34.センサリー・デザイン - インテリアと共感覚
このカーテンはね、わざわざ体調が悪いときにカフェインもアーレンレンズもなしでお店に行って、一番うるさくないのを選んできたの。
実家に暮らしていた頃は、なーんか休んでも疲れが取れなくてね。理由を教えてくれたのは、誰かがクリエイターズハウスに置いてくれたTENTONTOってフリーペーパーだった。
カラフルなカーテンと家具。壁際を彩る装飾の数々。家族の観ているテレビやパソコン。それら全部が、私には過激すぎたのね。そのものの色も、それによって引き起こされる共感覚も、私を疲れされていた。子供の頃から囲まれていたから気付かなかった。
できれば寝る前は何も目に入らないように、ベッドの周りを薄いブラウンの布で囲いたいわね。入院病棟みたいに、ぐるっと。
天蓋? うん、そんな感じでもいいね。
海外には「室内用テント」って概念があるらしいわ。子供が遊ぶためのじゃなく、私みたいな人が落ち着くためのよ。日本だとどこで買えるのかなぁ。保温用テントっていうのは見つけたし、子供が遊ぶためのテントもあったけど、なんか少し違うのよね。いっそ自作しようかな。
逆にお洒落な部屋や賑やかな街じゃないと退屈で苦痛を感じる人もいるよね。そういう人って私とは逆に、世界がすごく静かなものに見えているのかな。周囲を彩らないと、何もない部屋に閉じ込められているように感じるのかな。ぶらぶらするだけでロックフェスみたいになる私と違って。
インテリアデザインやってる人って、こういう感覚の個人差とどうやって向き合ってるんだろう。作業に集中してほしい職場とか、リラックスしてほしい病院の待合みたいな、同じ目的を大人数で達成しなきゃならない場所の装飾ってどうするんだろう?
バリアフリーと似た問題に直面しているわよね。点字ブロックは杖の人が躓いて転ぶ。杖の人が歩きやすい道は車椅子が滑らかに転がらない。すべての人が使いやすいって何だろう、みたいな。
バリアフリーの場合「クソ広い」によって一応の解決を見せることがあるけれど、感覚の問題はそうもいかなそう。
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