土瀝青で凍えた鳥【三四〇文字】

 それを見た瞬間に思ったのは、あんなところで寒がっているのだろうかということだった。

 なにせそれは、羽の先が尾羽と平行になるよう少し広がっていることを除けば、様々な媒体でよく見る首を胸元に埋めてい凍えている鳥の姿と違わなかったからだ。

 けれどそうでないと気づけたのは、その体が羽毛特有の柔らかな丸みを帯びることなく平らであったからだ。

 血も内臓も骨も飛び出ることなく、仄白いアスファルトに押し付けられた死骸にふわふわとした感覚はない。

 靴底に張り付いたガムのように、ただそこで縮こまってへばりついていた。

 あれは、いつまであそこにあるのだろう。いずれ通報を聞きつけた公務員の手によって、引き剥がされるまで凍えているのだろうか。

 そう考える私の目の前で、また一台、車が鳥の上を通り過ぎていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る