46.努力性指標 - カウンセリング受付

 指定された部屋に入ってみると、急に大学から病院に迷い込んだみたいだった。

 ソファーが三列並んでいて、本棚には絵本と病気の紹介本がいっぱい。壁に時計。観葉植物。受付の窓の向こうで職員さんがうろうろ。ね、病院みたいでしょ。

 本棚は発達障害関係の本が多かったかな。心理発達研究室だからね。

 私の他には、手話で話している一団が待っていたわ。小学生とお父さんと通訳者と、学校か何か施設の人かな? 子供を大切にしていそうなお父さんだなと思ったけれど、子供の困難のために研究室まで探し当てるんだから当然大切にしてるわよね。羨ましかった。私は親にも気付いてもらえず、大学生になるまでここに辿り着けなかった訳だから。


 時間が来たら奥の部屋に通されたわ。病院で言う診察室みたいなところね。

 カーペット敷で、自分は机と椅子の所に通されたけれど、パーテーションの奥には玩具がいろいろ置いてあった。そんなところも小児科病院みたいだったわ。ものものしくなくて、少し安心した。


 それでまぁ、アーレン症候群のカウンセリングが始まったわけだけれど。

 どれくらい話していいのかしら。迷うわね。

 なんで迷っているかというと……。WAISやWISCは知ってる? 俗に言うIQテストね。あのテスト、練習すると上達しちゃうのよ。だから余り情報を与えると検査にならなくなっちゃうの。

 事前に内容を知っていると無意味になっちゃう検査は他にも色々あるわ。特に心理や精神系に多い。私が受けた一連の検査も、そういう性質な可能性があるから、ちょっと慎重になってる。

 よし、じゃあ頑張ってフンワリかつ面白味と異世界感だけ伝わるように言うわ。

 とりあえずそろそろ目的地に着くから、続きはお店入ってからね。

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