知識の力

 去年の話だが、こんな記事がある。


「市民の不満ピーク 除排雪苦情1日だけで730件」

https://digital.hakoshin.jp/news/national/31770


 函館の話だが、730件。一件5分じゃあ終わらないだろうが、5分としても3650分。対応に要する時間は実に61時間。役所の労働時間が9:00-17:00として、休憩は出来なかっただろう、気の毒であるが、8時間びっちり対応したとしても8人が必要。実際は粗密があるはずなので、マージンをとって12人とか? が苦情対応にのみ追われることになり、で多少は取捨選択をしようが、取捨選択のためには現地調査が必要で、その時間を含めると、何人何時間が「苦情に対応する」ということにとられたのか、想像するだけで重い気持ちになる。


 苦情を出すなというわけではない。例えばやや事実を枉げてやらかしの話をすると、シャレオツなマンションがあって、で深夜かつ雪だったので、シャレオツなシャッターをシャッターだと気付かず、壁だなみたいになって、その前に雪山を築いてしまったこともあった。この山は人力でつき崩すのほぼ無理なんで、これはまあ怒るのもわかる。そういうのはどけにいかなあかん。なんか高齢者が家からでらんないとかはやばいよね。それはもちろん、苦情というか、正当な訴えである。


 ただ、個人ブログやらをつらつら見ていくと、「左右均等に置いていけ」「雪は南側に溶けやすいからそこに置いていけ」「自分ちの前は綺麗にしてるんだからそこには置くな」「他の家の前は山がないのにうちの前には山がある」と、相互に背反する意見があって、これは同時解決はとても難しい。


 ほんでこの対策というか、対策になってないんだけど、「どうして家の前に雪を置いていくの?」という絵本がある。これは闇が深いというか、深い絶望と怒りが根底にあるような気がする。それは穿ちすぎでは? と思うかもしれないが、そこまで外してないと思うのは、俺も過去に怒り心頭に達して絵本を書いたことがあるからである。


http://www.city.sapporo.jp/kensetsu/yuki/ehon/02.html


 ほいで、これを描いてもたぶん残念ながらほとんど効能はないであろう。そらそうだ。日頃から排雪や市政に関心を持って、こういう絵本を読んで学ぶような人間はそもそもクレームとかを出さず、クレームを出してきた人間に、「絵本読んで出直して来いや」なんて言おうもんなら大炎上不可避である。だから全く解決にはなってないし、これはこれで血税を使ってるんだろうからどうかなあって気もするが、でも「アイツら絵本程度の説明じゃないとわかんねーだろ、絶対に四肢を引き裂いて殺す」という気持ちも分からなくはない。ってか分かる。いや俺がクレームを受けてるわけではないから別に怒り部分に同調してるわけではないが、「何を話しても全く通じねえな、お前に対する最大限の蔑視の表明として絵本を描く、そして煮えたぎった油を頭からかけ、殺す」という気持ちになって絵本を描いたことはあるからね。分かるよ。


 意味のわからない共感をされてかわいそうなのでこの辺にしとくとして、でしかし、これ抜本的な解決は何かというと、徴用ですよ。これしかないなと思う。一回やればいいのよ排雪作業。そうすると、「これは物理的に無理がある」ということがわかる。


 何せ基本が10時間労働である。そのうち、4時間-4時間はふつうに雪を掘っている。それで、いいですか、8時間おんもにいて、片付く交差点は5つがいいとこだ。


 札幌市にいくつ交差点があるのか。誰もコメントをくれなかったんで考えてみよう。


 一条/一丁って大体120mとかそんくらいらしい。となると、1ブロックは大体14400 m^2。この面積に通常1つの「交差点」があることになる(四角形の頂点部分が他と重複しないブロック固有の角である。この角が全部一箇所に集まると交差点一個分になる計算だ。合ってる?)。


 札幌市の面積は1,121 km^2。ということは、1,121,000,000 m^2 ということになる。とは言っても南区とか山とか溜めようもない路地とかあるので、思い切って7割くらいは削ってやろう。336,300,000 m^2として、これを14,400 m^2で割ると、答えは23,354。5個の交差点が15人工プラスアルファで片付くので、まあ一個の交差点は3人工としようか。そうすると、7785人を動員すれば一晩で片付くことになる。札幌市の人口は確か約200万人だったので、0.4パーセントが動員されればいける。こんくらいなら徴用可能でしょう。なお排雪場は爆発するし、道はダンプと重機で埋め尽くされるが、そんなことは些細な問題である。摩擦と大体同じくらいの重要度しかない。


 ってな不満を述べたかったわけではなく、逆で、デューイはいいこと言ったなぁと思うのが、やはし我々「learning by doing」な生き物なわけである。もちろん人生は有限なので、取捨選択は必要だし、這い回るような経験が必要かと言われるといらなくねえかっては思うけど、やっぱ為すと学べる。学べるというか関心が出てくる。「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」で言うと、体験をするまでは、スノーポールとか、消火栓の看板とか、交差点の雪山なんてのは、「背景としての木」でしかないわけである。ところがひとたび体験をすると、これはペガサスの靴を手に入れたのとおんなしで、意味のあるオブジェクトになる。ああ、あっこにはガードレールが埋まってるんだなあとか。おっここの消火栓が掘られてる、ということは交差点か運搬やったんだなあとか。そういう気持ちが湧いてくるわけである。まるで、「あの木に体当たりしたらハチが出てくるかな」と思うように、世界に意味のある、"触れる"オブジェクトが増える。これが結構面白い。


 

 なので、そういう知識の獲得、新たな体験に比べれば、昨晩セブンイレブンにいかなかったのでザンギ弁当を食べたり、今ついミスドに来てドーナツ食べてしまってることなんてのは瑣末なことである。摩擦係数とおんなじですよ。そうでしょ。


2019年01月19日 12時37分の測定結果

体重:90.15kg

体脂肪率:27.80%

筋肉量:61.75kg

体内年齢:41歳


 ちょい減ってはいるが、このミスドが今後どう影響するか、見守って行きたいところである。


 

 


 

 

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