あなたはだれ?
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第1話 おやすみなさい
今日は珍しく、夜通し本を読んでしまった。
一時期本を読むことにハマっていたのだけれど、その他もろもろのマイブームと同様に知らぬ間に日々の日常の中から抜け落ちて行ってしまった。
読了後の余韻に浸っているからこんな文章まで書く羽目になってしまったのだけれど、基本的に読書の楽しさは読んでいない時期には思い出せない。ページをめくっている間や読み終わってすぐは言葉があふれていて人に語りたいくらいになるのでこの対比は不思議なものである。もしかしたら、感想を言うことは自分の想いを伝えたいのではなくて、自分の中に濁流となって注がれた言葉の圧力をただ開放しているだけなのかもしれない。故にその言葉は自分の言葉でなくて読んだ本の中の言葉であるわけだ。内容を忘れていくにしたがってその時の面白さを伝えるすべを失っていくのは、その時語った言葉が自分の内から現れたものでないことを示している。
それ、もうすでに吐き出す言葉も少なくなってきたようだ。
こうして考えると、自分は取り入れたものをそのまま吐き出すだけでなんとも自己がないと嫌悪感に浸るものだけれども、それもまた今本を読んで自己を強く持たなければならないという気持ちに当てられているだけなのかもしれない。実際、後になって読み返してみると過去に書いた自分の文章ほど、自分で書いた痕跡が明らかな事も相まって気持ち悪く見えるものもないのである。
さて、この文章のテーマなのだが、それは上記のように移ろいやすい自己の精神を追いかけることによって、自己の同一性とはどのようなものか考察を加えることにある。ついては、今晩の気分をもとに文章を綴ったわけだ。
ほら、もう文章の最初の頃の気持ちとは違うものになってきてしまっている。絵だとなかなかこうはならないのだが、言葉を紡ぐという事は絶えず自己もアップデートしてゆく作用があるらしい。
ともかく、今日は、おやすみなさい。
あなたはだれ? ∮ @otomusaya
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