11.洞峰公園 - 音に色がある

 この辺、いろいろ遊べるところもあるのよ。あっちはJAXA。そう、あの有名なつくば宇宙センターよ。見学もできるよ。

 お腹を落ち着けるために少し散歩したいな。ウエストハウス、けっこう量多いから。

 洞峰公園のなか、一緒にお散歩しない? 道路挟んだ向こう、そう、そこに見えてる森、公園なのよ。


 いやぁ桜が綺麗ねー。甘い香りが充満してるわ。満腹にはちょっとキツいくらい。薄紅と緑のコントラストが春だなー。

 ここ、いい公園でしょ。座る場所も沢山あるし、歩道は整備されてランニング用のゴムチップコースもあるし、いろいろな種類の植物が植わってるし、すごく都会的よね。スポーツ設備が充実してて、プールや野球場もあるのよ。

 私は沼のほとりが好きだな。葦原がそよそよ揺れて、さざ波が渡って、芝生のベンチで何時間でも見ていられちゃう。葉擦れの音が綺麗な銀だね。


 ん? ああ、そうそう。私、音にも色を感じるのよ。

 音色と音程と音形、どれにも色があるわ。どっちの色も感じるし、どっちかに注意を払うこともできる。混ざって感じることもある。重なりを持つことも。この辺もやっぱり匂いに近いのかなぁ。

 音色と音程と音形って何やねんって話よね。

 まず音色ってのは楽器の種類とか、人それぞれの声みたいな、音の質感のことね。例えばバイオリンはバーガンディ色。フルートは若草色。

 人の声の色が、一番面白がられること多いかな。

 よたがらすの、うちのサークルの伊織は和菓子の黄身餡みたいな可愛い黄色の声してるよ。黄色い声は女性の金切声の慣用句だったりするけれど、それとはまったく関係ないわね。紫藤さんは緑の強いエメラルド色。米占くんはメレンゲ菓子みたいな白っぽい緑。みんな可愛い色だから一緒に居て楽しい。

 有名人だと、福山雅治の薄い銀色とか、桑田圭祐のラメ入り黄色が好きだな。最近は赤茶色の米津玄師も好きになってきた。

 あなたの声の色は……。そうだ。珈琲飲んじゃったんだった。見えないや。残念? ごめんね。切れた頃また聞いて。


 音程っていうのはドレミのことね。音ごとに決まった色を感じるよ。昔から耳コピーは得意だったわ。友達が練習してる部分をすぐコピーして完遂しちゃうから吹奏楽部ではクソ嫌われたけどまぁ、それは、置いておいて。

 音形っていうのは、例えば、怒鳴った時と囁いた時みたいな、音の出し方の違い。これを音色と言うこともあるけど、私は私のために音形と定義してみた。


 どれも感じるから、片方が他方に干渉することもよくあるよ。例えばベースギター。音色の深緑は強すぎて、音程の色を消してしまうから、耳コピーできないわね。逆にピアノはなぜか音程の色を強く感じるから音色の色を覚えてないわ。音形が固い、強いストロークのピアノは音程の色を感じづらい。

 そうだ、ドレミの音がそれぞれ何色か、お話しようか。

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