ジムノペディの雨音【四六〇文字】
私たちの周りには、愛を語るものたちがたくさんあります。そして、それはとても尊いものであると、それらは歌います。
けれど、けれども。本当にそうなのでしょうか。
私たちは、愛を、わかっているのでしょうか。
愛がわからない。
そう告げることは、とても苦しいことです。
それを表に出すことは、とても憚りのあることです。
なぜなら、みんな、知っているという顔をしているのですから。
けれど、けれども。
わからないものは、わからないのです。
だけど、口にすることはできないまま。
求められるがまま、真似するまま、流されるまま生きて、生き続けて。
そうして、いつかの日にとても綺麗なものに出会った。
もしかすると、私の感じた美しさは、愛ではないかもしれません。
愛を知る人々は、歌い上げる人々は、それは別のものだというかもしれません。
ええ、たとえそうだとしても。
私はそれを美しいと思った
私はそれを尊いと思った。
隣で、見て、生きていきたいと思った……。
だから、彼女の手を取ったのです。
彼女と一緒ならば、この世界を支配する陰鬱な雨音を、別の音色に感じられると信じて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます