のーないごろく!

カトーミヤビ

まえがき


 唐突に思い出したのだが、中学の頃、線路に落ちたことがある。

 そこは地元のローカル線で、よくある田舎の駅をイメージしてもらえば大体合っていると思う。とても天気のいい日だった。

 一人でホームに立っていた私は、何を思ったのか「そうだ、目を閉じたままちょっと歩いてみよう」と考え、本当に目を閉じて歩き出した。もちろん線路と並行の方向へ、だ。

 五歩ぐらいで止める気だったが、気付いたら身体がガクンと横に倒れた。足を踏み外したのである。ハッとして目を開けた瞬間、青空が目に飛び込んで来ると共に背中に衝撃が走った。

「っ……!」

 息ができない。身体が動かせない。それでいて視界と意識ははっきりしているという恐怖。敵の攻撃を受けて立ち上がれないマンガのキャラの気持ちはたぶんあんな感じだろう。

 幸運だったのは雑誌と服が入ったリュックを背負っていたことだ。生身だったり正面から落ちたりしていたら大怪我だったかもしれない。まあ一番の幸運は田舎なので電車が全然来なかったことなのだが。

 向かいのホームにいたおばさんが私に気付き「大丈夫!? 駅の人呼ぶ!?」と叫んでくれた。しかし私は自分の間抜けさが恥ずかしかったので、ガクガクしながら時間をかけてゆっくり身体を起こし、声が出せなかったため腕で丸を作って大丈夫ですアピールをした。

 疑いようのないアホとはこういうものである。

 以上、私の自己紹介でした。


 このエッセイはどこからでもお読みいただけるようになっております。

 一部に続きものがありますが、基本的にはそれぞれ独立した話になっておりますので、お好きな数字をクリックしていただければと思います。どうぞよろしく。

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