さよならばいばい 、

ずっと一緒だった。

みんな同じ姿をしていて、みんなで毎日楽しく過ごしていた。

明日も明後日も明々後日も、ずっと一緒にいれるんだと。

そうずっと思っていた。


あるとき彼女は言った、

「あなたはどうして夜空に浮かばないの」

わたしはその言葉の意味がよくわからなかった。


あるときその子は言った、

「あなたはどうして色が無いの」

わたしはその言葉の意味がわからなかった。


あるときあの子は言った、

「あなたはどうしてさざめかないの」

わたしは言葉の意味がわからなかった。


あるときみんなが言った、

「あなたはどうしてずっと立っているの」

わたしは意味がわからなかった。


何もわからなかった。


彼女は月だった。

精一杯夜空に輝く月だった。

みんなに見上げられて、幸せそうだった。


その子は花だった。

坂の端で咲きほころぶ桃の花だった。

みんなに愛でられて、幸せそうだった。


あの子は海だった。

大きな心ですべてを受け入れ微笑む海だった。

みんなに触れられて、幸せそうだった。


わたしはわかってしまった。


月は桃の花を愛していた。

海はみんなを愛していた。

わたしは


なにも愛していなかった。


わたしはわたしの事しか考えていなかった。

その証拠に月も花も海もわたしを必要としていなかった。


わたしはその内のどれとも近くなかった。


わたしの側には誰もいなかった。


ふと足元を見降ろすと、惨めな暗闇だった。


わたしはそれが怖かった。


わたしはなにも持っていなかった。


暗闇が怖くて、恐ろしくて。

わたしは自分の体に力を入れた。

すると頭がぴかぴか光りだした。


わたしが何だったのか、わたしはその時ようやく気がついた。


ここでずっと月の帰りを待っていようと思った。


道行く人はわたしに気を留めず、先へ先へと明るい道を歩いていった。


わたしの近くから空を見上げれば、きっと近くに月がある。

きっと月の側で光っている様に見えるだろう。


わたしはそれで充分だった。


ぴかぴかぴかぴかぴかぴかぴかぴか、

わたしはずっと光っていた。






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