黒松きりんの「文章4コマ」
黒松きりん
山羊と手紙 一通目
「起」
五月の連休明けに、前の職場で同じチームだった白山羊から封書が届いた。
「承」
白山羊とは特に親しくした記憶が無い。わざわざ封書が来る理由も見当がつかない。ただ、前足にとった封書は、やたらと良い紙が使われていることは分かる。自分も山羊の端くれ、しかも(人間界では白いほうが『アルビノ』としてもて囃されるらしいが、この山羊界においては今季流行色である黒を纏った)黒山羊であって、この紙が良い味をしていることぐらいは想像できる。
「転」
封書を開けず、そのまま口にした。美味い。お中元で再度送ってくれないだろうか。
「結」
跡形もなく食べ終えたところで、携帯を手に取りSNSを開く。
「最近、わたし宛に、とても美味しい紙で書かれた封書を送ってくださった方へ。すみません、あまりに美味しかったので住所を控えておらず、SNS経由で失礼します。また出会いたくなるような味わいでした。ごちそうさまでした。もしよろしければ、販売店をコメントいただくか、再度送っていただければ幸いです。また、内容についても(大変恐縮ではございますが)お教えくださるようお願いします」
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