28.きむら園 - 時間に色がある
のんびりしてる間にもう四時か。
三時? あっ本当だ。見間違えた。おやつの時間ね。
頭使って話したから糖分を補給したい。ソフトクリーム食べたいな。付き合ってくれない?
近くにお茶屋さんがあって、そこのスイーツが美味しいの。歩いて行ける距離よ。
戸締りしてアーレングラスかけるから先にお外出ていてね。
相変わらずいい天気だわー。穏やかー。つくばの冬は風が強くて超寒いから、春が来ると静かで安心するわね。間もなくカエルやキジと草刈機で騒がしくなるのだけれど。
日も長くなったわねぇ。
なぁに? さっきの時計読み間違いが気になる?
鋭いわね。これも多分、共感覚のせいだと思う。
時計は苦手なのよ。
どうして読み間違えるのか未だに分からない。
時計だけじゃないわ。カレンダーも苦手。日付や曜日もよく間違うの。しっかり記憶していたはずのものが全然違くて、大遅刻や逆に早く行き過ぎて空振るのもザラだわ。
どこでどういう過誤が起きているのか分からないから、対症療法としてタイマーを頻用してる。iPhoneとiPad様様ね。たまにタイマーすらかけ間違うけど。
時間にも共感覚があるの。時間が色を持っているのよ。
これに関しては言えることがすごく少ない。自分でもよく分かっていないんだと思う。時間って概念が曖昧すぎて。もしかしたら時間の共感覚じゃなくて、言葉の共感覚の延長かもしれない。
一番説明しやすいのは曜日の色かな。
月曜日は明るい黄色。火曜日はピンク。水曜日は水色と白。木曜日はかわいい緑。金曜日はみかん色。みんな単色なのは「曜日」という単語が白いせいかもしれない。
今日は金曜日だって思うと、みかん色が意識の底を這うの。変な言い方だけど、この共感覚は「深いところにある」。絵を描く人なら「レイヤーが下の方」って言うと何となく近いかな。
今まで出会った単語で最もそれっぽいのは「
そんな風に、私の注意は目の前の事象に向いているけれど、何となく時間の色の気配を感じるのよ。
そしてその気配は簡単にずれる。違う色に差し替わる。何が原因かは分からない。カレンダー上の数字と曜日と位置と月や時間や季節の概念、目の端に見えてるもの、その他もろもろの共感覚が干渉しあっちゃうのかなぁ。
その差し替わりに気付かず通奏低音の色を参照して時間を確認するから私は間違うんだと思う。
あ、その横断歩道渡って。きむら園、すぐそこ。お菓子の幟が出てるところね。
せっかく良い天気だからテラス席にしようか。野立傘の下に座ろう。茶道用の傘がパラソルの代わりだなんて、お茶屋さんっぽくて素敵よね。
ここにも桜の気配があるわね。甘い匂いがする。花弁も飛んできてるね。風流だわー。
お冷の代わりに緑茶が出るのも最高。しかもめっちゃ美味しい。さっき自分で淹れた茶の味を思うと心が痛むけれど、ここは素直にプロの腕前に感動しておきましょう。
何頼む? 私は抹茶サンデー!
抹茶系頼むときはカフェインに気を付けてね。けっこう濃いよ。カフェイン苦手だったらあんみつを頼んで、アイスを抹茶からバニラに、蜜を抹茶蜜から黒蜜に変更するのを勧めるわ。もしくは苺のかき氷。
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