第23話 一番つらかった4回目の抗がん剤


 数日後、今度は夫だけ新しい仕事のトレーニングのための出張に行く。また寂しくなる。母にはこのためにも来てもらっていた。病院に行く間に息子を見てもらおうと思っていたのだった。アメリカの法律では8歳の子供を一人家に置いて外出できないのだ。夫が出張に行った夜、息子はまた不安と日本旅行の疲れもあり、泣き出してしまった。


翌日外で少し遊んでから、昔好きだったドラクエを一緒にする。 すごく楽しそうだ。敵が出る音楽に合わせてジャンプをしている。日本語のゲームなので、この字はなに?なんていう意味?と、どんどん日本語を覚えていく。私も一緒に遊べるのはとても楽しかった。


いよいよ4回めの抗がん剤だ。 


前日夫の知り合いが病院に連れて行ってくれた。血液検査をして腫瘍科のドクターBの検診。翌朝また迎えに来てもらい、結局母も息子も病院に一緒にいくことになった。息子はおばあちゃんと一緒なら、泣きもせずに隣りに座ってミニゲームをしている。

ここも子供の入れない部屋なので、点滴のカートを押しながら出て行って時々話をする。


今回は一番ひどい副作用に悩まされた。4回目なので蓄積されているのかも知れない。終わってすぐに気持ち悪さや疲労感が来た。ベッドから出られなかった。


このACという種類の抗癌剤は4回でこれで終わりだけど、タキソールという抗癌剤も4回するという。これを聞いた時も落ち込んだ。


「4回だけではだめですか?もうかなり限界です」というと


「君次第だけどね、あまり良くないタイプだから叩いておいたほうが良いと思うよ。やめてもいいけどね」


そう言われると「やめます」と言いづらい。実は一度泣きながら「もうやめます」と言ったこともあった。副作用が激しかった時だ。


「やめたければやめてもいいんだよ」と言われ、はっとした。これは自分の為の治療なんだと。頼まれてしていることではないんだと。歯を食いしばり出来る限りの治療はしようと思った。


 夫は2週間後に帰って来る。カリフォルニアから夫の母もやってくる。その頃には少し元気になりたい。皆で出かけられたら良いなと思う。


今回は体の中で溜まりに溜まった抗がん剤が爆発している感じだ。あまりにも辛すぎる。 息子が夜泣いたので、つい怒ってしまった。母も言っても何日もシャワーをしてくれない。いらいらが続いていた。


横になっていることしか出来ないことが腹立たしい。食べ物も全部変な味だ。甘いのか辛いのかわからない。腐っていてもわからないかもしれない。舌の上に薄い紙を貼ってるような感じだ。何を食べてもがさごそして、変な味だ。 そのうち抗がん剤の味までしてきた。


食欲はゼロだけど何か口に入れなければと無理に食べる。目が開けられない。まぶたを持ち上げるのが、ものすごく疲れるのだった。 


早く元気になりたい。

ハワイに来た頃と今では見かけも体調もすごく変わった。今年中に治療が終わって元気になれたら良いなと思う。

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