萌黄色の恋
村乃
萌黄色の恋
絶対音感と相対音勘
これはかなり昔の話。
高校生の頃、僕が初めて絶対音感の人を間近に見た時の話。
その人は僕の目の前で、和音だろうがいとも簡単に聴き分けていた。音感のない一般人にとってはもはや魔法のそれだ。
もうどんなに足掻いてもだいぶ手遅れだと知ってはいたが、その魔法が欲しいと思った。だから僕はその人に音を聴き分けるコツを聞いた。
「そうだなぁ、よくわからないけど、単音ごとに色があるよね」
「色? 例えばレは?」
「んー、黄色かな。ソは青っぽい感じ」
「あーそう言われると。じゃあファは肌色っぽい気がするな」
「うんうん。音の色を想像したら何の音階かわかるかも」
その答えは僕の無理難題な願いからその時咄嗟に考えた1つの策であって、絶対音感がある人が実際にこの方法で習得しているわけはない。
「無理だよ」なんて言いたくなかったんだと思う。
多分そんな時期だったから。
まあ勿論、言うまでもなく、この方法で音を見分けられるはずもなかった。すべての音が黄色だったり青かったりするのだから。
ラは橙色。
ミはオレンジ色。
シはかなり薄い黄色。
ドは緑色。
僕にはそう見える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます