第10話 夜の海に石を投げる

このエッセイのタイトルは、ガイナックスの初代社長であったことでも有名な岡田斗司夫の講演で口になされたフレーズから取りました。


岡田斗司夫といえば僕くらいの年代のオタクにとって、いわばレジェンド中のレジェンドです。彼がその後のオタク世界やアニメ映像世界や、PCゲームに与えた影響などなど挙げていけばきりがないほどのモノスゴイ、スーパークリエイターです。


若い方にはピンと来ないかもしれませんが、とにかく凄いクリエイターとして活躍された方なのです。


そんなスゴイひとが講演でクリエイターとして活躍していた時代のことを語っていた時にふと口にされました。


「夜の海に石を投げるみたいな感じ」


確か新作のゲームを発売してすぐの時期の話だったと思います。そのゲームはまたも大ヒットし、さすがガイナックス!と当時のファンを沸かせたわけですが、作り手であった岡田斗司夫の内心はそういったものだったと告白してくれました。


自分の作るものは本当に面白いのか? 誰か手に取ってくれるのか?


反応がなにもなかったらどうしよう? 見向きもされなかったらどうしよう?


驚きです。当時なにを作っても注目を集めていたガイナックスの、しかも社長が内心ではこんな不安を抱えていたのですから。


そして、ここで自ら作品を書いてアップしている、あなたも同じようなことを考えているのではないでしょうか?


いや、どうやらクリエイターなら誰でも同じ不安に陥るようなのです。


向こうとはスケールが違う? 技術が違う? ファンのあるなしがある?


なるほど、違います。でも不安感まで違ってくるわけがありません。むしろ抱えているものが大きい分失う恐ろしさがあるだけに、プロなどはより怖いのではないでしょうか。


それにプロを引き合いに出したところで、あなたの不安がなくなるわけじゃありません。プロだってあなたと同じように不安を抱いていると知れば少しはコンプレックスの元などにならなくても良くなるのではないでしょうか。


それにしても、実に見事な比喩です。


夜の海に石を投げる。


真っ暗な中、できるのは水面に向かって石をひたすら投げ続けるだけ。


ここでのことなら、ひたすら作品を書いてアップするだけ。


クリエイティブ、というと聞こえは良いですがやってることはコレです。


これで僕たちはなにを得たいのでしょう?


気分が向いたので書いてみたからアップした?


昔からイメージしていた作品を書いてみたかった?


インスピレーションがわいたのでとにかく書いた?


それぞれ理由はあるでしょう。けどやっぱり、嬉しいのはひとから


「面白い!」といわれることでしょう。


これこそが知恵の実。そして禁断の果実。


そう、クリエイターが求めているものは実はすごくシンプルなもの。


プロだったらそれに加えてお金も稼がなきゃだけど、それでも一番欲しいのは、


「面白い!」「泣けた!」「笑えた!」「うは!こいつバカ!でも好き!」


こんな感じのシンプルなアンサーではありませんか?


ちょっと自慢をさせていただきます(失礼)


ちょいと昔、とあるSNSで趣味でショートショートを書いておりまして、そしたらまさかのファンがつきましてこっちがビックリ。前書きの毎日1本で100本達成を本当にしなくてはならなくなりました。(ガチできつかった)


そんでなんとか毎日連続で100本達成を記念して中編を書いてみたら、ファンの方々にぴったりとハマった内容だったらしく、ガチで「面白かった」「泣けた」という感想をいただき、そのSNSが潰れた今も、すっかりその衝動にハマってしまい現在もこうして書き続けている次第。


なにがいいたいかというと、、ということです。


作者と読者は相性次第なことが大きい。アメリカで一番売れているS・キングですら嫌うひとはそれはもう大勢いる。


あなたの作品が今、評価されていないのは単に巡り合わせが悪いだけかもしれない。


巡り合わせが悪いのは閲覧数が少ないからなのかもしれない。


そう。「かもしれない」ばかりです。


だからこそ、夜の海に石を投げる、ことを繰り返すしかない。


こっちで工夫できることは、少しでも良い石を投げることしかない。


また無駄かもしれない。


次は違うかもしれない。


あなたは次も投げますか?




ではでは~♪

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