第8話 購入の動機

株と聞くと大損して身を滅ぼすというイメージを持っていた。

儲かるのは一部の優秀な人間だけで、私のような凡人はその優秀な人の踏み台にしかならないと。

だから株には30歳過ぎまで手を出さずに過ごしてきた。


そんな私であるが、テレビで紹介された株主優待というものに興味を持った。

株を保有していると会社から商品が毎年届くらしい。

届く物はお米やジュースであったり、お店で使える商品券などだ。


偉くもない私なのでお中元やお歳暮が届くことはない。

ところが株を持っていれば企業からお中元が届くということになる。

こんなお得なものがあるのかと漠然と思ってはみたが、それでもやはり自分とは無縁の世界という思いがあった。


そんな私が最初に意識したのはサーティワンに行った時のことだ。

アイスを食べながらテーブルに置いてあるチラシに株主優待のことが書かれていた。


『サーティワンの株を購入してみませんか? 株主優待として毎年1000円の商品券を贈呈致します』


だいたいこんな内容であった。

「この食べているアイスが無料になるなんて、株主っていいな」

これが初めて興味を抱いた瞬間である。

現実的ではないお金儲けよりも、アイス1個の方が私には魅力的にうつった。しかし、そう思っただけで具体的に行動に起こすのは面倒であった。


それから数年後、衝撃を与えたのが大手小売業イオンの株主優待を知った時である。

買い物でよく利用していたイオンに、イオンラウンジという株主などしか入ることができない部屋があって、そこではお菓子やジュースを無料で飲食できるという。

買い物ついでに休憩をとることができる光景を想像した。


お金持ちばかりが優遇される社会にちょっと不満を感じる。

でも世の中がそういうシステムになっているのだから文句を言ったところで仕方がない。

だからその感情は置いといて、せっかくなので私も優遇される側になってみたいと思った。


イオンの株価は10万円くらいであったので、それだけでこのようなサービスを受けられるのはお得である。

しかも銀行に貯金していても利息なんてないような世の中で、買い物で支払った金額の3%がキャッシュバック、配当金まで年間2千円位貰えるというのだから、持っていないことの方が損だと思えた。

ここまできてやっと株を買ってみようと思った。


ちなみにここで、投資をやったことのない人に「株を買ってみようと思う」と相談すると反対されることが多い。

多分、株は損するものだという先入観と、現状が変化することを嫌うからかもしれない。

株に限らず、その分野を経験していない人、もしくはかじった程度の人の話はあまり参考にしない方がいい。

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