08 「拒絶」



「拒絶」


 ああ、どうして忘れていたのでしょう。

 こんなにも愚かしい過ちを。

 忘れなければあの世界では生きてはゆけませんでした。


 これこそが正気。私の本当の思い。

 歩み寄れると思っていた。共に歩いてゆけると、そう思っていました。


 けれど、この世界は不浄の地。

 穢れは清められることなく、巡り流れる。

 この身はそれと知らぬ間に、いつからか汚れきっていました。


 愛のためにたくさんの犠牲を生み出しました。

 信義のためにたくさんの偽りを語りました。

 理想の為に多くの思想をないがしろにし、

 幻想の為に多くの現実から目を背けてきました。


 もうここで終わらせるべきです。

 これ以上罪を重ねてはいけない。

 愛しています。だから死を。

 愛しています。だから終焉を。


 私はもう、これ以上もうあなた達を愛していられる自信がありません。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

詩集 天の贈り物 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ