犬岡くんと猫山さん

@kumanekogirl

第1話犬岡さんと猫山さん

京都立藤吉高等学校屋上 午後13時50分

5時限目スタートまであと10分


「予鈴がなるまであと10分、分かってるのかしら?」


屋上に吹く風にショートボブと制服のワンピースが揺れる


「やあ猫山さん、風が気持ちいね」


屋上に寝ころび少しパーマがかかった髪が乱れている


「一生そこで寝てればいいわ」


きつく言葉を放ち猫山は犬岡の顔を一蹴りし教室へ向かう

犬岡も体を起こし猫山についていく



犬岡家と猫山家は代々続く由緒ある家

両家は古くから対立しており争うこともあった

だが、月日は流れその関係も緩和しつつあった

犬岡家次男「犬岡 棗」京都立藤吉高等学校 文学部3年生

彼は昔の関係も特に気にせずのんびりとした性格

時間にルーズなためよく怒られる

2つ上に長男の犬岡 柊がいる

一方、猫山家次女「猫山 椿」京都立藤吉高等学校 理学部3年生

彼女はなにに対しても常に気を張っているため少し棘がある

両家の関係も素直になじめずにいた


2人は幼なじみだったが18年たった今でも椿は良好的に思えなかった


3年A組教室

「今日はどこにいたの?」

「屋上。まったく、情けない。」

「でも、気にかけてあげてるんだよね~」

「違う、そんなんじゃない!」

「またまた~」

教室に戻ると猫山の友人荻原 さくらが話しかけてきた

さくらは女子高生らしく明るく活発的な性格で冷徹な椿とは対照的であっても仲がとてもいい

「放課後、どっか寄っていこうよ」

「ごめん、生徒会の仕事まだ残ってるのよ」

「あーそっか・・・分かった!じゃあ今度の土曜日遊びに行ってもいい?おばさんのわらびもち食べたい!」

「分かった、母さんに伝えとく」


3年B組

窓辺の席で机につっぷくして寝ている犬岡に日直で犬岡の友人の神崎 隼人が近づく「犬岡~日誌持っていくぞ」

「・・・任せた」

「なにが『任せた』だ。お前今日俺と日直だろうが」

「分かったよ・・・行くよ・・・」


そんな平凡な高校生活が流れ冬、進路を決める時期になった


京都立藤吉高等学校図書室


「猫山さんは進路どうすんの?家継ぐの?それとも進学?」

「進学。家を継ぐのは兄だから気にせず進みたい所に行くようにと言われてるわ」

「やっぱり?俺も家のことはとりあえずいいから進みたいとこに行けってさ」

「どうせ文系でしょ。」

「うん、今のところそんな感じ。猫山さんはやっぱり理系なんでしょ?」

「迷ったけど、理系になりそう」

「ふーん、そっかぁ」


猫山家

「ただいま」

「おかえり、進路はどうなった?」

「着替えてからでもいい?それから話すわ」

「ええ、たーっぷり説明して頂戴」

母との会話を後にして自分の部屋に行く

「棗はどこの大学かしら・・・」

とつぶやいた。すると隣の姉の部屋から

「やーっぱり気になってるじゃん」

「どんな地獄耳よ」

「違う大学だと一緒にいられる時間も減るわね~」

「別にいいでしょ。棗は棗、私は私の行きたい道があるんですもの。」

「そう?ならいいけど後悔しても知らないわよ~」

「着替えてるからあとにして」

「はいはい」

椿は姉の言われたことが理解できなかった

なぜ私が棗と違う学校に行くと公開するのか、なぜ棗の進学先を気にしているのか


夕食がテーブルの上に並ぶ

「さて、椿どうするの?」

「今のところ朝槻大学理学部に行くつもり」

「へぇ、朝槻ね~いいじゃない!棗君は?」

「知らない。」

「そう」


京都府内の駅から近く家からも近い

将来どんな職業につくかも考えていなかったが理系で一番条件が良かったためそこにした


次の日の猫山家


猫山家の呼び鈴がなる

「あら、犬岡さん!どうされたの?」

「昨日最中作ってね、よかったらどうかしら?」

「まあ!最中!私好きなのよ~!立ち話もなんですし中どうぞ!」

「じゃあお言葉に甘えておじゃまします」

隣の犬岡家から棗の母 犬岡 紗江子が最中を渡しに来た

「そういえば椿ちゃん進路決まった?」

「昨日やっと話したのよ!朝槻大学ですって」

「まあ!朝槻なの!」

「棗君は?」

「朝槻!また一緒ね~」

「学部は?」

「とりあえず文学部ですって。」

「あら、学部は離れちゃうのね。うちは理学部なのよ」

「そうなの・・・まあ、学校は同じでよかったわ。椿ちゃんいなかったら高校卒業も危うかったもの」

「そんなことないでしょ?棗君卒業論文賞いただいたんでしょう?」

「たまたまよ。椿ちゃんだって研究論文書いて文部科学省いただいているじゃない!」

「たまたまよ~。気まぐれかなんかよ」


―ーーーーー棗と椿が同じ大学になることを2人はまだ知らなかった。

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