第16話 vs村雨風切
村雨風切は隣町で有名な 居合い斬り番長 だった。
黒髪ポニーテール・・・セーラー服・・・そして、帯刀
道行く人は彼女の鋭い目つきと殺気に気おされて声をかけることができなかった。
隣町で彼女は有名だった。隣町のゴロツキ連中で彼女の名前を知らないものはいない。
「風切?この町でその名前を口にするんじゃねーよ。殺されて―のか」
「?」
「奴の名前を口にすることすら、この町じゃタブーなんだよ。」
「一年前この町を占めてた四朗さんのグループを一晩のうちの壊滅させた化け物だよ。この町で奴の名前を聞いた連中はみんな震え上がるぜ。」
大海「あそこの角を曲がってしばらく行ったところが真田の道場です。」
「・・・丁寧に教えてくれて、ありがとう、優しいひと」
大海(ユズハ師匠もいないのに何の用事だろう?)
孝一は今日も真田道場で壁を殴っていた。
刀男が付けた壁の傷がちらちら目に入る。
『生死をかけた戦いは常に一瞬ですべてが決まる。1000回死んで1回生き残る技が成功すると思えるおめでたさ、そんな気概で鍛錬を続けているお前は話しにならねぇよ。』
孝一(ち、あの傷のせいで集中できないな・・・)
風切「お邪魔します。」
孝一(・・・女子高生?・・・しかも、また、帯刀している・・・)
風切「・・・その、道場で無心に壁を殴る不審行為・・・もしかして、お前が水上孝一か?」
孝一「・・・確かに俺は水上孝一だが、これは不審行為じゃない。」
風切「・・・」
風切は値踏みするように孝一を見た後、ため息をついた。
そして、刀を構えた。
風切「お前個人に恨みはないが・・・切り伏せさせてもらう。」
孝一「?」
風切「あれはつい最近のこと。」
+++++++++
風切「どうですか・・・ゼン師匠・・・」
「師匠と呼ぶな・・・俺はお前を弟子にとった覚えはねぇ」
「そうだな・・・他人としてあえてアドバイスするなら・・・その剣全く『重み』がねぇ・・・例えるならそう・・・真田道場にいたガキと同じ気概のない太刀筋だ。」
「お前はあのガキと同じ『かっこだけ』なんだよ・・・」
++++++++++
風切「お前を切り伏せて・・・格の違いを証明する・・・」
孝一「それ、完全に俺 とばっちり じゃないか。」
風切は刀を構えた・・・本気で孝一を斬るつもりのようだ。
孝一「ああ、つまり、あの『ジーパン侍』の弟子ってとこか・・・」
風切「その呼び方をやめろ、師匠の侮辱は許さない・・・」
孝一(あれ?・・特徴を冷静に述べただけだったんだが・・・)
鍔鳴りから一閃、風切の刀が孝一の首筋に線を描く。
風切(・・・切れて・・・ない。反らされた。)
孝一は一気に距離を詰める。風切は後ろに飛びのいた。
孝一(危な・・・なんとか受け流せた・・・)
風切(・・・これが真田流の『受け流し』とかいう技か・・・)
孝一の腕にぴりっと痛みが走る。
(少し斬られてる・・・いつ?・・・さっき後ろに飛びのいたときか・・・)
風切「・・・あんた、対人戦の経験が薄いように見える。・・こちらは武器持ちだ。・・・ハンデを儲けよう。わたしの体の一部に触れればあんたの勝でいい。」
風切は刀を振って庭の灯篭の傘の部分を落とした。そして、刀を鞘にしまう。
風切「・・・次で決める・・・」
孝一(相手は俺の間合いの外から攻撃できる。次の一撃をさばいて、相手に触れる・・・)
対人戦の経験が薄い?・・・そうだな・・・コンビニ強盗としか戦ったことがないし・・・だったら・・・たくさん経験している相手って誰だ・・・
・・・壁だ・・・
あれが壁ならば・・・俺はどう対処する?
風切は突進して、間合いに入った瞬間 刀を抜いた。
『生死をかけた戦いは常に一瞬ですべてが決まる。1000回死んで1回生き残る技が成功すると思えるおめでたさ、そんな気概で鍛錬を続けているお前は話しにならねぇよ。』
風切には孝一が対処に遅れて斬られる未来が見えた。
孝一の動きが変わる。
風切の刀と同時に孝一の拳が繰り出され、正面衝突した。
素手で武器と正面から渡り合うなんて馬鹿なのか?
このまま切り伏せれば私の勝・・・
拳から何か電流のようなものが走る。なんだこれは?
次の瞬間意識が遠くなり、それに抵抗することができず、倒れていることに気づいた。
$$$
孝一「母さん、ただいま」
母「おかえり、孝一」
孝一「今日、刀持った女子高生に斬りつけられて・・・ホント参ったよ。」
母「物騒ねぇ」
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