33.千住の部屋 - 共感覚者の部屋

 ということで、ここが私の借りてるアパートです。

 静かなところでしょ。何か所も回って一番静かなところを選んだの。車があるから多少駅やお店が遠くても平気だしね。

 それじゃあ中に。

 っとストップ。部屋干しの洗濯物隠すから待って。


 はい、お待たせ。中にどうぞ。

 ポットはそこ、お茶はその箱だから、喉渇いたらセルフでどうぞ。冷蔵庫のプリンも食べていいよ。三つくらい買い置きしてあるから。ごゆっくりどうぞ。

 私はベッドにのびるから椅子使って。

 ベッドちゃんーーーあああーーーヴぁうわーーーー

 やっと休めた……。


 びっくりした? すごく殺風景な部屋でしょ。

 カーテンは無地のブラウン。壁にもドアにも装飾なし。家具は白い机と白い本棚、メタルラックだけ。キッチンには冷蔵庫と食品棚があるけれど、それも金属色と無地のブラウンね。

 これでも物が増えすぎたと思っているわ。寝具はカラフルだけど、それは実家から持ってきたからで、順次ブラウンかホワイトに変えていくつもりよ。

 なぜってそれが一番刺激の弱い色だから。

 私にとって外の世界はあまりに刺激が多すぎるの。疲れたらゆっくり休めるように、この部屋だけはにしておきたいのよ。

 色が静かって変な表現だけど、黒より蛍光ピンクの方がうるさい、って言うと納得いかない?

 私はうるさいと思う色が多いのよ。世界はあまりに色鮮にぎやかすぎる。特に空の青が、騒がしい。晴れの日は目を覆いたくなる。私は晴れの日にカーテンを閉めて、曇りや雨の日に開けるのよ。今日は優しい天気だね、って。

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