折れた鍵【二四〇文字】

 扉を閉ざす時というのは、あまり気持ちのいいものではない。その中に輝く黄金があると知っているから。いいや、だからこそ閉じなくてはならないから。

 しっかりと扉を閉ざし、鍵を掛けて、ほんの少し鍵穴に力を込める。

 ぱきりと音を響かせて、頼りない鍵が折れて壊れる。

 その小さな隙間から黄金が漏れ出すことがないようにそうして封をする。

 あとには感情だけが残る。

 それをプレートに刻み込んで、扉に打ち付けて、私はその場を去るのだ。

 鍵束は、少し軽い。

 たった一本、それでも私には重いものだったのだ。

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