ライオンの殺し方

佐藤正樹

宇宙飛行士たち、他

その時、一丈青扈三娘が見ていた月を、私も見ている。長い夜勤明けの後、駅までの道で、不意にその事を思い出した。記憶が無くなる程、遠い昔の話だ。私の星は何という星だったか、それも忘れてしまった。




無数の蝶が舞っていた、項羽がみたその光景は夢だったかもしれない。あいつに教えてやるかと馬首を返したまでは覚えている。あの場所は何処だったのかと時々考える。始皇帝がみた景色と同じだと謀臣は断じたが。自分は、舞っていた蝶の1つに過ぎぬのではないかと思う。




江戸期には、まだ国の形が分かっていなかった。渡来した測量技術でも、航空機による写真でも、衛星写真ですら分からなかったのだから無理もない。なぜこうも国の形が変わるのかは、地中深くに大ナマズが発見されるまで説明がつかない世界の珍事だった。この大ナマズ、果たして地球の生き物なのか。




月が海に沈むのを遊覧船で見に行った。海に開いた真っ黒な穴の中に、月が静かに下りて行くのは圧巻。太陽は熱で船が焼けてしまうので危険なのだそうだ。それにしても宇宙飛行士たちは勇敢だ。あの穴の中に宇宙服1つで飛び込んで行くのだから。




公園のベンチで、一人相撲を取っている集団をボーッと見ていたら、こちらに気付いたらしく一人がニコニコしながらやって来て、貴方も一緒に一人相撲を取りませんかと誘われた。暇なのでやってみてるが、相手は自分自身、自分に打ち克つのが目的という事で、なかなか奥深いもののようだ。





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