第九話:ショゴスがあなたを殺る瞬間を狙っている8つの仕草

 南極原産のペンギンをおみやげに持ってきてくれたり、身体中を這いずりまわって気持ちよく愛撫してくれるなど、ショゴスは主人に対してショゴスなりの愛情表現を見せてくれる。

 ……そんな解釈でキャッキャウフフと喜んでいた時期がありました。

 ちょろい。

 つまり、浅薄で、甘ちゃんで、容易で、底抜けに生ぬるかった。

 過去の私は正気ではおそらくなかった。

 自身の経験を弁明、いや諸兄らに警鐘を鳴らしたい。


 ショゴス。

 数十億年前に古のものオールド・ワンにより従属種族として創造され、催眠暗示によってマッチョに鍛えられ、水中に巨大な都市を建設するなど篤く貢献してきました。

 古のものに数百万年従ううち、脳の固定化によって知性を獲得した彼らは、これまでの待遇に不平不満を感じるようになり、今から一億二千年前の二畳紀にあからさまな反乱を断行。

 初め、反乱はショゴスの完全勝利かと思われたものの、最終的には古のものの手により鎮圧、そして服従のための調がほどこされ、今に至ります。

 

 ながく、人間社会との交わりはありませんでした。

 1930年のパボーディ南極探検隊の記録と、1928年、連邦政府機関がおこなったインスマウス一斉取締まりに関する機密書類から存在が知られるようになってからは、今では良い隣人です。

 本当に?


 (実にけしからん……いあ!

  実に冒涜的で破廉恥極まりない寝姿であなたの横で淫蕩な吐息を漏らしている豊満なショゴスのことは一旦忘れよ

 ウィンターズ=ホールとホイットニーによる『エルトダウン・シャーズ』のおぞましい翻訳を思い出すがいい!!)


 我々が黄金の蜂蜜酒的な、甘い甘い願望にどっぷり漬かった猛烈な前向き思考の袋小路にはまりこんでいて、今も昔も、本当のところショゴスたちは人間を捕食対象ごちそうとしてしか見ておらず、隙あらば我々をむちむち、いや、バリバリとテケリリしているならば?


 紹介する8つの仕草をショゴスが見せた時は要注意。邪視眈々とあなたを殺る瞬間を狙っている合図だろうから。



 1、人間の体をまさぐり舐めまわしてくる時


 それは愛情を示しているのではない。

 ゼラチン状のショゴスに触れられた部分は汚れた皮脂が除去されスベスベとする。

 例えるならば、粘性の高いローションでの密着マットプレイだ。

 とはいうもの、次元の違うエクスタシーに身悶えしている諸兄も多かろう。

 病みつきになるのも分かります。かつての私も。

 ……。

 だが、待て。立ち止まって考えてみてごらんなさい。

 腐食性の酸と消化液で身体を溶かそうとしているのだとしたら。

 

 

2、じっと見つめてきた時


 容姿、会話能力、なにごとも自由自在に真似できる知的なクリーチャー。

 人語を発音するのに適切な漏斗状の口吻でぬぷぬぷとおしゃぶ……おしゃべりすることにも貪欲である。

 彼らはたいてい主人の望む姿で傍らにいる(私の一押しはヴィクトリアン・サーヴァント、いわゆる巨乳メイドさん萌え。

 いあ! 爛熟した葡萄の房のごときいっぱいおっぱい!)。

 ショゴスは、普段の姿は直径5メートルほどの球形をしている。非常に高い可塑性と延性を持ち、時々に必要な感覚器官、付属器官を自由に形成するためには最も効率的な形態なのだ。球形の表面で無数にまたたく邪悪なる目イーヴィルアイでロックオンされたら、こちらから決して目をそらしてはならない。

 目をそらす=弱者認定される。

 ショゴスたち反逆者の本領を発揮されてしまうかもしれない。



3、死んだ獲物を持ってきた時


 延髄斬りで『活け締め』され放血されたペンギンを差し出された?

 それは断じて「プレゼント」などではない。

 「次はお前だ!!!!」という殺害予告である。

 イカモノ食いに目覚めたとかそういうのは勝手にしてください。



4、名状しがたいものを吐き出した時


 ショゴスは有機物ならば大抵食べてしまう。

 なんでも食べられる、と美味しく食べられるは別だ。

 うまくもないものを食べ嘔吐することで、消化器官を一掃し、来たるべき次の聖戦ゴグ・マゴグに備えているのだ。

 せん妄し狂信的に糞尿を塗りたくるスカトロジー儀式的な、

 百歩譲ったところでそういうハードプレイでは決してないから。



5、戸口に棲み潜んでこちらを見つめている時


 我々人間の生態を研究すべく隠れている。

 高度な放置プレイではない。



6、パソコンなどの電子機器の上で眠る時


 ショゴスたちは、我々人間がテレパシーではなく電子機器を使って外界と通信することを完全に理解している。

 モニターを泡立つ粘膜で包み込み、キーボードに埋没同一化し、外界からとのネットワークを遮断し諸兄を孤立させることに全力を傾注する。

 付属器官を巧みに整形し(最高にキュートあるいはセクシーな、擬人化や擬獣化、亜人化、機械化といった主人の望むお好みの)、窮極の寝顔で寝そべり気をそらしているのだ。



7、就寝時に顔を踏んでくる時


 あの気持ちいい重量感のあるアルビノ特有な雪花石膏アラバスターのごときおっぱい、

 あるいは常闇を抽出し精製したかに純粋で透き通った黒い双丘。

 いあ!

 思考を弛緩させる芳醇な香りフェロモンをおっぱいの中央に突出する乳輪に囲まれた薄桃色の乳腺の開口部ピンク色のちくびから放ち、揉みしだく五指がいくらでも沈降してしまうたゆんたゆんに密着してくるゼラチン質の甘き抱擁を拒絶することが何人に可能か?

 いあ!

 鉤状に細く伸びた触手を耳穴に優しく挿入され脳をまさぐられる快感!

 もうお分かりだろう。

 我々を窒息させ、息の根を止めようと試みているのだ。彼らの執念はすさまじい。成功するまで何度も何度でも行うだろう。覚悟せよ。

 ……。

 若草の淡くアンダーヘアしげる肉付きの豊かな尻臀しりたぶで顔面騎乗位ロデオされるなら本望??

 そうですね、ティクオン霊液を処方しておきましょうか。



8、部屋の灯かりをつけた瞬間、全力で鳴き出す時


 「テケリ・リ、テケリ・リ!」

 「テケリ・リ、テケリ・リ!!」

 「テケリ・リ、テケリ・リ!!!」


 第二次ポエニ戦争におけるカルタゴのハンニバル将軍が指揮した「トラシメネス湖の待ち伏せ」をご存じだろうか。

 気づかぬ間にショゴスたちは、無数の同志たちを伏兵に仕立てる。

 そして、予め交戦地域やキルゾーンを設定する。

 

 地球上の多くの生物において遺伝情報の継承と発現を担う高分子生体物質、デオキシリボ核酸はショゴスが最も欲するもの。

 諸兄らが不道徳インモラルで不健全なおこないを続ける限り、濁った白色ないし黄白色の粘り気のある前立腺液と精嚢分泌液の混合物ザーメンあるいはスペルマとよばれるものを喰らい、孕んではいくらでも発芽していく。

 ショゴスは生来、不浄で邪悪なるものとゆめゆめ忘るる事なかれ。

 けたたましい鳴き声は、

 戦術論の基本的な攻撃の一種である「伏撃アンブッシュ」ならず。

 包囲殲滅作戦は失敗した、撤退せよ、と仲間たちに警告を発しているのだ。

 不穏を抑え、狡猾に次の機会を待てと。

 


 20世紀英国を代表する性魔術左派の解説者、ケネス・グラントが、

 ヘブライ語の「beth shaggathai(姦淫の家)」とショゴスを結びつけているのはショゴスらの生存戦略を識っていたからに相違ない。 


 どうでしたか。

 ショゴス愛好家ならよく遭遇する仕草ばかりでしょう?

 四六時中、いや、

 にあなたを殺る瞬間を狙ってるってことだ。


〇原典

How To Tell If Your Cat Is Plotting To Kill You

http://cheezburger.com/2067973/how-to-tell-if-your-cat-is-plotting-to-kill-you


猫がこんな行動をした時は要注意。あなたを殺る瞬間を狙っている8つの仕草(ジョーク的な意味で)

http://karapaia.com/archives/52238703.html

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る