ET-T

ゆきお たがしら

第1話 戦場にて

「ヒィ、ヒィ、ヒィェー・・・。」

 戦場で仲間の戦闘用ロボットたちは微弱な電流を発生させながら、声にならない哀しくも空しい断末魔の悲鳴を上げていた。

 戦場では、昔で言うところの殺人レーザー砲がロボットたちの手によって縦横無尽に撃たれ、粒子ビームが地を舐めるように放射されていた。

 いくら分厚い装甲の戦闘用スーツで身を固めていたとはいえ粒子ビームを浴びると、イーティ・ティの仲間はきわめて短い時間で命を絶たれた。

 粒子ビームのダメージは絶大で、金属か否かを問わず分子レベルにおいて焼き尽くすので、すぐに内部の回路に熱が届くと炎を吹き上げさせたのだ。

 それは、乾燥しきった山で火災が起きたとき次から次へと炎が燃え移り木々や草が焼き尽くされていくように、仲間の戦闘ロボットも木と化したかと見紛みまごうばかりに炎に包まれ見るも無惨な光景であった。

 全面にシールドが張られ防御された司令室からは、見たくもないし目を覆うばかりの状況のすべてが、見る者の目にこれでもかと焼き付かすように飛び込んで来ていた。

「どうして?」

 殺伐とした光景を目の当たりにして、イーティ・ティはいつも考えざるを得ない。

 司令室から眺められるすべての外の世界は遙か昔に人間が放置したもので、今となっては知る者もいない天に届くほどの高さと、昼といわず夜といわず光に包まれた壮麗な巨大ビル群が、長い戦闘の果てに跡形もなく破壊され人間たちの経済効率の代表ともいえる地表を覆っていたアスファルトやコンクリートも、痕跡すら見いだせないほど無残なものであった。

 その黒く不毛と化した大地を、敵も味方もなくお互いが相手を殲滅せんめつせんとして、太古の人間の戦闘員も同じ事だろうがロボットもロボットの尊厳を捨て去り、這いずり回りかつ地べたに吸い付くように進軍する。まるで影を捨て去ったアリかミミズのごとく、ジリジリとクネクネと匍匐ほふく前進していた。

 死に向かって一直進としか思えないような行軍の中で仲間の途切れることのない断末魔が、見ているイーティ・テイのありとあらゆる回路にこだまし、地表に貼りついたまま炎を吹き上げる姿が瞳のレンズを炎色に染めていた。あまりにも凄惨せいさん過ぎる光景は、心あるものが見れば消耗戦の域をはるかに超えていたのだ。

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