時間経過の奇跡か、まさに神の手によるもの……と言われている。

 とある研究室で、とうとう『生命』が産まれた。顕微鏡の下、不規則に蠢く、それはまさに『生物』だ。

「とうとう、人類は『神の領域』に達した!」

 研究者達が沸き立ち、報道陣のフラッシュが瞬く。主任教授が向けられるマイクに笑顔で応える。

 ……教授、貴方が光を浴びる度に、壁の隅に映る影。その貴方の影の後ろに、翼のある山羊の影が憑いているように見えるのは、僕の目の錯覚なのでしょうか?

 影が産まれた『生命』の方を見る。その顔の口のあたりが、三日月形に開き……哄笑するように蠢いた。

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