リアル脱出ゲームの始まり
祖母が身罷りまして。まあ悲しくはあるものの、米寿はすぎてますし、そのお祝いもできたし、本人は完全にボケてたしで、こう、深く慟哭するって感じではない。しみじみとした寂寥感がある。詳しいことは、月曜・火曜で行事ごとをやるはずなので、まあその時に話すことになると思うが、我々兄弟は、さすが兄弟、全く同じことを思い出していた。
祖母には子供が三人いて、長男が俺の親父、あと次男と長女がいるのだが、長女は結婚しなかったということもあって、「家」を継いだ——というのは、家業があるわけではなくって、物理的な居住施設としての「家」のこと——のは長女(俺から見たら叔母なので、とりあえず「叔母」と書いておきます)であった。で、この「家」は、二階建ての4LDKの一軒家で、そんなに爆裂に広いわけではないものの、なんだかんだ結構、愚にもつかないものがある。例えば、階段の途中になんか棚的なスペースがあるんだが、そこには靴買った時についてくる靴箱が山のように積まれている。これは祖母の仕業っていうか、習癖というか、とにかくそんなで、まあ、やっぱ断捨離っていうのは新しいメンタリティなんでしょうね。ちょっと古い人間は、綺麗な箱とか袋とかって捨てられず、取っておく性質があるのだと思う。祖父はまだ健在で、この「家」で叔母さんと同居しているので、だいぶ前にリフォームはしているはずで、そん時にちょっと捨てたりなんだりをしているはずだが、まだ結構物がある。
まあ別に。あって困るものでもないでしょう。なんならそれこそ断捨離じゃあないが、一気呵成に形見分けの勢いで捨てれば? とみなさんは素朴に思われるかもしれないが、実はそうはいかない可能性があるんですよ。というのは、なんか、黒後家蜘蛛の会の導入みたいな話であるが、祖母が生前、叔母にこう言ったらしい。「あんたの結婚資金だと思って貯めてたお金があって、その通帳は靴箱の中にしまってあるからね。長男と次男には内緒で、使っていいからね」と。で、2020年に弟の結婚式で会った時だったか、もっと前だったか忘れたが、普通にその話を暴露していた。で、まあそれはいいというか、別に普通に叔母さんが旅行とかに行くのに使っていただければいいと思うのであるが、問題は、
1.どの靴箱に入ってるのかわからない
2.そういうことを言い出したからには、もしかすると、他のきょうだい向けとか、自分のへそくりとかで、他にも「どこか」に隠している可能性がある。
どうですか。ちょっとゾワっとしませんか。
これでだからそのー、「あんたの結婚資金の隠し場所は、『桃太郎のパラドクス』だよ。いいかい、『桃太郎のパラドクス』だからね」とかが遺言になってて、俺がちょっといい食事会に招かれてメンバーに相談したあと、そこの給仕さんが「差し出がましいようですが、お婆さまのお部屋かどこかに、お仏壇と神棚はございませんでしょうか?」とか言い出して、「あるけど、どうしてわかったんだい? 僕はそんなこと言わなかったと思うけど」「はい、申し上げておりません。しかしながら、桃と言いますのは、黄泉平坂で死者を退けるのに用いた神聖な果実でございます。ところが、鬼というのは、これは明らかに仏敵でして、神道ではそもそもあまり相手にされておりません。従いまして、蓮から生まれた蓮太郎でありますならばともかく、桃から生まれた桃太郎が、鬼を退けるというのは、これは道理に合いません。聞けば、お婆さまは日本神話などの古代宗教学をお好みになったご様子。この矛盾にお気づきになって以来、ずっと気になっていたのであろうと思います。神棚に鬼の意匠の小箱があるか、お仏壇に桃の意匠の小箱があるか、きっとどちらかであるかと思います」
聞くが早いか、雅島は電話を手に取った。
「ああ、叔母さん? 先日はどうも。うん、そう。いや、例のおばあさんの話なんだけれどね。神棚に、鬼のマークがついたものってないかな。え? ああ、俺が昔描いた鬼のお面が飾ってあるって? それをちょっと良く見てみてよ。例えば、そうだなあ、紙が二重になってたりしないかな。……なっている? 通帳が? うん、そうそう。いや、旅行にでも使ってよ。それじゃあ、また
「いやあ、給仕さんの言う通りだったよ。全く素晴らしい。手数料をお支払いしたいくらいなのだが……」
「私は皆様が枝葉を落として下すった後に残った道をただ指し示しただけにすぎません。それに、この会の給仕としまして、十分なものを頂戴しております。わたくしの願いは、ただここで、皆さんに、鬼の居ぬ間に洗濯をしていただきたいだけでございます」
的な感じになったらいいんだけど、そういう「ヒント」もないわけなんだよね。ってことは……つまり……。家探しが必要なのでは? ヒエー。まあ、そんな資産家ってわけではないですからね。莫大な遺産が隠されていることは物理的にというか、実質的にはありえないので、現実的な解法としては、靴箱は全部開けて、その叔母さん宛の通帳か封筒かなんかを見つけたら話はそこで終わりで、まあ他の物はちょこちょこ捨てるか……。気になるなら一回開くなり捲るなりするか……って感じだと思いますが、ま、弟とちょっと電話してそう言う話をしたと言う感じでした。最近は全然行ってないが、初期の「リアル脱出ゲーム」の、特に「ルーム型」って言われる公演では、結構隅々までものをひっくり返して探してたんですよね。特に——————————という初期の名作公演では、——を———ないと見つからない—があって、かなり興奮したのであるが、だから俺らがもうちょっと若くて暇だったらやってもよかったんですけどね。「祖母の遺言からの脱出」。まあ、あんまり良く知らないんだが、49日とか? に一回は祖母の家にお線香あげに行くことになるとは思うので、その時に、叔母さんが援助要請してきたら、その分は労働しようかって話して弟との電話は切った。切ったあとで不謹慎兄弟かもなと思った。
あとはそうですね、火曜日にFacebookで人生相談送ってきてた人と、若い若いと思ってたがもう31歳になるって聞いてドヒェーってなったが、とにかく昼飯食いながら話した。ただ、昨日もちょっと書いたけど、かなり「実社会」に関する相談でね。何しろ俺のいるところ、「実社会」
2023年02月19日 11時46分の測定結果
体重:103.90kg 体脂肪率:34.20% 筋肉量:64.80kg 体内年齢:51歳
穏やかに、酒も飲まずに、ちょっといい食事を少量しただけのつもりであったが、やっぱ外食というのは強いですね。今日は運動をしますと言いたいところだが、それでちょっと数珠とかくらいは用意しようかなという気持ちがあって、このあとは買い物に出かけようと思います。いやー、来週末ポケモンGoTourという激アツイベントがあるんだが、なんか忙しくて、あまりちゃんと参加できなさそうで悲しいです(言わずもがなですが、祖母が亡くなったことの方が悲しいです)(わざわざ言うと、「実は違うのでは……」感が強調されないか?)。ええい! やめいやめい!! まあ、でも、程々の悲しさで、別に普通に元気です。そんな感じです。それではまた。
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