きたのあきたの東北記

翠野希

第1話東北だって表現できる。

 高校3年の時に参加した、芸術大学の合同説明会のこと。

「東北を出ないとやってけないよ」

 西の大学の職員さんの言葉でした。ショックだったのは、秋田ご出身だったことです。発表の場やギャラリー、美術館が少ないからだと言うのです。分からなくもないけど、ずっと心に引っかかっています。

 でも、言い張りたい。

「東北だって表現できるよ」

 って。


 今住む秋田の山里には、山と山の谷間に雲が生まれます。山の上から見れば、雲海と呼ぶそうです。

 春の若葉が柔らかいことも知っています。

 山桜の淡い色も。

 その後に咲く、山吹とツツジの鮮やかさも。

 星は食べられるほど並んでるよ。

 この美しさを前にして、創れないって言うんですか?


 だけどまだ、道半ばです。まだ説得するに至らずです。いつか声に出して堂々と言うんだ。証明するんだ。

 そのためにまず書こうと、筆を取ったのです。

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