第57話 誰だろう?…あの子…

「うう…」


職員室で、自らネタバラシをしてしまった日の翌日。

クラスの担任である、新堂 京一の言葉に従い…

昨日、クラスメイトの美鈴にされた、自らの顔を露にする髪型での登校。


いつも通りの男子の制服を着てはいるものの…

首から上は、いつもの野暮ったい前髪に隠されているはずの童顔な美少女顔。

それが、左半分のみとはいえ、はっきりと見える状態になっている。


その為、首から上と下でちぐはぐな感じとなってしまってはいるものの…

もともとが華奢で女の子っぽい体つきのため…

それが却って、男装した美少女という印象をかもし出している。


その前髪を分け開くヘアピンも、可愛らしいハートのデザインであるため…

首から上は余計に、女の子っぽくなってしまっている。


当然、そんな目立つ容姿の涼羽が人の目を惹かないはずはなく…


「お、おい…誰だ、あれ」

「びっくりするくらい可愛いな…」

「こんなハイレベルな美少女、この学校にいたっけ?」

「でもなんで男子の制服着てんだ?あの子」


涼羽と同じ通学路を歩いている同じ学校の男子生徒の注目の的となっており…

さらに…


「ね…ねえ。あの子、ちょー可愛くない?」

「うわ~…何あれ。すっごく可愛い」

「あんな可愛い子、この学校にいたかしら?」

「なんであの子、男の子の制服着てるのかな?」


同じ学校の女子生徒達の目をも惹いてしまっている。


男子も女子も、見覚えのない美少女にほうっと溜息をつきながらも…

その華奢な身体を男子の制服に包んでいることに、疑問を覚えている。


「(うう…じろじろと見られてる…それも、こんなに大勢に…)」


嫌でも感じてしまう、自分に向けられる視線。

それも、一人や二人ではない、大勢の視線。


これまでなら、視線を向けられるどころか、腫れ物を扱うかのようにされていたのに。


一人でいるのが好きで…

人と関わるのが苦手で…


だからこそ、そんな孤独な状態が好ましくて仕方なかったのに。


それが、ちょっと素顔を晒しただけで、こうなってしまうなんて。


人の視線が苦手で…

恥ずかしがりやで…


何より、目立つことが何よりも嫌いで。


なのに、今はこんなにも目立ってしまっている。


普段、晒すことのない素顔を晒してしまっており…

それによって、多くの人達に見られてしまっている今の状況…


それがたまらなく恥ずかしくて…

その美少女顔が、羞恥に染まっており…


その恥ずかしがりようがまた、言いようのない可愛らしさを生んでしまっている。


「もう、めちゃくちゃ可愛いよな、あの子」

「顔見られるだけでも恥ずかしい、って表情だよな」

「なんか、もっと恥ずかしがらせたくなっちゃうよな」


そんな涼羽を目の当たりにして、男子生徒達の視線がより涼羽に集中してしまう。


「あの恥ずかしそうな顔…すっごく可愛い!」

「もう、ぎゅうってしたくなっちゃう!」

「もっと恥ずかしがらせたくなっちゃうよね!」


女子は女子で、そんな涼羽に半ば心を奪われている状態だ。


本来ならば、こんなことは絶対に避けたいのだが…

担任である京一の言葉に、首を縦に振ってしまったため…

律儀で真面目な性格の涼羽は、自分がうん、と言ったことを嘘にしたくないから…


どんなに恥ずかしくても、こうせざるを得ないのだ。


そうして、周囲の注目を浴びながら、たどたどしい足取りでどうにか学校に到着。

そして、自身のクラスである3-1の教室に、足を踏み入れた。


「お…おい…誰だ、あの子?」

「あんな子、このクラスにいたっけ?」

「あんな美少女、このクラスにいたんなら、絶対に見てるはずなのに…」


すでに登校しているクラスの面々も、見覚えのない美少女の登場にざわざわ、としている。


ここまでで、この美少女があの高宮 涼羽だと気づく者は当然ながらおらず…

目の前のこの子は一体誰なのだろうと、懸命にその記憶の中を探ってみるも…

やはり、その美少女が涼羽だと結び付けられる人物は、いなかった。


高宮 涼羽と言う名は、校内でも悪いイメージで有名になっており…

非常にとっつきづらく、何を考えているのか分からない人物として…

ひたすらに敬遠され続けていたことが、要因となっている。


それでも、最近は…

この3-1では、美鈴と接する時の涼羽が、そんなイメージとまるでかけ離れていたこともあり…

じょじょに、ではあるが、涼羽に対する偏見が薄れ、見方が変わってはいっている状態だ。


特に女子は、美鈴にべったりとされて、ひたすらに恥ずかしがっている涼羽が妙に可愛らしくて…

そんな悪イメージの偏見(フィルタ)が少しずつ取り去られ…

むしろ、涼羽に対する興味が大きくなっている状態だ。


しかし、そんな3-1のクラスの生徒達でも…

今目の前にいる、誰の目をも惹いてしまうであろうこの美少女が…

その高宮 涼羽と同一人物であるなどとは…

さすがに思うことなどできなかった。


しかし、その疑問がようやく晴らされる時が来る。


涼羽が、その頬を羞恥に染めながらも、普段通り自分の席についたから。


それを見た一人の女子生徒が、おずおずとしながらも、涼羽に声をかける。


「…あ、あの…」

「!は、はい?…」


今の今まで関わることもなかった女子生徒に声をかけられ…

少し上擦った声で、びくりとしながら、反応してしまう。


「そこって、高宮 涼羽って言う子の席なんだけど…」


やはり、今目の前にいる人物が涼羽であることに結びつかない為…

完全に別人と思っている女子生徒からは、こんな言葉が出てしまう。


そして、周囲は、そんな二人のやりとりを固唾を飲んで見守っている。


「…し、知ってるよ」

「え?じゃあ、なんで…」


涼羽のそんな言葉に、当然のごとく疑問符のついた言葉を発してしまう女子生徒。

しかし、次の瞬間、クラス全体の時が、止まる。




「…だって、俺がその高宮 涼羽なんだから…」




その美少女が、自分を高宮 涼羽だと、声にして響かせた瞬間。


普段の声とは違い、本来の涼羽の声である、変声期後とは思えない、ソプラノな声。


十秒…

二十秒…


時が刻まれている間も、周囲の硬直は解かれず…


さらに時は刻まれ…


四十秒…

五十秒…


そして、一分が過ぎようとする頃…


「……………え?」


ようやく声を出せたのは、涼羽に問いかけた女子生徒。


目の前で、その言葉を聞いてしまった為に、その衝撃は大きかったようだ。


「……………ホ、ホント?」

「…うん…ホントだよ…」

「……………ホントに、ホントなの?ホントに、あの高宮君なの?」

「…うん…俺は、正真正銘…高宮 涼羽だよ…」


信じてもらえないとは思うけど。


そんな言葉を飲み込み、自分が高宮 涼羽だと肯定する言葉を述べる。

そんな自分を認めたくない、と言わんばかりに羞恥に頬を染めながらも。


瞬間、時は動き出す。


「…………えええええええええ!!!!????」


教室の中に木霊する絶叫。


その騒ぎの原因となる、高宮 涼羽のそばへ、我も我もと、その場にいたクラスメイトが集まってくる。


「ホ、ホントか!?お前、ホントにあの高宮なのか!?」

「う、うん…」

「マジ!?お前、そんなに可愛かったの!?」

「…俺、自分じゃ分からないけど…」

「え!?え!?もしかして…この写真の女の子って、高宮君なの!?」

「!…う、うん…恥ずかしながら…」


間断なく来るクラスメイトからの問いに、おずおずとしながらも答えていく涼羽。

その中で、妹の羽月と商店街に出かけていた時のあの写真を突きつけられるが…

もはや隠しようもない、と観念したのか…

俯きながらも、その事実を肯定する涼羽。


「……や、やっぱり、気持ち悪い…よね?…男の俺が、そんな格好してたら…」


自虐的な苦笑いと、言葉。


ああ、やっぱり男の自分が女の子の格好なんてしてたら、気持ち悪いんだ。


そんな自虐の想いが、涼羽の心を締め付ける。


これから、みんなに気持ち悪いだの、変態だのと罵られながら、学校に来なきゃいけないんだ。


そんな想いが、涼羽の心を攻め立てる。


これなら、一人でぽつんとしていた時の方がよかった。


思わず、自分にこうして来るように言った京一のことを恨めしく思ってしまう。


しかし、そんな涼羽の想いと裏腹に、周囲は――――




「(え?マジ?正直可愛すぎて…)」

「(似合ってる、なんて言葉すら及ばなくて…)」

「(違和感なさ過ぎて…普通に女の子してるから…)」

「(これで男の子だなんて、反則過ぎるんだけど…)」




――――といった感じで、むしろその可愛らしさと美少女っぷりに感動すらしてしまっている。


まさに、この言葉が当てはまるだろう。




――――可愛いは、正義――――




そして、今自分達の目の前で、落ち込んで俯いてしまっている涼羽を見て――――




「…………可愛い~~~~~~~~~っ!!!!!!!!!」




――――再び、教室に木霊する絶叫。


しかし、先ほどのような驚愕の絶叫ではなく…

まさに、正義と言えるほどのその可愛らしさに対しての、肯定の絶叫。


特に、女子生徒達は、その可愛いの化身を目の当たりにして、我慢ができなかったようだ。


「!!え?え?…」


まるで拍手喝采のように起こった絶叫に、思わずその顔を上に上げてしまう涼羽。


そして、その瞬間…


「わ~…見れば見るほど可愛い顔~…」

「お肌もすっごく綺麗だし…」

「何この髪!?さらりとしてて、みずみずしくて、すっごく綺麗!!」

「それに、声もすっごく可愛い!!これで男の子の声だなんて、嘘みたい!!」


嬉々として、涼羽の造詣美を堪能し始める女子達。

まさに、女子が羨むほどの、涼羽の容姿。


それを目の当たりにして、女子達は頬をゆるゆるにしてしまい、まさにデレデレとしてしまっている。


「あ、あの…!!ひゃっ!!」


そんな女子達の接触を回避しようとする涼羽から、甲高い悲鳴のような声。

一人の女子が、涼羽のその細い腰を鷲掴みにしてしまっている。


「うわ~…何よこの腰!!高宮君、少しダボついたサイズの制服着てるから、分からなかったけど…」

「や、やめ…!!ひっ!!」

「な、何これ!?めちゃくちゃ細いじゃない!!この腰!!」

「しかも、無理な細さじゃなくって、女の子みたいにくびれてるし!!」

「お尻も、ちょっと小ぶりだけど、女の子みたいな丸みと柔らかさがあって、可愛いし!!」


文字通り、女子達にもみくちゃにされてしまっている涼羽。

そんな女子達に、置き去りにされているであろう男子達は…


「やっべ…なんだあの可愛い声…」

「男の出す声じゃねーよ…」

「しかも、女子達の声、聞こえてるよな?」

「ああ…」

「聞いてるだけでも、高宮がどれだけ女の子みたいなのかって…」

「分かっちまうよな…」


自分の身体を不意に触られて思わず発してしまった涼羽の声…

それに驚いて…

それがあまりにも可愛らしくて…


もはや、高宮 涼羽という存在を今まで通り男子として見られるかどうか…


それが危うい状態となってしまっている。


「おはよー!!」


そんな中、元気いっぱいの挨拶で教室に入ってきたのは、この学校でもトップクラスの美少女である柊 美鈴。


その美鈴が入ってきた途端、今まで涼羽をもみくちゃにしていた女子達が、すさまじい勢いで美鈴の方へと詰め寄っていく。


「え?え?何々?」

「え?じゃないわよ!!美鈴、あんた知ってたでしょ!?」

「え?何が?」

「何が、じゃないの!?高宮君よ!!高宮君!!」

「え?涼羽ちゃん?」

「あれよ!あ・れ!」


次々と来る女子達の糾弾のような問いに、押されながらも一つずつ答えていく美鈴。

そして、一人の女子が、ついさっきまでもみくちゃにされて半ばぐったりとしている涼羽の方を指差す。


「あ!涼羽ちゃん、ちゃんとあの髪型で来てたんだ!」


その可愛らしい顔を強調する髪型でいる涼羽を見て、美鈴の顔に可愛らしい笑顔が浮かぶ。


「ちょっと!どういうことよ、美鈴!!」

「何!?今の『ちゃんとあの髪型で』って!!」

「何で高宮君、いきなりあんな髪型で来るようになったの!?」


美鈴の言葉に、過敏に反応する女子達。


特に、『あの髪型』というところに非常に過敏に反応しており…

もうひたすらに美鈴を問い詰める形になってしまっている。


「あ!いたわ!」

「おはよー!!高宮君!!」


そんな中、一触即発の状況になりつつあるこの教室に、さらなる来訪が。


来訪者は二人。

一人は、現代国語の担当の隠れ美人でもある、森川 莉音。

もう一人は、音楽の担当で、校内でも人気の美人教師である、四之宮 水蓮。


そんな二人が、涼羽を探してここに来たのだから…


教室内は、さらに混沌とした雰囲気に満ち溢れてしまう。


そんな雰囲気に構うこともなく、莉音も水蓮も、まっすぐに涼羽のところへと足を進める。


「お、おはようございます…先生…」

「よしよし、ちゃ~んとその髪型にしてるわね」

「うんうん、高宮君、ほんとに可愛くていい子いい子」


おずおずと挨拶を返す涼羽を見て…

ちゃんとその顔を露にする髪型にしているのを見て…


二人共、その頬を綻ばせながら、涼羽の頭を優しく撫ではじめる。


「や、やめてください…俺、そんなちっちゃい子なんかじゃ…」


しかし、するのは好きでも、されるのは嫌いなのか…

二人のそんな行為に、涼羽からは拒絶の言葉が、儚い声となって響く。


「うんうん、ちゃんとしてるみたいで、安心したわ」

「これからも、先生達がちゃあ~んと見に来てあげるから、ね」


そんな涼羽の声もまるで気にすることもなく…

ただひたすらに涼羽の頭を撫でながら…

その顔を綻ばせて、涼羽に接する二人。


「え?え?どういうことなの?」

「なんで森川先生や四之宮先生まで、高宮君の髪型を?」

「ねえ、本当に何があったの?美鈴?」


普段は授業でしか接することのない二人の教師が、HRも始まらないこんな朝の内にわざわざ涼羽を見に来る、という展開についていけず…

先ほどまでの鬼気迫る雰囲気が嘘のように消えてしまい…

きょとんとした、何がなんだか分からない、といった感じで、美鈴に問いかける女子達。


「え?」

「え?じゃないわよ。美鈴、この写真の子が高宮君だって、知ってたんでしょ?」

「え?そうだよ」

「!じゃあやっぱり、高宮君があんなに可愛いってこと、知ってたんじゃない!」

「だって私、涼羽ちゃんのお家にお邪魔したこともあるし」

「!それ本当なの!?」

「うん、本当だよ」

「それって、突然美鈴が高宮君にべったりし始めたのと、関係があるのね?」

「だって、あんなに可愛くて優しい涼羽ちゃん見せられたら、大好きで大好きでたまらなくなっちゃったんだもん」

「!そ、そんなに!?」

「うん。涼羽ちゃん学校だと恥ずかしがりやさんだからひたすら目立たないようにしてるけど、本当はすっごく優しくて、すっごく可愛いんだよ?」

「可愛いのは見てたらすっごく分かるけど…優しいって?」

「涼羽ちゃんね、家の家事全部一人でしてて~」

「!うそ…」

「三つ年下の妹ちゃんのも含めて、いつもお弁当作ってきてて~」

「!え、あれ高宮君が作ってたお弁当だったの?」

「でね、まるで本当のお母さんみたいに妹ちゃんのこと甘えさせてるから、妹ちゃん来年で高校生になるのに、お兄ちゃんのことが大好きで大好きでたまらないんだよ?」

「!わ~…」

「高宮君って…」

「そんなにも可愛くていい子だったんだ~…」


これまでで、自分が見てきた涼羽のことを、嬉々として語る美鈴。

そんな美鈴の語りに、これまでの涼羽のイメージがまるでなかったかのように書き換わっていっている女子達。


「でね、写真見てすぐに涼羽ちゃんって分かったんだけど、涼羽ちゃん恥ずかしがりやだから、その時は黙っててあげたの」

「それであの時、ちょっと変な反応だったのね」

「で、昨日の放課後に涼羽ちゃん捕まえて、私の予備の制服着せて、女の子にしてあげたの」

「!ちょ、それマジ!?」

「うん。思った通りす~っごく可愛かったよ」

「わ~それ私も見たかった~!!」

「私も~!!!」

「で、すっごく恥ずかしがってる涼羽ちゃんを無理やり連れ出してたら、四之宮先生の子供が、校舎の裏に迷い込んで泣いてるのを涼羽ちゃんが見つけて…」

「うんうん、それで?」

「そこからは?」

「涼羽ちゃん、その子をとろけちゃいそうな優しさで甘えさせてなだめてあげて…もう、本当にお母さん、って感じで、すっごく可愛かったの」

「!~~見たかった~~!!そんな高宮君!!」

「もう、何なの!!高宮君って!!話聞いてるだけでも可愛すぎるよ~!!」

「でね、その子が、お母さんがこの学校の職員っていうのを聞いて、私と涼羽ちゃんで一緒に職員室にいったの。それで、涼羽ちゃんうっかりしてて…」

「?うっかり?」

「?どんな?」

「女の子の制服着て、女装してることすっかり忘れて、いつも通りにお話とかしちゃって…しかも、自分で『高宮 涼羽』って言っちゃったから、先生にバレちゃったの」

「!うわ、ドジっこ!」

「!ドジっこすっごく可愛い!!」

「で、それを見た新堂先生が、『明日からその髪型で来なさい』って、涼羽ちゃんに言ったの」

「!え?あの新堂先生が?」

「うん」

「どうして?」

「たぶんだけど…涼羽ちゃんがもっと人と接することができるように、って思って言ったのかな、って」

「あ~…」

「それは分かるわ…」


昨日の一部始終を美鈴の口から聞くことのできた女子生徒達は、それぞれ納得の声をあげる。

加えて、涼羽の可愛いエピソードを聞くことも出来て、朝からご満悦な状態だ。


現にそこまでの美鈴の話を聞いた女子の顔は、どことなく緩んでしまっている。


「でも、ずるいよ!美鈴!」

「え?何が?」

「あんなに可愛い高宮君、ずっと独り占めしてたんでしょ!?」

「え?だって、普通に話しかけて、普通に接するようになったのって、私だけだし」

「う…それはそうだけど…」

「教えてくれてもいいじゃない…」

「だあめ♪だって涼羽ちゃんは、私だけの涼羽ちゃんだもん♪」

「ず~る~い~!!」

「ずるいよ~!!」


HRも始まらないうちからずいぶんな喧騒が響くこの3-1の教室。


今までずっと敬遠してきた男子が、下手をすれば本物の女子よりも可愛いことが分かって…

男子生徒達は、どう接したらいいのか分からず、混乱してしまっている。


女子生徒達は、今目の当たりにした涼羽の可愛らしさ…

そして、美鈴から聞かされたエピソードもあって、涼羽に対する好感がうなぎ昇りに上昇していっている。


「えへへ♪涼羽ちゃんおはよ~♪」


そんなクラスメイト達を尻目に、いつも通りべったりと涼羽に抱きつく美鈴。


「!お、おはよう…美鈴ちゃん…」


そして、相変わらず慣れないのか…

身体をびくりと震わせ、戸惑いを隠せない…

おずおずとした反応の涼羽。


もはや女子と女子の絡みにしか見えない二人のやりとり。


今日この日…

今この時から…


この高宮 涼羽という可愛いの化身と積極的に絡んでいこうとする生徒が増えていったのは、言うまでもない。

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