除論:全ての札幌市民は俺に感謝して道を歩くといい

除雪業に就職しました

 嘘。してはない。でもしたも同然な気がする。ただ冬しか仕事がないのが問題ではある。


 昨年末、肉体労働の番割の人が突然連絡つかなくなったのは既に述べた。で、基本的にこの人と仲良かったというか、頼み上手というか、そんな感じだったのもあって、もうこういう仕事やることもないんかなぁ、って遠い目をしていた。


 そしたら、どこから聞きつけてきたのかマジでネットワークが謎なのと、個人情報保護法ってご存知ですかって感じなのだが、別ルートから除雪のバイトをしないかという連絡が来た。除雪のバイトは実は前々からやりたくて、何故ならこれは痩せるだろうから。除雪バイトして痩せないとかないでしょ。逆に除雪バイトして痩せなかったら、これはいよいよもう、「痩せにくいですね雅島さん」完全に証明したことになるでしょ。ってなわけで、二つ返事でイイっすよーって話をした。


 したらば。二月中旬まで固定で入ってくれないかと言われる。二月中旬は長くねえ? 丸々1ヶ月やないですか。固定ってどんくらい固定なんすか?

 週6日。土曜夜は休み。なんで今日出てるのか(今日出てる)というと、昨日アホほど雪が降ったから。


 そんなん就職じゃん。ついに社会人じゃん。ヤッター! と簡単に行かぬのは、昼も多少仕事あるからである。たまに深夜バイト行くのはまあ、たまにだから行けるんであって、毎日はそれは死んじゃうよ。流石に。死ねば骨になって痩せるとは言え。痩せるためなら死んでもいいとは思っているが、それはあくまで比喩、死んでもいい「くらいの」気持ちでいるってなもので、マジで死ぬのはちょっと嫌じゃあないですか。皆さんも少しは悲しいでしょ。冷凍庫にピノがあると思ったらなかったくらいは。いやそれは悲しすぎるので、冷凍庫にピノアソートがあるなーと思ったら、もうきなこ味しか残ってなかった時くらいは悲しいでしょ。いやきなこ味原理主義者の皆さんは今呼んでませんからね。きなこ味はミルクとチョコの合間に食うのはうまいと思うけど、それしかなかったらそれしかないかーって思うじゃあないですか。


 共感を求めるポイントがずれたが、とにかくそれはちょっとねーーーって言うと、この1ヶ月を満了した場合、多少なり報奨金的なものを包んでくれると言う。で、これが雪だけにホワイトで、防寒手袋も作業着もカイロも全支給。レンタルじゃあなくて支給。マジか。いや防寒手袋と作業着を日常生活で使うか? と言われると別に使わないんだけど、でもね、待遇がいいんですよ。ちゃんとしてんなーと思って。


 うーーん。確かに実は、昼の仕事は冬季はちょっと減る。昔は完全なる空白だったので、その時だったら請けたが、まあ考えてみよう。木曜はもとよりバッファというか、なんかできなかったことを片付けるとして設定してる日なので、なんとでもなる。金曜は実は先週で終わった。月曜は21で終わり。火曜はしばらく続くが、午後は週明けで終わり。水曜だけがちょっとちゃんと1日あるが、まあだから火曜の夜がちょっと辛いくらい。土曜は日中ずーっと固定だが、これは完全に俺の裁量で出来るし、三月まではだらだらやっていいことが確定してるのでさして問題はない。あれ、これいけんじゃね?


 で、つい分かりました、明日からも来ますと言い、ついに苦節33年、初めて俺は胸を張って社会人になった!! 1ヶ月限定だけどね。雪がいつまでもとけなければいいのになぁ。


 というわけで新章をはじめてみたが、大上段のタイトルになってしまって恐縮である。しかしねえ、やってみて分かったのだが、北海道に住むってのは正気の沙汰ではない。ほんとに。今日は初日なのでラクな「交差点」という仕事をやってるが、みなさん一つの交差点の雪を除去するのにどのくらいのコストがかかるかご存知ですか。


 ご存知あんまないと思うのでいきなり正解を言うと、重機の原価や雪を捨てる土地代、燃料費を除いた人的費用だけでたぶん3万円ちょい。時間で言うと1.5時間。一交差点でだよ。札幌にいくつ交差点があるか、お暇な方はフェルミ推定でもしていただければと思うが、これさあ。ヤバイって。ふるさと納税してる場合じゃあなかったのかもしんない。いや森町の雪を取り除くのに使ってくれるならまあいいけど、この一事だけをとっても札幌、ていうか北海道は不利すぎると思うんだよね。


 でも、一交差点が終わって、雪が綺麗になくなった路地を見ると、ああ俺は今世界に貢献していると強く思う。みなさんが歩く道を俺が今作ってると思って胸が熱くなる。いい仕事だな。男子一生の仕事と言っても良い。ほんと1ヶ月しかないのが残念ですよ。


 明日は「運搬」という辛い方らしい仕事に回るので、明日になったら絶望してる可能性は全然あるが、とりあえず今は胸を張って、俺は除雪業者だとそう言いたい気分である。あと20分休憩したらもう一掘りしてきますね。詳しい仕事内容などは後日、ぼちぼち書いて行こうと思う。雪が勝つか、脂肪が勝つか。新しい戦いの始まりである。ジョイフィットはちょっと遠い風呂屋として活用して行きたい。いや、筋肉使うところが明らかに偏っているので、使わない筋を鍛えて行きたい、が……できるかな俺に……。ジョイフィットはジョイフィットでプロジェクトがあって、それはそれでまた、皆さんに協力を仰ぐ日が近くあると思うので、その際は手を貸してください。


 ではまた。札幌市民の安寧のために、雅島貢、雪を掘って参ります。

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