燃論:【2周年記念企画】脂肪燃焼スープを飲んでみよう

プロジェクション・メソッド(脂肪燃焼スープをはじめるまで)

 投影という概念があって、これは我々の心を守るはたらきの一つということになっている。自分の心の中にあるけど、あんま直視したくないナー、という嫌な側面を他人の中に見つけるみたいなことである。


 どういうことか。

 

 一つのスーパーで、キャベツ・にんじん・セロリ・ピーマン・玉ねぎ・トマト(あるいはトマト缶)を同時に購入できない、ということである。


 「何言ってんだこいつ」と思った者は幸いである。



 上記の食材は、「脂肪燃焼スープ」でググると出てくる「脂肪燃焼スープ」の材料である。先日俺は知人を家に招き入れた挙句、「腹をなんとかしろ、糖質制限をしろ、自分は糖質制限で6 kg痩せた」と言われるという屈辱を受けて、てめえこの、俺がどれだけ糖質制限に悩まされているか知らないからそういうことが言えるんだ、つうか俺だって6 kg痩せてんだよ舐めんな、そのあとまた6 kg太っただけの話だ。


 まあその太る方はどう考えてもダメだし、「リバウンドしやすい体」を自ら作っているような気もするが、とにかく俺は憤った。見てろよ、毎朝体重を報告してやるからな。覚悟しろ。


 でも憤って即行動、というわけにはいかない。冷蔵庫には大量の鯖や鶏肉、食料保存コーナーにはパスタや米、うどんなどが眠っていたからである。まあパスタとか米とかは長期保存も可能なものではあるが、「そこにある」というのは誘惑のもと。良くない。そう思ってまずはこれらの食材を食べつくし、冷蔵庫を綺麗にカラにした。最後はでかいオムレツを作って食べたり、朝からパスタを茹でて食べたりしたので、これはこれでどうか?? と思ったりもしたが、男子たるもの(俺は性差別主義者の豚です、すいません)、一度辱めを受けたならば速やかにその汚名を雪がねばならない。そういう一心でパスタやうどん、米を食べて過ごした。


 それであらかたが片付いて、俺は最後に残った鶏肉を消化するため、何かスープ的なものを作ろうと思った。そこで閃いた。


 そうだそうだ。ここで一度、脂肪燃焼スープの材料になるものを鍋に投入し、まあ肉は本当はダメなんだけど、とりあえず味を見てみようと思った。ってのは、例えばセロリ、育ってきた環境が違うから好き嫌いは否めない野菜の代表である。俺は嫌いではないが、毎日食うと飽きるってか鼻につくかもしれない。でも、脂肪燃焼スープ生活を始めます!! と宣言してから、セロリ飽きたんで辞めます、というのはあまりに意志薄弱に過ぎる。意志薄弱に過ぎると思われてしまう。「どんなにうまい野菜も、毎日食えば飽きる。いわんやセロリをや」とニーチェも言っている。


 というのは嘘だが、「ニーチェはすべてを言った」という格言もあるので(大体「とニーチェも言っている」と言えばバレないし箔がつきますよ、の意)、まあそういうことにしておいて欲しい。


 でとにかく、二日目とかで飽きて「うわーキッツ、セロリ」ってなるのも嫌なので、鶏肉が入るから味は変わるが、とにかく、こういう系の味のものを連続して食べて自分がどうなるかを試してみようと思った。この段階では、「脂肪燃焼スープを始めました!」とは言ってないから、たとえば「あーダメだこりゃ」ってなったときに、何食わぬ顔で牛乳を加えてポタージュ、あるいはシチューにしてみたり、カレーにしてみたりという逃げ道が残されている。そういう路線に転向しても誰も文句は言うまい。

 いや別に脂肪燃焼スープを始めてから「キッツ」ってなって変えても誰も文句は言わないと思うけど、これは完全に俺自身の問題だが、そっちはどっちかというと、「きついよォ」と言いながら食べ続けることを要求される気がしてしまうので、テストしておこうと思ったという話である。


 さてとにかくそういう訳で俺は、カラの冷蔵庫に最後に残った鶏肉に「希望」という名前をつけて、朝、軽い投げキッスを送った後、買い物に行って、まずはキャベツをバスケットに放り込んだ。続いてセロリ。そして玉ねぎ。ピーマン。


 というところでふと思った。


 これ、脂肪燃焼スープを作ろうとしている人だと思われないかな!?


 だってそうでしょう。キャベツ・にんじん・セロリ・ピーマン・玉ねぎ・トマト(あるいはトマト缶)で作れるものはこの世の中に一つしかない。それの名前は脂肪燃焼スープである。


"神は言われた、「キャベツと、にんじんと、セロリと、ピーマンと、玉ねぎと、トマトあるいはトマト缶を煮込んで作る食物を脂肪燃焼スープと呼べ」。そのようになった。"


 第三日目とかでしたっけ。別に何とは言わないけど、何かにもそう書いてあった気がする。ニーチェ? 知らない人ですね……。


 話が逸れた。とにかく、ここで俺がカレールーを買ったなら、ああ、野菜がいっぱい入っているカレーを作ろうとしているのだなあ、さすがデブ。カレーは飲み物ってか。ウケるんですけど、くらいのことは思われるかもしれないが、まあそんなもので、この場合、次にこのスーパーマーケットを利用したとして、別に痩せてなくても良い。何も問題はない。カレーを食っているからである。


 キャベツ・にんじん・セロリ・ピーマン・玉ねぎ・トマト、この組み合わせだけはダメ。これを意気揚々と買ってですよ、翌日もしも俺が米を買いに来たら?

 あるいは一週間後、俺がまた同じ組み合わせを買いに来て、全然痩せてなければ?


 まあ内心馬鹿にするでしょう。俺ならする。こいつ脂肪燃焼スープ飲んで痩せてないでやんの、って思う。そうに違いない。


 とここまで読んで皆さんはどう思われたかというと、「いやそんなことなくね?」だろうと思う。それで良い。


 これは投影とは何かの説明なのであった。つまり、俺は普段、口ではデブにだって価値があり、デブを差別するべきではないと言い乍、内心では誰よりもデブを差別しているということなのだ。だから、デブ関係の物事に対しては異様に敏感になり、「ああ、俺がキャベツ・にんじん・セロリ・ピーマン・玉ねぎ・トマトを買うと、きっと世の中の人はアイツ脂肪燃焼スープを作ってまで痩せようとしているよ、ウププ」って思うに違いない、と思ってしまう、とこういうことである。お分かりかな?


 まあとにかくそういうわけでちょっと躊躇してしまい、さりとてせっかく冷蔵庫を空にしたのに別のもの買って誤魔化すのもどうかなあと思い、結局スーパーマーケットを二箇所に分けて購入をしたりして、この脂肪燃焼スープを俺は飲んでみた。


 うーーーん。まあいけないことはないかなあ。そう思ってから、一瞬にして一月の時が流れた。これ書いたの、4月7日くらい。マジかよ。もうそんなに。


 で、その後普通に食材を買い足してしまったりして、一月が経った。そして気づいた。

 この日記を書き始めたの、2016年の5月22日である。

 いい加減にせえよ。俺が一番そう思っている。


 で、こないだちょっとだけ痩せて、その後ピザなどを食い、王将で色々と食ったものの、


 2018年05月20日 11時41分の測定結果

 体重:89.15kg

 体脂肪率:28.40%

 筋肉量:60.50kg

 体内年齢:42歳

 

 とりあえず一応ギリギリ90 kgにはなってないことになる。明日起きたらわからんけど。

 これは今じゃないか? 脂肪燃焼スープ生活を始めるのは?


 そういうわけで、やってみることにした。一週間、基本はスープだけ。日によって食えるものが違う。

 今度は誰に恥じることもなく、脂肪燃焼スープセット、プラス、りんごを買ってきた(初日は果物が食える)。俺は成長している。そのはずだ。全てを乗り越えるんだ。


 なお、5/24は既に飲みの予定が入っており、5/27もちょっと多分ダメだと思う。

 それ以外はがんばる。がんばる予定。やる。やるんだよ。

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