第壱拾捌話:Takoyaki@TheUnderground
トーン、トートート、テケテーン
トーン、トートート、テケテーン
外宇宙金属酸性雨が降注ぎ、健康を損壊したルナティックムーンはどす黒く
ケブラー繊維のノレンが汚染された雨を吸い、LEDボンボリの下で力なく垂れ下がっている。
ムコウミズストリートの中でチョー・チョーも近寄らない、イマドキから外れた時代錯誤の店、それがチュルニャオオキイヨだった。
ここはオスシ・カウンターか? いいや。
ならばニクノドンブリ屋か? いいや。
クールヤッコデリバリーか? いいや。
焼き目のついた丸いボールが綺麗なマスマティクスとなって灼熱した鉄板の上で転がされている。海産物のコウバシイ香り!!
イニシエ、ジョウモンからの、日本のデントウ的ファストメシ、ベストオブコナモノ、それがタコヤキ=ボールである。
「ヘイヘイヨ、ヘイヘイヨ」
軒下の店主が目にも留まらぬテクニックでピックをさばきタコヤキ=ボールをひっくり返す。
同魂型ヘッドマウントディスプレイに流れる
「
バカメ! ウォーランウータンハシンダワ!!
タコヤキ=ボール。
ヤマト・リパブリックの地より伝わったもので、コムギコ粉末の中にトウフミート、クレナイジンジャーを練りこみ、その生地に、ごろりと大振りにチョップされたバイオタコの切り身が投入されている。ボール状に焼きあがるそれは、
「ヤグ・サハ。テンシュ=ソコモト、オマエハシンダ。タコヤキを寄越せ」
店主が手を止めずにぐりっと眼球だけを動かす。軒先にいかにも、という
双方とも同じ顔で同じように流れるような動作で致死毒の
その後ろで放射能迷彩防護マスクに
「ヤグ・サハ。イア! ラッシェー」高速でバイオタケフネにタコヤキ=ボールが盛られていく。
六個入りで三百円。オスシ・カウンターでオスシを三皿食べられることを考えるとそれなりに高い。
それを三フネ。
「
胃の腑をぎゅうぎゅう締め付け垂涎止まぬ湯気を上げるフネを受け取りざま、地面に叩きつけてからヤクザがまた致死毒の
「ンナァンーラーウホゥルァァ。
「私の
店主にとっては臍茶釜な案件だった。
「なぁ、テンシュ=ソコモト。ここだけ歯抜けになってるんだ。
気障な
店主はヤクザに一瞥くれると再び、生焼けのタコヤキ=ボールを回転させ始めた。
合点承知の助兵衛よ。おのれの土地が
何処にいるのだ、一城をまんまと取り上げられる
「インガオホッホッホー!」ヤクザは剛毛逞しい懐にかぐろい指先を突っ込んでフルオート連射可能な
「ヤグ・サハ」
ヤクザ肉の横から声がした。黒松色のトレンチコートに棒火箭を背負っている。外宇宙金属酸性雨が撥ねて
「タコヤキ=ボールは一フネ何個ですか?」
「六個です」
「それじゃ、一フネ。それとアッタカイサケを」
真っすぐに男の指先が「付喪神百年午睡」と書かれた勘亭流に伸びている。
「ヤグ・サハ! ラッシェー」
男は寒そうにトレンチコートの襟をそばだて、超速回転しながら焼きあがっていくタコヤキ=ボールを見つめていた。
「
普段なら、この動作過程で大抵の者は失禁するが、あいにく男はキカクガイなことをヤクザモノは知る由もなかった。当然である。
また、
「今夜も冷えるね、テンシュ=キデン」
男は「付喪神百年午睡」と彫り付けられたトックリを渡されるとオチョコに注いで一息にあおった。
くうううう!!
あたかもコマーシャルのごとく、美味そうに頬を緩ませる。
立ち飲みこそ、外宇宙金属酸性雨に冷えきったウシミツアワーの楽しみである。「スゴイトテモビミデアル」その間、ヤクザモノは激怒した
柔肉を抉って殺傷したらしめる凶弾だがかすりもしなかった。「ンホォォォォ?」
ジアゲ屋も首をかしげ呟いていた。「ンホォォォォ?」
「
ヒットしなかった弾丸をいぶかりながらも水を差された
「それじゃあ、オアイソしてくれたもう。此処に五百円
男は去った。店主の動作から器量を見極めたうえでの弾正台……いや、ノントラブルが信条のヤスケ・サジらしい立ち居振る舞いである。
「
顔も仕草も相似している
一人はからぶった右コブシをさすりながら。一人は硝煙を漂わせるチャカの銃口を見つめながら。
それもまもなく。
ヤクザモノはLEDボンボリをワンツーパンチで圧倒的粉砕し、ノレンの架かっているバイオタケをやおら引き抜き、
「
「ヤグ・サハ。死んだら終わり。私のジアゲのお金いらないです。チャメシマエ。ヤッチマエ!!」
韻を踏んだ
バイオタケが振り上げられ、振り下ろされる。
ボンボリが消え薄暗くなった店内で、店主はピックを超速回転させている。
DOGAGAGAGAGAGAGA!! BTOOOOOOOOOOOMM!!!!
「
放射能迷彩防護マスクの向こうで徹頭徹尾に破壊され、粉砕され、千切られ、木端微塵になるのを見た。
いや、幻視した。そして嘔吐した。腐敗したバナナよ、災いあれ!!
ジアゲ屋の放射能迷彩防護マスクにタコヤキ=ボールをつまむツマヨウジが刺さりグラスにひびを入れていた。粉砕! 絶対安心の防酸、防毒、防刃、防塵、防弾加工なのに!? その上、IRCでこの事を
左右を固めていたヤクザ(経費をケチった所為だ、クーロンヤクザShoggoth-10型)二人はジアゲ屋よりもっと悲惨な運命をたどっていた。
平時においてはいたって普通の、しかし今となっては冒涜的なまでに禍々しい「明朗会計」「食材確保」の四文字が店主の装着している同魂型ヘッドマウントディスプレイの鏡面にLEDとして浮かび上がり、狂神的透徹な無言の意思表示としてユッグゴトフの血痕を暗示するかに明滅し流れていく。
ヤグ・サハ! 眼にも見よ!!
やおら店主が鉄板の上でオーケストラの指揮者のようにピックを躍らせたのだ。
「IAーth」超速回転。跳ね上がったタコヤキ=ボールがヤクザの腕にめり込む。(ゴア表現!!)超速回天。
「IAーth」超速回転。(ゴア表現!!)「IAーth」超速回天。(ゴア表現!!)「IAーth」超速回転。(ゴア表現!!)「IAーth」超速回天。(ゴア表現!!)「IAーth」超速回転。(ゴア表現!!)「IAーth」超速回天。(ゴア表現!!)「IAーth」超速回転。(ゴア表現!!)「IAーth」超速回天。(ゴア表現!!)
瞬きをするごとに、タコヤキ=ボールが口当たり柔らかなコナモノにあるまじく、まるで宇宙の開闢直後、時空が指数関数的に急膨張したインフレーションの終了後に相転移により生まれた超高温高密度のエネルギーの塊に弾かれたベアリングボールのようにヤクザの腕といわず、顔や胸や
「ヤ・ヤグサハァァァァァァ!! そ、尊君は一体……?!」
補陀落のものかと続けようとしたが、
瞬き一つ、後を追うように、
「沢山撃つと実際当たりやすい」
真理である。であるが、それを実行するのは容易いことではない。
「
(畜生どもよ、悪しき姿を餌に待ち、伴に棲まん、かがりびの都、伴なう餌よ、帰依し逝かんとからだは、環におのれの業をみるだろう)
付喪神百年午睡に酩酊しているかのように熱い息を吐き出し、店主は夢見ごちた。
いあ! 星辰揃いて黄泉がえりし深淵の旧支配者よ!
ひとえに、タコヤキ=ボール屋「
店主が店から出てくる。
ソウルはもう姿を消していたが、独りの狂った
ミツナリイシダとを、どうやったら区別出来るのか。否、常人には出来やしない。
ヤグ・サハ! ル・リエー、フタグン!!
慣れた手つきでの後始末である。こうして幾多のHomo sapiens、Shoggoth、Tcho-Tchos、Yah-Tehが言葉を残すこともなく、姿を遺すこともなく、闇に葬られていったのだ。
時折襲撃に来るHomo sapiensなど、クトーニアンの餌だ。こうして、店主は、ネオキリューガヤをタコヤキ=ボールでわが世のニルヴァーナに。そしてミツナリイシダはヒガシカタを討伐し天下を獲るという野望で合致していた。
ジョウモンより伝わる名言、アブハチトラズとはこのことである。
【補陀落山の佐治さん:
第2018話『石田三成はBigC!? 決戦! ネオキリューガヤ!!』】
トーン、トートート、テケテーン
トーン、トートート、テケテーン
待てども果てども星辰夢見のお伴に一本「付喪神百年午睡」、
酒造会社九十九蔵 の提供でお送りしました。
番組企画制作:霧生ヶ谷ケーブルテレビ
(C) 2018 真霧間キリコ
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