雨が上がったら

@Ein

第1話

ある雨の日から始まる物語。



*



「あ、そうだ!ねえ、ユーリ。明後日ヒマ?エルジオンの街を案内してよ!」

隣でそういうのは、目がクリッとしたちっちゃくて可愛い系の女の子だ。

小さい女の子というと怒られるか。俺よりも年上だ。

なんでこんなことになってるかというと、話は数時間前に遡る。



*

「いやー、雨が。降ってきたねえ」

「本当に」



数日前にここコダハに来てからずっと晴れだった。快晴であった。コダハには俺が通うマルレーン大学の別キャンパスがある。俺たち技術化学学部2年生は、そこで夏休みの間行われる講義に参加しなければならなかったのだ。ちなみに3年生からはここ、辺境の地と大学内で言われているコダハキャンパスに移動となる。おかげでうちの学部だけは他の学部と比べて試験倍率も低い。まあだから俺も受かったのだが。


数日かけて行われた講義自体は特筆することもなく、授業から解放された俺は今日の昼頃には俺の今住んでいる街、エルジオンへと帰る予定であった。マルレーン大学の本キャンパスのあるところでもある。

ただ、予想より早めに講義も終わったし折角コダハにきているので、先輩のレックスさんが住む寮に遊びに行くことにした。来年から住むことになるから一度見ておきたいし。


そうしてレックスさんとお互いの近況や大学とかについて話したり、先輩に彼女がいることは都市伝説ではなかったことに驚いていたりしたら大分時間が経ってしまった。ちなみにレックスさん、エルジオンにいた時よりも太っていた。

幸せ太りかこの野郎。


「そしたらそろそろ帰りますわ」

「おーそうかー、じゃあ駅まで送ってくよ」

「あざまーす」

とまあ適当ではあるが、大体こんな感じの会話をしながらカーラに乗り込んだ。


そうしてアヴィに向けて少し走らせていると、急に雨が降ってきたのだ。本当に突然であった。


ついさっきまで小降りだった雨は強く車に打ち付けている。

「やばいなこの雨」

「そうですねえ。これで帰りの列車ジェレ止まったらいやですね」

嫌というよりも色々と面倒である。

「帰れなくなったら連絡してくれればいいよ。泊めてあげれるし」

「ありがたいっす。まあ、そうならないことを祈ってますわ」

「そりゃそうだ」


*


「送ってもらってありがとうございましたー」

「元気でなー。来年こっちに来るの待っとるでー」

「はーい」


というわけで駅に到着。

雨は一時より弱くなったものの、依然として強く降り続いている。

まー汽車止まらんだろー。だいじょーぶだろー。無問題ヨー。

俺は駅の売店で家族にお土産を買いつつ、汽車に乗り込んだ。

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