第壱章「古ノ傀儡」 SeasonⅠ "An ancient Droids"

第1節「起源ノ記憶」 Episode1 "Memory of Origin"

5話 故郷の移化

Chapter5 "like a stranger in hometown"


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 口語伝承 "天地開闢カムイモシリ 叙事詩ユーカラ" 【一ノ記】

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 起源はじまり時代とき創造主かみがみは、大いなる目的 "浄魂じょうこん" のために、人類と名付けた被験体ひけんたいを創造した。

 人類は創造主に似せて作られたが、容易に再生できるように単純な元素げんそ組成そせいされていた。

 創造主のクローン "空虚カオス" と、研究ラボ施設 "空洞アガルタ" がつかわされた。

 空洞アガルタ原初ノ神々人工知能体 "大地ガエア"、"奈落タルタロス"、"慈愛アモール" が起動すると、人類の創造処 "天府ヘブン"、試験処 "平府エデン"、回収処 "冥府ネザーワールド" が組み立られた。

 平府エデンに備えられていた原初ノ魂 "十二月将げっしょう" によって、研究ラボ試験が開始された。


 宇宙が十分に満ちると、研究ラボ試験に終了が訪れる。

 平府エデンは閉じられ、"地上テラ" の実証デモ試験" が開始された。

 実証デモ試験をつかさど原始ノ魂ティターンズ "十二天将てんしょう" が新たに生み出された。


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      ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


(いつの間に、こんなに聖地がおかされてしまったのだろう…

 巨大な禍々まがまがしい建物、異様に進化した車や飛行船、人の顔つき、服装、匂い、何もかも違っている。

 とにかく、人の数が多すぎるし、街中をおおってる電磁波でんじは塩素臭えんそしゅうは何?

 アガルタの防御リングでも発動してけがされてしまった?

 さっき、8kって水鏡テレビが、2020年オリンピックと言っていた。

 一瞬で、130年近くも時が過ぎた、ってこと?)


 灰兎ミコは状況を理解しようと全てのものに目を向けていた。

 4時間くらい経っただろうか、橙色オレンジの夕陽が手を振るようにらぎ始めていた。


(おかしい… かなり近づいているはずなのに "月将げっしょう" の気が感じられない。

 ホッ、湖山池こやまいけの景色はあんまり変わっていないわね、これなら日が暮れる前には辿たどり着けそう。)


 カッチャン、キィーッ、キィーッ

 懐中時計かいちゅうどけいが静かにゆっくり回転し始めた。

(そろそろ、かな)


「メイ、次の曲がり角から北西に向かって。山の中をまっすぐ。」

 ブオォォン!バキバキ!

 枝をへし折りながら道無き道にバイクは飛び込んでいく。


 その後ろには、布切ぬのきれの様に揺れる放心ほうしん状態の封人がぶら下がっていた…



「ミコりん、クサギが…」

 メイが怪訝けげん面持おももちで呟く。

「そうね、分かってる。あいつの気がこんなに弱々しいなんて…」


(あの時、以来かもね)

 灰兎ミコが何かを思い出した時、

 キキーッ!

「どっうぇ~!!??」

 イネのお叫びと同時にバイクが急停止する。


 ドサドサ、ドサッ

 全員が投げ飛ばされた。


 シュン、シュン、シュン、シュン!

 視界の前を高速で列車が横切る。


 列車が通り過ぎた先には、神聖不可侵しんせいふかしんだった参道さんどうの入口近くまで家々が立ち並んでいる姿があった…


「なっ、な~に、これ…」

 妖精の姿に戻ったイネが、絶句ぜっくする…



「こ、ここ、どこですか? ぐぇぇえ、

 きっ、気持ち悪いっす… は、吐きそう…」

 封人が木の足元にうずくまる。


 本当に130年近くも時が過ぎ去ってしまったのか…

 灰兎ミコ呆然ぼうぜんとその場に立ち尽くしていた。






      △ ▼ ▽ ▲ △


 どのくらい歩いただろうか。

 メイを先頭に全員が無言のまま暗くなった参道さんどうを歩いていた。

 灰兎ミコは迷わずに参道の脇にある一体の地蔵じぞうに寄り添う。

 眼帯アイパッチで隠していた目をかざす。

 周囲に透き通るような優しい光りがあふれる。


 次の瞬間、一同は、真っ白な空間の中にいた。


「クサギ様ぁ~!」

 イネが悲鳴を上げて奥へ飛んで行く。


「おい、生きてるか、何があった?」

 人の姿に戻ったミコ灰兎が周囲を見回しながら問いかける。


「ね、ねえちゃん…?

 ど、どこに消えてたんだよ…」


 (おとこ、の子?)

 弱々しい声の先には、やせ細った真っ白な兎が真っ白なクッションの上に横たわっていた。


 (げっ、また兎がしゃべってる… やっぱ俺、んでる…

 絶対、んでる…)

 フラフラと倒れかかる封人ふひと

 まだバイク酔いが治っていないようだった。

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