第21話 乳がんになったから、見えてきたもの。
2人の母と中学校からの親友は心配して電話をよくかけてくれた。母は日本から来てくれているし、夫ママも1ヶ月後くらいに来てくれる予定になっていた。
友人から本や雑誌や食品が送られてきたり、カードやお見舞金を頂いたりもした。
離れていった人もいた。元小学校の関係者、いわゆるママ友と呼ばれる人たちなどだ。打ち明けるのは勇気がいるけれど急な引っ越しで言わないわけにはいかなかった。こういう重い病気にかかると、誰が本当に気にかけてくれているのかがよくわかる。生死にかかわる病人と関わり合いになりたくない人も多かった。
「なんと言っていいかわからなかったから……」と無視する人もいた。反対に何とか気持ちを伝えてくれようとする人もいる。普段絶対に言わないような友達が手紙に(大好き)と書いてくれて涙が出そうだった。
「大丈夫だから」「あきらめないで」「友達だから」というような気持が凝縮されているような気がした。
離れていった人たちのことは気にしないようにしようと後から思ったが、その当時は精神的にきつかった。
見えないものがあれこれと見えてくるのだけど、今まで目をつぶって見ないようにして来たこともたくさんあるんだなと思った。
優しい人の心に触れると嬉しくなるし元気が出てくる。 特に親友の明るい大きな声を聞くと元気がもりもりと出てくる。どれほど助けられたかわからない。
泣き虫の親友はわざと明るい声で
「ちょっと~元気~?あ、元気じゃないよねえ?わはは」なんて電話をしてくれる。
「だいじょうぶだって、昔から強いんだから、癌なんてやっつけちゃえ」と時々涙声になりながら、いろいろな言葉で励ましてくれた。
人は一人で生きているわけではない、沢山の人に支えられているのだと、病気をして初めてわかったのかもしれない。
夫と息子はかけがえのない宝物だ。存在そのものが生きる力になっていた。
こういう大病をしたから気がつけたのかもしれない。
そういう意味では乳がんをして悪かったことばかりではなかったと思う。
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