第4話
私は次の日も次の日も野良猫を探した。
しかし見つからなかった。
日に日に悲しさと虚しさが積もっていった。
私の行動は無駄なんではないかと思い、そう考えるたびに胸のあたりがキリキリ痛くなる気がした。
ただ私にとって救いだったのは、ちよが一緒に探してくれていたことだ。
どこからともなくやってきて、パッと消えてしまう風のようなちよの存在が私のキリキリした胸を少し癒してくれた。
私と年は10以上違うであろうちよが私は好きになっていた。
この日も猫を探していた。
公園の周りの草むらを探していたら、ふいに肩を叩かれた。
振り向いてみると笑顔のちよがいた。
「これあげる。見つけたの。」
不意に差し出された泥だらけの手には四つ葉のクローバーがおかれていた。
「はい!奈々ちゃん。」
「あっありがと。」
なぜだか無性に嬉しくなって涙が出そうになったが、ぐっとこらえた。
「四つ葉のクローバーは幸せの印なんでしょ?2つ見つけたの。奈々ちゃんに1つあげるの。」
「そっか〜ありがとね。大事にするね。」
私はちよからもらった四つ葉のクローバーを持っていたノートの間に挟んだ。『以前もどこかで四つ葉のクローバーの話をしたっけ?』うっすらと何かを思い出しかけたがぼやけたままではっきりとは分からなかった。
「ちよちゃん。四つ葉のクローバーの話は誰から聞いたの?」
「前に奈々ちゃんが教えてくれたんだよー。」
「…そうだったかな。まぁいっか。」
記憶が飛んでるときの出来事かもしれないので気にしないでいた。毎日野良猫を探している自分が信じられなかった。
こんなにも何かに夢中になれるなんて思わなかった。
それは、猫を探してると必ずちよに会えるという期待があったからかもしれない。
しかし、今までの私とは違う新しい私が形成されているような気がした。
いや、むしろ昔の私が戻ってきた感覚であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます