月と僕は一人ぼっち

綱渡手九

普通嫌い

俺は普通が嫌いである。

断じて嫌いである。

好きになんかなれるわけはない。

普通でいること。それは、そこに居る事。

それ以上の何者でもない。

要するに空気だ。

汚れてもないし、きれいでもない。

色のない存在なのである。

だから俺は普通が嫌いなのだ。

だから俺は普通で居たくないのである。


俺は、よくいる普通の高校生である。

だがそれが嫌だから俺は俺でなくなる。

普通でなくなり高校生活を生きている。

そんな俺に初めて偽りでない普通でないことが起きた。

俺は、人の少ない(というか居ない)屋上で

昼を食べた。

俺の学校はなぜか屋上に人が寄り付かないのだ。

その理由を俺は知っている。

それは俺が毎日毎日ここで昼(弁当)を食べているからだ。

俺は学校一の変わり者という立ち位置にあり故に人などよりつかない。

そのキャラも俺が勝手に作り上げ勝手に演じているものなのだ・・・・・・

いや演じてなんかない。絶対にない。


話が脱線しすぎた。元に戻そう。

要するに俺が屋上に居たわけだ。

一人で。一人っきりで。

するとどこからか声が聞こえた。

「突然すみません。ずっといやずっとと言っても1年生のときからなんですが・・・・

えっと、そのそれで私は水羽君のことが好きでした。」

告白?そう思ったが一向に返事がない。

ということは練習?

俺は悪趣味ながらチラッとのぞいた。

やはり一人のようだ。

あれは・・・・・・

ぱっと見て誰かわからなかった。

えっと・・・良く考えて考えた結果、俺のクラス(俺のという訳でもないが一応2年A組だ)の

森山 幸だ。

極々普通の奴だ。・・・と言う印象しかない。

キャラのうすーい奴だ。と思う。

話したことがない、とか人一番暗いとかならまだキャラ立ちしそうなときだが

それすらも無いただただキャラの薄い奴だ。

しかもそんな森山が水羽に告白の練習をしているというのだ。

ちなみにこの水羽というのは

俺の幼馴染にしてそれはもうめっちゃくちゃモテる。

自慢じゃないが俺はそこそこ顔がいいのだが(これは俺がナルシストとかじゃなくて

実際結構イケメンなんだ。)それでも水羽はかなりモテる。

(水羽はまあ俺と同じか少しイケメンじゃないぐらいのレベルだが)

まあ要するに普通過ぎる森山がモテまくる水羽というのはまず無理ゲーという奴だ。

だがなぜだろう。非常に俺は燃えてしまう。

楽しそうだ。そのことで胸がいっぱいになる。


ここはまず・・・

俺はそっと近づき

森川に話しかけた。

「なにやってんだ?」

「ふぇ」

すると森川は急に情けない声を出した。

「なっ」

俺も森川のその声を聞いて驚いて若干声を漏らしてしまった。

「い、いたの服部君」

森川があわてて言う。

驚かそうと下のにもかかわらずその対応に驚く。

「あ、えっと覗き見するつもりは無かったんだ。

声がしたから気になって見に来ただけだし。」

俺がほほをかきながら言う。

沈黙が続く。かなり気まずい。

「えっとさあ勇人の子と好きなんだよな」

勇人というのは水羽の名前だ。

その言葉は気まずい空気を壊し

さらに気まずい空間を作り上げた。

「ふぇ、えっとそのあの・・・・・・

う、ん」

しどろもどろになりながらも森川は答えた。

「そうか・・・」

俺は途轍もない事を口にする。

「なら俺が手伝ってやろうか?

俺、勇人の幼馴染だからさ結構いろんなこと教えられると思うし。

それに、あいつすっごいモテるからさ。」

その言葉が運命を変えたのだ。

普通な彼女と、俺の、そして

多くの「メインヒロイン」と水羽という「主人公」の。




「えっと・・・・」

森山は「この人大丈夫?」もしくは「ウザっコイツ。」

という目で俺を見た。

要するに俺の言っていることを理解していないもしくはしようとしていないのであった。

まあそれも当然のことである。

俺はもちろん健全な高校生であるからしっかりと恋もする。

その恋を急に手伝うなんていって来られたら全く理解できないだろう。

だから森山の理解力を攻めないでほしい。

さらにいうと俺の説明力やら人間性やらも攻めないでほしい。

まあそれはさておきだ。

俺は森山に今一度確認を取った。

「えっと森山。

お前は水羽のことが好きなんだな。

付き合いたいと思ってるんだな?」

すると森山は若干慌てて答えた。

「あの・・その・・私は水羽君が好きで

たぶん無理だけど出来れば付き合いたいと思って・・・」

だんだん声が小さくなっていった。

こういう大切なことをハッキリ言えるでもなく

かと言って何も言えないでもない、そんな様子もまさに普通だ。

ホントぱっとしないんだな・・・・

心の中でつぶやく。ここまで普通なのはもはや逆にすごい。

だが、まあ俺は普通が嫌いである。

なのでそこについて深くは探らない。

「よし、じゃあお前の恋敵わせてやろう。

お前と水羽を絶対つき合わせてやる」

俺は我ながら噴出すぐらいに馬鹿なことを同じく我ながら噴出すぐらいの堂々とした態度でいった。

「ふぇ?」

またしても森川は情けない声を漏らした。

俺は困ったように頬をかいた。

いや実際困ってるのは俺じゃなく森川で

俺は逆に困らせているだけなんだが・・・・

「えっと、その・・・あ、ありがたいんだけど

なんというか申し訳ないし。その絶対敵わない恋だから

そんな手伝ってもらったりとかそういうのは・・・」

森川が申し訳なさそうに言う。

なんというか俺は、熱弁を誘うような

キーワードを耳にいれついつい歯止めが利かないレベルに達してしまった。

「そうかわかった。どうせ敵わないと思ってるんだな。

ということはそんなレベルの気持ちだってことか水羽を好きな気持ちは。」

俺は失礼上等でどんどん口を滑らす。

「ち、違うよ。

水羽君を好きな気持ちは誰にだって負けないよ。

世界のどこを探してもぜぇたい私が1番水羽君を好きだもん・・・」

森川から文句、あるいは不服の言葉が出た。

「ほう、その言葉嘘じゃないんだな。」

俺が森川に尋ねる。だめだ、もう止まれない。

「う、うん。」

しっかりと森川は言い切った。

「なら俺に手伝わせろ。

お前を水羽と付き合わせる。そのためなら略奪、裏切り、どんな手も使う。

つまり俺とお前は『共犯者』になる。

どうだ。それでも水羽を好きって気持ちは変わらないな?」

再び俺は尋ねる。森川は息を飲む。

「は、はい。か、変わりません・・・」

そして森川は言い切った。

「そう来なくっちゃな。

面白いものが見れる。いいなこれから水羽の周りにいるメインおよびサブヒロインを倒す。

キャラの濃いヒロイン全員に攻略対象にすらならないどころか名前も無い

NPCもしくはモブのお前が勝つのは異常なほどの無理ゲーだ。

いいなこのゲームに攻略方法なんて存在しない。

よって一から全部考える。覚悟しろよ」

俺はまたもやズラズラとしゃべった。

ホント歯止めが利かないんだから。

「あ、あの服部君?

で、出来ればでいいんだけどそのお前って言うのやめてくれないかな?」

森川が俺に申し訳なさそうに言った。

「あ、すまん。

じゃあなんて呼べばいい?」

俺は頬をかき居ながら聞く。

本来なら「森川さん」か「幸さん」と呼ぶのだろうが

共犯者となった俺たちがそのような呼び方を使うの望ましくない。

「え、あ、えっと・・・・・・・

何でもいい・・・です。」

森川が答えてくれたがなんでもいいが1番困る。

「じゃあ普通に幸で。」

悩んだ末無難な名前呼び捨て手法を使った。

「じゃあ私は服部君のままでいいよね?・・・です」

森川が聞いてくるので了承したが

先程からわざとらしくつけた「です。」が、気になって仕方が無い。

まあいい。そうして俺たちの戦いは始まった。




「えっと、まず策を考える明日話そう。」

俺は作戦など考えているはずも無く

後日話し合うことを約束した。

幸と分かれた後、俺は頭に手を当てて反省する。

「はあ、またやっちった。

どうしていつも勢いで言っちゃうかなぁ。

どうすんだよ。幸が勝てるわけ無いだろ。」

なぜそう思うのか。詳しく説明しよう。

まず、水羽についてだ。

奴とは小学校からの腐れ縁でとても仲がいい。

やっさしくて正直言ってすごい。

だがそれ以上に彼の周りがすごい。

それはどういうことか。

説明しよう。まず水羽には俺ともう一人幼馴染がいる。

それが里中九十九だ。

彼女はお決まりの幼馴染属性のほかにあまつさえ

ツンデレ属性やドジっ娘属性まで持ち合わせる。

俺が思うに最強のキャラの一人だ。

あ、いい忘れれていたが勿論全員美女だ。

水羽を好きな者で今紹介する人物は。

九十九は、めがねっ娘だ。

それで次に自称魔女のボリソッチュワ・マーガレットだ。

マーガレットはいわゆる中二病属性を持っている。

ロリ顔である。

とまあ言い出すときりが無いわけだ。

だが幸はモブキャラだ。

そんな無理ゲー聞いたことも無い。

だが俺としては燃える。

それになんとなくこう胸が焼けるような・・・・


翌日。俺と幸は放課後ファミレスに行った。

「えっとまずだな。

キャラチェンジの一番手っ取り早いのは何だと思う?」

俺はいきなり(いや実際はファミレスに入り色々注文とかをしたので

いきなりじゃない)幸にたずねた。

「え、えっと・・・・」

幸は戸惑った。

「いいか、アコン、お前は今日イメチェンをする。」

俺は言う。それも結構自慢した顔で。

「ア・・・コン?」

イメチェンよりも先に幸は俺がアコンといったことに引っかかった。

「あ、ああ。幸、お前を今日からアコンと呼ぶ。

幸はどうも普通だからな。」

俺はズラズラと御託を並べる。

「う、うん。それはいいんだけど何でアコン?」

アコンが聞いてくるので答える。

「アコンプリスてのは英語で共犯者って意味。

それでそのはじめの3文字を取った。」

俺が答えるとアコンはドリンクバーのカフェオレを飲んだ。

「それで、イメチェンって?」

カップから口を外したアコンは俺に言った。

「なっ」

俺が不覚にも声を漏らしたのは

今のこの瞬間に少し、いやかなりアコンのことがかわいいと思ってしまったのだ。

まあ考えてみれば同級生の、しかも女子と二人きりでいるのは初めてだ。

萌えるシチュエーションだしアコンもほかのヒロインには勝てないがそこそこ可愛い。

俺は我に帰り言う。

「いいかアコン。お前は今日髪を切ってショートヘアにする。

お前はそこそこ可愛いんだ。

だがインパクトが足りない。だから髪を切って

水羽にアコン、お前の顔を見させるんだ。」

アコンは若干顔を赤くしていった。

「そうかな・・・

お世辞でもうれしいよ・・・・・」

どうやら可愛いといったのがよっぽどうれしいらしい。

俺たちはファミレスを後にし美容院に行った。



「えっと、まず策を考える明日話そう。」

俺は作戦など考えているはずも無く

後日話し合うことを約束した。

幸と分かれた後、俺は頭に手を当てて反省する。

「はあ、またやっちった。

どうしていつも勢いで言っちゃうかなぁ。

どうすんだよ。幸が勝てるわけ無いだろ。」

なぜそう思うのか。詳しく説明しよう。

まず、水羽についてだ。

奴とは小学校からの腐れ縁でとても仲がいい。

やっさしくて正直言ってすごい。

だがそれ以上に彼の周りがすごい。

それはどういうことか。

説明しよう。まず水羽には俺ともう一人幼馴染がいる。

それが里中九十九だ。

彼女はお決まりの幼馴染属性のほかにあまつさえ

ツンデレ属性やドジっ娘属性まで持ち合わせる。

俺が思うに最強のキャラの一人だ。

あ、いい忘れれていたが勿論全員美女だ。

水羽を好きな者で今紹介する人物は。

九十九は、めがねっ娘だ。

それで次に自称魔女のボリソッチュワ・マーガレットだ。

マーガレットはいわゆる中二病属性を持っている。

ロリ顔である。

とまあ言い出すときりが無いわけだ。

だが幸はモブキャラだ。

そんな無理ゲー聞いたことも無い。

だが俺としては燃える。

それになんとなくこう胸が焼けるような・・・・


翌日。俺と幸は放課後ファミレスに行った。

「えっとまずだな。

キャラチェンジの一番手っ取り早いのは何だと思う?」

俺はいきなり(いや実際はファミレスに入り色々注文とかをしたので

いきなりじゃない)幸にたずねた。

「え、えっと・・・・」

幸は戸惑った。

「いいか、アコン、お前は今日イメチェンをする。」

俺は言う。それも結構自慢した顔で。

「ア・・・コン?」

イメチェンよりも先に幸は俺がアコンといったことに引っかかった。

「あ、ああ。幸、お前を今日からアコンと呼ぶ。

幸はどうも普通だからな。」

俺はズラズラと御託を並べる。

「う、うん。それはいいんだけど何でアコン?」

アコンが聞いてくるので答える。

「アコンプリスてのは英語で共犯者って意味。

それでそのはじめの3文字を取った。」

俺が答えるとアコンはドリンクバーのカフェオレを飲んだ。

「それで、イメチェンって?」

カップから口を外したアコンは俺に言った。

「なっ」

俺が不覚にも声を漏らしたのは

今のこの瞬間に少し、いやかなりアコンのことがかわいいと思ってしまったのだ。

まあ考えてみれば同級生の、しかも女子と二人きりでいるのは初めてだ。

萌えるシチュエーションだしアコンもほかのヒロインには勝てないがそこそこ可愛い。

俺は我に帰り言う。

「いいかアコン。お前は今日髪を切ってショートヘアにする。

お前はそこそこ可愛いんだ。

だがインパクトが足りない。だから髪を切って

水羽にアコン、お前の顔を見させるんだ。」

アコンは若干顔を赤くしていった。

「そうかな・・・

お世辞でもうれしいよ・・・・・」

どうやら可愛いといったのがよっぽどうれしいらしい。

俺たちはファミレスを後にし美容院に行った。



アコンの髪を切ったり染めたりした俺たち(俺と羽場)は

それに似合う制服の着方を話し合った。

俺的にはアコンがあまり親しくない人と長い間いるのは

気まずいと思ったので別のとこでやろうとしたのだが

羽場いわく

「どうせ客も来ないしファッション雑誌そろってるし

俺みたいなファッションに詳しい奴がいたほうがいいから

ここでやらせてやる!」

だそうだ。

お前ファッションに詳しくないだろっ!。

というつっこみは心の中に潜めておいた。

まずはアコンにいつも通りの制服の着方をしてもらう。

あ、勿論更衣室でな。

さらに言うと更衣室というのもこういう機会のために

5年前(店開店当初)から作っておいたものだ。

数分してアコンが更衣室から出てきた。

「え、えっとどう?」

アコンがどこか気まずそうに言う。

気まずそうではない。気まずいのだ。

男二人に、しかも両名とも昨日から今日にかけて知り合った二人に

じろじろと見られているのだ。

ただ思うに昨日は

結構な確率で語尾にですをつけていたが

今日はため口になっているので

人懐っこい性格なのは確かだ。

「うーん・・・」

俺は首をひねりながらうなる。

「なんか髪型と色に

制服が負けてる気がする。もうちっとインパクトをつけないとだな・・・・

ただ・・・・そのままならそのままでいいかもしれない。

その分俺が学校以外の日にもあえるように設定して

そのときにギャップをつければいいかもしれない・・・」

思いつき半分で行った。

閃いたら言わずにはいられない性質なのだ。

「あ、ああそれはいいな。

制服は逆にまじめにして

その分私生活は自由めの服を選べばいい。

ギャップ萌え攻撃か。いいな」

そういうことで俺たちはギャップで攻めることとした。




なんだかんだあってその日は解散することとなった。

俺は次の作戦を練るためとある協力者の元に向かった。

勿論羽場ではない。

だが勿論占い師とかカウンセラーとかでもない。

それは誰か。それは簡単なことである。

自分だ。

いやふざけちゃいない。

決して友達がいないぼっちでもない。

い、いや友達は少ないな・・・・・・

まあいい。そんなことより協力者のことだ。

俺。その答えはあっている。

そして間違っている。

俺はこいつじゃない。

そう思いたいからだ。

意味が分からないって?

ここまできたら勘のいい奴は分かるだろ?

そう、俺は二重人格なんだ。

今こうしているのが1つ目の人格「氷馬」だ。

俺はもう一人の俺「|炎鹿(えんか)」が

自分を認めたくない気持ちから生まれた第二の人格だ。

ちなみに氷馬というのは義理の両親がつけてくれたものだ。

炎の反対の氷と

馬鹿の鹿じゃない方で氷馬だそうだ。

さて、炎鹿の人格はというと元よりあったものなのだが

俺が生まれてから2,3回くらいしか出てこない。

奴の性格はというと「いい奴」だ。

そりゃもう水羽にさえ負けないくらいの。

俺と違っていい奴なんだ。

優しくてすっげえいい奴・・・・

でも俺は違う。

あいつが自分を否定したときに

自分の優しい故の弱さを知ったからこそ生まれた嫌な奴。

でも最近炎鹿は消えつつある。

いいやそうじゃない

俺に合体してきているのだ・・・・

だかららしくも無く昨日あんなことを言ったのだ。

だがそれとともに分かれはじめてもいる。

何か自分が壊れていくそんな気がする。

きっともう一人の「誰か」が俺を吸収しようとしている。

二重人格者は三重、四重とどんどん人格を増やしていく。

その時がきたのだ。

自分が自分でなくなりそうで怖い。

だから俺は・・・・・・・・

だからこそ俺という人格がいた証拠を残したい。

そのためにアコンを幸を助けようとしているんだ。

ホントずるいよな俺。

でもいいんだ。それが俺。

皆俺のことなんか忘れる。

炎鹿も俺もこの体がつかんでるだけの風船に過ギナイ・・・・・・



俺の視界は消えた。

そして生暖かいベールの中にいた。

視界が戻るとあたりはピンクだった・・・・・




俺は消えた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


俺の視界は消えた。

そして生暖かいベールの中にいた。

視界が戻るとあたりはピンクだった・・・・・





俺は消えた。

いや今までにもこういうことはあった。

それは炎鹿がこっちに出てくるときだ。

それはしょうがないと思ってた。

だって俺は影でしかない。

炎鹿の影でしか・・・・・・・

でも今回は違う。今までは

出てくる前に、炎鹿は言って来て

それから準備をした。

でも今回は違う

強引に乗り移った。

これが何を意味するのか・・・・・・・・・・・

それは新しい人格の誕生だ。



あたりは薄紅色で包まれている。

ほのかに暖かい。だが空気は冷え切り

いてついた刃が喉を斬るようだ。



そこには一人の少年が立っていた。

俺だ。性格には俺の姿をした少年。

俺であり俺でない。

「お前は氷馬だな。」

その少年は言った。

その口調は炎鹿ではなかった。

「お前は誰だ?」

俺は言う。恐怖にも似たものを感じる。

今までなら炎鹿に乗っ取られてもいい。

いや炎鹿が自信を取り戻して俺が消えればいいと思ってた。

でも今は違う・・・・・・・・・

「変な事を言うなぁ。

分かってるだろ俺はお前だ。炎鹿でなくお前でもないがな。」

少年は不敵な笑みを浮かべた。

拳をぎゅっと握る。

「そうだな|月鴉(つきガラス)とでも呼んでくれ」

少年はさらに言う。

「・・・・・・・・・。」

俺は声も出ずただそこにいた。

「そんなことを言いに来たんじゃない。

僕が言いたいのは君が消え炎鹿も消えようとしているということだ」

月鴉は真剣な顔をして言う。

「どういうことだ?」

俺はボソッとつぶやいた。

「お前も俺も炎鹿が自分を逃避し続けて生まれた。

でも俺はお前と少し違う。

炎鹿は逃避し続けた。お前が生まれても

いや違う。

お前が生まれたからこそ

奴はより自分を見失った。

その結果俺が生まれた。

だが神はそれを許さなかった。」

月鴉が言った。

「神?」

俺は神に過剰に反応した。

水羽のこともあり神を信じてないわけではない。

ただ俺と神にかかわりはないと思っていた。

「ああ、神だ。

お前も身に覚えがないか?

突然異世界へのゲートが開いたり。」

月鴉が言ったそれは水羽の

何らかの特殊能力によって起きたものだと思っていた。

なぜなら水羽はギャルゲーやファンタジー系

如何なるゲームでも主人公になるような男だからだ。

「お前はそれらを友人のせいにしているようだが違う。

お前のせいだ。そして誰のせいでもない。」

月鴉は言う。

どういうことだ?

俺は心の中で考える。そして答えが出る・・・はずもない。

「お前は、そして炎鹿は不運の子『イザナギ』だ。

神が気まぐれで創り人の力を観ようとして一人の子に力を与えた。

運命に逆らう力を。

しかしその力を持った炎鹿は、自らを否定した。

その結果運命が狂った。

神でさえ考えなかった。『イザナギ』が

自らを否定するなんて。

そして炎鹿は自殺をしようとした。

神は困った。そして考えた。

もうひとつ人格を作り守ろうと。

そして作られたのがお前だ。」

俺は固唾を呑んで聞いた。

拳を握り理解しがたいすべてを受け入れようとした。

「それでも炎鹿は自らを否定した。

そして俺が生まれた。

俺が生まれたことで神はさらに困った。

『イザナギ』が実質三人誕生したのだ

何が起こるのか誰も考えられない。

そこで神は俺たちを皆まとめて消そうとしている。

今年の終わり。12月の31日。

俺たちは消える。

そこでお前に頼みたい。

何とか神の意向を変えてほしい。

お前が人とかかわり

真に神に「人」を教えられたとき神は理解し

破壊をやめるだろう。

いいな。これは俺と炎鹿の頼みだ。」

そういうと月鴉は拳を突き出してきた。

「分かった。任せろ俺が守る」

俺は月鴉とグータッチをした。

「今は・・。今は何とか止められているが12月31日になれば

本当に神はつぶしにかかってくる。

頼むからな・・・・・・・・・・・」



そう言って月鴉は消え俺はもと居た場所で座っていた。



気がつくと俺は座っていた。

どうやら炎鹿が乗り移り

危なくないところまで誘導してくれたようだ。

俺は非常に疲れを感じた。

すべてのことが理解不能だった。

俺が原因?

いや水羽が原因であり彼は世界を救う勇者だ。

俺なんかその友達ポジションだ・・・・・・


ただしっくり来なくもない。

ゲームによっては主人公は救うだけ。

現況は別のキャラにある、という場合もある。

もしそれが適用されるなら俺は・・・・・


俺は無意識に家に帰った。

やはり家が落ち着くのだろう。

俺は自分の部屋のベッドにぐったりと倒れこんだ。


今年の終わり・・・・・・・

今は4月の24日。

もう4月も終わりだ。

となると後8ヶ月ほどしかない。

それまでに人とかかわり

そして神に人を教える。

そんなこと俺に出来るのだろうか。

俺は考えた。

でも勉強はまだしも人として馬鹿なので

答えが出るはずもない。俺は静かに眠った。



翌日。

俺は学校に行った。

そこにはアコンや水羽の、里中の姿がある。

今日は休日でもなんでもないんだ。

当然いるはずなのにとてもうれしかった

昨日消えたと思った。

自分はもういなくなったと思った。

でも水羽やアコンが俺という風船を持ってくれた。

そんな気がした。

ん?

何で。何でアコンが出てくるんだ。

親友でもなんでもない。

出るなら里中のほうが出るべきだ。

なのに・・・・

それは俺たちが共犯者だから・・・・・?

そこで俺は月鴉の言葉を思い出した。

「そして炎鹿は不運の子『イザナギ』だ。

神が気まぐれで創り人の力を観ようとして一人の子に力を与えた。

運命に逆らう力を。」

つまり俺は運命を変えられる・・・・

水羽が里中を選ぶ運命を帰ることが出来る。

0.1%の可能性が1%に跳ね上がった。

『イザナギ』・・・・・・

運命を変える・・・・・・・・・・・

そうだ約束したんだ

絶対成功させる。

冬までに。

消えるなんてことよりもそっちを考えよう。

アコンを水羽の彼女にする。

それが出来たら消えてもかまわない。

でも少し感じたんだ。

アコンが俺を繋ぎとめてくれるって。

馬鹿みたいだけどな・・・・・・・・・




翌日、第二回対水羽作戦会議(仮)が行われた。

俺とアコンの二人で・・・・・

先日、炎鹿に聞くつもりだったが

今は一生懸命神の攻撃を食い止めているので

無理だ。

そこでこの二人のみとなった。

羽場は恋愛の事について全くといっていいほど教えてくれない。

奴曰く「失恋してもいいから自分で考えろ」らしい。

上から目線だ。

だが奴がいなくてよかったとも思う。

どうやらアコンは奴が苦手らしいからな・・・・・


「さてとじゃあ始めるか」

会議は俺んちで行われた訳なのだけれど

別にやましい考えとかはない。

ただ学校が終わりいく当てが無く

さらに会議があるたびにカフェに行くというのは高校生にはかなり

経済面できついということで俺んちで行った。

さて俺の第一声をアコンは聞いているのか分からない位

キョロキョロとしていた。

緊張している様子は無きにしも非ず、されどほぼ無い。

単に男子の家や部屋が珍しいだけなのだろう。

「服部君、ひとつ聞いていい?」

アコンが不思議そうに言う。

俺と羽場の考えた最強の髪型と

そこそこのスペックの顔が合わさったアコンに

さらにそこそこ可愛い声でそんなことを言われては

少々、というか普通に好きになりそうだ。

だがまあ言い過ぎではあるが

それでもそれ位可愛いのは確かだ。

「お、おう。何だ?」

俺は言う。

「えっとその・・・・

服部君ってその・・・・もう一人いる?」

アコンは尋ねてきた。

本来なら何を言ってんだ?とでも言うのだろうが

俺にはその意味が分かる。

「それって二重人格じゃないかってこと?」

俺は聞き返す。

「う、うん・・」

申し訳なさそうにアコンは言った。

そりゃ言いづらいだろうな。

「どうしてそう思う?」

俺はさらに聞き返す。

「それはその・・・・

机に日記が置いてあったのと

その日記が少ししか書かれてなくてその内容が

二人の人が話している感じだったから・・・

ごめんなさい。覗くつもりじゃなかったんだけど・・・」

俺はふと思う。なぜここまでアコンは勘がいいんだろう、と。

「よくわかったな。性格には3重人格だけどな。

水羽と羽場にしか教えてないのに」

いや正確には親と医者にも教えてある。

「そっか・・・」

どこかをじっと見るようにしてアコンが言う。

「俺、途中から出来た人格なんだ。

始めは炎鹿て言う優しい普通の奴でさ。

でも俺が生まれた。

でその後に月鴉って言う奴が昨日出来た。

あ、いや昨日かは知らないけどあったのは昨日だな。」

俺はなんだかアコンになら言っていいと思って

水羽にも誰にも言ってない月鴉の存在を口に出した。

「でも氷馬君は氷馬君だよ。」

アコンはそっと俺に言った。

何でかは分からないけど俺はアコンが居なきゃ生きていけないって思った。

でもそんなはず無い。

今までだって生きてきた。

しかも何でアコンなんだ・・・・・・



「さてと、会議を始めるか。」

俺は色んな感情をしまいこんで言う。

そうだ、俺のやることはただひとつ。

アコンと水羽をくっつける事。

そうすれば里中はもしかしたら俺のほうを向くかもしれない。

あ、言い忘れていたが俺は里中が好きだ。

つまりは幼馴染同士での

三角関係というよくある関係にある俺たちなのだ。

さて話を戻そう。

里中がこっちを見いてたとえば俺と付き合ってくれたら

神に人を教えることができると思う。

だからこそ達成しなければ・・・・・・


「えっとだなイメチェン作戦はだいぶ成功したと思うんだが

水羽と話したか?」

俺はアコンに尋ねる。

「え、あ、水羽君。

う、うん。似合うって言ってくれたよ。」

アコンは言ったがどこか上の空な気がした。

さっきまであんなに元気だったのに俺が辛気臭い話ししたからかな?

だがなぜ上の空気味なのか聞く勇気なんか

俺には無かった。

弱虫の俺には・・・・・・・・

「そっか。

じゃあもっと水羽に見てもらわなきゃだな。

そうしたら一般市民やNPCからは一歩進める。

じゃあ何か作戦を考えよう。

水羽と一緒にいるにはどうすればいいか。」

俺は何となく上の空気味のアコンに言った。

アコンは数秒してハッとこっちを向き

あわてて考え始めた。

ホントどうしたんだ?

「え、えっと服部君と一緒にいればいいんじゃないかな?

だって二人って仲いいんでしょ。

なら私もそれについていれば少しは・・・・」

アコンは若干の名案を出す。

だがインパクトが足りない。

「それはそれで採用するが

それだけじゃインパクトが足りないな。

なんかこうザ・青春みたいなので攻めないと。」

俺たちは再び考えるが

やはりアコンの様子がおかしい。

さすがに心配すべきかもしれない・・・・・・・

「大丈夫かアコン。

さっきから心ここにあらずって感じだぞ。

疲れたなら少し休むか?」

俺は一応声をかける。

反応は・・・・・・・・

「え、あ、えっとだ、大丈夫。

心配させてごめんね。」

アコンは必死に言っている。

が、その姿はどこか痛々しい。

何だろう。

見ているだけで胸がぎゅっと閉められるような感じがする。

「やっぱり休もう。俺も疲れたし

アコンもこのままじゃ駄目だ。

ここ数日いろんなことがあったから疲れてんだよきっと。」

俺はそう言うと立ち上がった。

するとアコンは首を横に振る。

でもどんどん目は眠たそうになる。

そして少しして・・・・・・

アコンは完全に眠たそうになり

うとうととし始めた。

「しょうがない奴だな。

アコン寝ろ。お前の親御さんに入っとくし夕飯も用意しとくから。」

俺が言う。やばい。

初めてだこんなこと言ったの。

幼馴染の里中だって家で寝たことなんてないのに。

「悪いよそんなにして貰っちゃ・・・・」

そういいながらもどんどん眠たそうにする。

「駄目だ寝ろ。

このまま帰したり

会議を続けるより何倍もマシだ。」

俺は言う。よく考えるとどこで寝させるんだ?

空きのベッドは無いぞ。

まあいい。

時計を見る。

今の時間が5時1分。

今からならある程度寝させてからでも

俺が送れば大丈夫なほどの時間になるだろう。

「ほら俺のベッド使っていいから。」

さすがに抵抗する様子も無く

アコンはベッドに入った。

そして間も無く眠った。

や、やばい。

寝顔が普通に可愛い。

そんなことを思ったが何より

起きた時に怒鳴られる心配があった。

まあアコンはツンデレ属性じゃないし

大丈夫だろうけど・・・・



アコンが眠ってから2時間ほどたった。

両親が帰ってきてアコンのことを伝えると

快く食事を準備してくれた。

なんか勘違いしてそうだが・・・・・

そしてそれから1時間がたった。

いつも以上に腕を揮ったらしく

結構時間がかかった。

合計3時間経ってもおきないアコンを

俺は起こしに行った。


「ほら起きろ」

いまだぐっすりと寝ているアコンを起こすのは若干心苦しいが

さすがに寝すぎだ。

「アコン、早く起きろ」

もう一度声をかけるも起きない。

「困ったなぁ」

俺はほほをかきながらつぶやく。

俺の部屋は二階にある。

そのため無理やり連れて行くのは結構難しい。

となると・・・・・・

俺は次の手に出た。

それは『デコピン』だ。

俺は気持ちよさそうに寝ている

アコンの額めがけて

強烈なデコピンをした。

「ん、んん」

ついにアコンは目覚めた様子だ。

まだ目をこすってはいるが・・・・

「よく眠れたか?」

俺は一応聞くがそれを聞いても返答が難しいことに気がついた。

「眠れ・・・?

はっ。私寝ちゃったごめん服部君。」

アコンは急に完全に目を覚まし俺に言う。

「い、いや別にいい。

それより母さんが夕飯作ったから降りて来い」

俺はアコンに言う。

「え、悪いよ。ってもうこんな時間。

帰らなきゃ」

アコンがあわてて言う。

だがここで一人で帰らせるわけにも行かない・・・

「なんか用事があるのか?」

あせっている様子なので一応聞く。

「え、別にそうじゃないけど。

でもこんな時間にいたら迷惑でしょ」

アコンが言う。

俺は思う。多分今からだと用事でもない限り

母さん帰らせてくれないだろうな。

「別にそんなことない。

それに母さんが久しぶりに張り切ってるから

いなくなられるとつらい。

親御さんには電話しといたし大丈夫だ。」

俺は言う。すべて本心だ。

つらい。そういったのは母さんの気持ちを読み取ったとかじゃない。

いつもの2倍の量作っている夕飯を

3人で食べるのはつらい。

いや4人で食べるのもつらい。

なぜか言おう。料理が下手なのだ。

もう尋常じゃないほどに・・・

「そ、そう?

じゃあお邪魔しちゃおっかな?」

アコンは申し訳なさそうにだが

若干いたずらっ子のように笑った。

「ああ。ぜひそうしてくれ。」

俺は本能的に言う。





アコンと俺は食卓に向かった。

いや向かったというほどの距離でもない。

まあ言葉の使い方だ。

さて、母さんはいつも以上に張り切っている。

いつも量が多いのに1人増えただけで2倍ほどの

量になっている。

「う、うう・・・」

アコンは料理を見てすぐ言葉を失う。

まあそれは当然の反応だ。

例えるなら水羽がモテるのと

同じぐらいに・・・・・・・・

はぁ・・・・・・。

自分で考えて自分だけで落ち込んだ。

分かっていても水羽がモテるのはつらい。

まあいい。

今は目の前にあるラスボス級の夕飯をどうにかしなくては・・・・・

どこがラスボス級かって?

そうか。じゃあ教えよう。

まずから揚げがある。

だがそのから揚げは何故か緑色だ。

母さんが作るから揚げはいつもそうだ。

野菜を入れたりなんかしていないのに

何故か緑色・・・・・。

ある意味才能だろ。

さて次だ。次にハンバーグがある。

しかもすごいたくさん。

それだけじゃない。

そのハンバーグ異常な臭いがするのだ。

もう食えたもんじゃない。

それだけじゃない。

サラダも何故か赤に変色している。

ただただ恐怖を感じる。

ここまで料理が下手なのにこの夫婦が

離婚しないのは確実に父さんが優しすぎるのと

母さん、父さんともに相思相愛だからだろう・・・・

「さ、座って」

母さんが言う。

「は、はひ」

アコンが言う?

いや『言った』ではなく音を発しただろう。

言いたかったのは「はい」なのだろうが

恐怖からかもしくは驚きから発音が狂い始めている。

それでも我慢して俺とアコンとそれに父さん(父さんはまずいと思わないのかもだが?)

は夕飯を食べ始めた。

しばらくして(しばらくといっても俺とアコンは

何一つ口に入れてないが)

母さんが怪しげに咳払いをする。

「それで、二人の関係は?

恋人?それとも付き合う一歩手前?

あ、結婚の許可を取りに来たの?」

母さんは笑いながら言う。

はあ、何を言ってるんだこいつは・・・・。

「えっと、そのあの、あ、ああっと

氷馬君とふぁ、お、同じクラスで仲良くして

貰っていてその・・・・・・・・」

アコンが必死に答える。

はあ。お前もお前だ。

そんなにしどろもどろで説明したら

より怪しまれる。

「馬鹿、何焦ってんだ。」

俺はアコンに注意する。

「別に俺とこいつ恋人とかじゃないから。

ほら勇人の事を好きな子だよ。

それで応援してる。」



俺たちはやっとの思いで夕飯を食べた。

そして片づけをした後、アコンが

母さんと一緒に外に出て行った。

家には父さんと俺だけになった。

そして頭に先ほどの母さんの表情が浮かぶ。

アコンを呼ぶとき母さんは、確実に

微笑んでいた。

母さんが微笑みのは危ない時だ。

物理的、精神的に・・・・・・・

俺はアコンが心配になる。

これで何かアコンにあったら家に連れてきた俺の

責任だ。

もはやその何かは確実にあるといえる。

「あぁ。」

俺は無意識に情けない声を漏らす。

無論後悔だ。

なんて事をやらかしてしまったんだ。


そして俺は思う。

先回りして何をやられるのか考えて対処するんだ。

考えろ俺。考えろ俺。

今までやられてた俺とは違うんだ。

状況を整理しよう。

まず母さんは、微笑んでいた。

悪い事の兆しだ。

そしてアコン一人を呼んだ。

俺や父さんの前で何かするのではなく。

つまりアコンへの行動に違いない。

考える・・・・・・・・・。

駄目だ他の情報を集めないと情報が少なすぎる。

母さんがやりそうな事・・・・・・・。

はっ。そうだ、母さんは俺とアコンを恋人同士だと錯覚した。

母さんは・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

俺とアコンをくっつけようとしている?

確かに母さんは結婚アドバイザーを自称しており

たまに仕事で出かけた所で

相性診断やら結婚するためのテクニックを教えたりして

今までに数十回結婚を成功させている。

あ、ちなみに母さんの仕事は結婚アドバイザーじゃなくて

企業の経営にアドバイスをするものらしい。

つまり母さんはその趣味や遊び紛いのもので得た

技術と知識を使って俺とアコンをくっつけようとしているんだ。

・・・・・・・。ん?

でもじゃあなぜ水羽とアコンをくっつける作戦に協力したんだ?

矛盾が生まれている。

なぜ?なぜ?なぜ?

俺は頭をかきながら考える。

早くしないと対処が取れない。


そんな時母さんが元彼を引きずっていて結婚できなかったという女性を

結婚させる事に成功したと気に入っていた言葉を思い出した。

「敵わぬ恋を忘れて0にして

初々しい気持ちで前に進まないと

恋愛って言う山は越えられない」

敵わぬ恋を忘れて0に・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

もしかして・・・・・。



俺はアコンを家まで送り

その日を終えた。


そして翌日。その日は昨日と同じように学校があったが

俺が放課後に部活を入れていた為

会議は明日以降へとなった。

俺が入っている部活、それはゲーム部兼謎解き部だ。

ゲームをやったりたまにくる依頼(謎解き関連)を受けたりしている。

部員は俺と水羽とマーガレットだ。

最低でも部員が3人必要なのだが

顧問の亞里素先生(通称というか名札にもアリスと書かれていて

漢字で書く奴など誰一人としていないため

以後カタカナで書く)

が謎解き部を兼任して校内の厄介ごとを解くならいい、との事で許しが出た。

それで今日は久しぶりの依頼人が来たらしい。

俺は今は授業では使われず

それどころか人が寄り付かない

通称赤部屋へ向かった。

何の部屋だったかなんて知らないし知りたくもない。

依頼人が来ないのは絶対ここのせいだと思う。

とはいえ俺は謎解きが好きだったりする。

さて俺が赤部屋の扉を開くとマーガレットと水羽とアリス先生(あ、言い忘れたが

女性の先生だ。まあ男勝りな部分が無くもないが)

がぼろぼろのソファーに座っていた。

「依頼人は?」

俺が尋ねる。

すると水羽から返答がきた。

「もうすぐ来るよ。」

俺は一言「そうか」と言い

活動日誌を開く。

この中に依頼内容をメモするんだ。

少しして赤部屋の扉を叩く音が聞こえた。

「すみません」

その声は明らかに女性の声だった。

扉が開くとその女性は若干ためらいながらも

ソファーに座る。

なんてったって部費がぜんぜん足りないからな

ソファーやら色々ぼろぼろだ.

「えっと、クラスと氏名それと依頼内容を伺ってもいいですか?」

俺が言う。一応部長だからな。

「あ、はい。1年B組|菜名瀬 晴菜(ななせはるな)と申します。

今回伺ったのはとある暗号を解いてもらいたくて」

すると彼女は一枚の紙を差し出した。

その紙は真っ黒だった。

そして紙の真ん中に黄色い球体(おそらく月?)

が描かれそのとなりに

こう書いてあった。

『月がきれいですね』


「なるほどこれは手紙か何かですか?」

俺が尋ねる。

「えっと、下駄箱に入っていてでも意味が分からなくて。

真っ黒だしちょっと怖くなっちゃって・・・」

菜名瀬さんが言う。

「なるほどなぁ・・・・・。

先生、全校生徒の名前が書かれているものを持っていませんか?」

俺が聞く。するとアリス先生は名簿を渡してきた。

俺はそれを見て一人の生徒の名前を探す。

「やっぱり。」

俺がその生徒を見つけ言う。

「え、もう分かったんですか。」

菜名瀬さんが言う。

「はい。ただこれはこんな人数の人の前で言う事じゃない。

菜名瀬さん。これから時間いいですか?」

俺は言った。

勿論時間いいですかと聞いたからってお茶に行こうとかじゃない。

そんなはずない。

「はい、大丈夫です」

菜名瀬さんが答えた。

そこで俺は1年B組の教室に向かった。

マーガレットと水羽とアリス先生と菜名瀬さんを連れて・・・・

何の用か。それは至極簡単。だが今それを俺がやっている事が悔しい。

それは何か教えよう。告白の手伝いだ。

教室にいた数人の生徒の中から

一人の生徒を見つけ出し話しかけた。

「やあ、君が|奈津芽 想石(なつめそうせき)君だね。」

俺が言う。さてここまできたら分かる人もいるだろう。

「菜名瀬さん。この人が手紙の送り主です。」

俺は奈津芽の背中を軽く叩いた。

「へ?」

菜名瀬さんは意味が分からないようだった。

「じゃあ解説します。

まずこの手紙に描かれているのは見て分かるとおり月だ。

そしてその隣にある文こそ本文。

じゃあ、この『月がきれいですね』はどういう意味でしょうか?」

俺が聞く。うんうん楽しい。

結構考えたんだろうけどその分こうやって謎解きして答えを言うのは気持ちい。

「えっと分かんない」

菜名瀬さんが言った。続いて水羽やマーガレットも頷く。

「答えはI LOVE YOU.つまりあなたが好きです。という意味です。」

ここまで来て水羽やマーガレットも分かったようだ。

大体は・・・

「つまりこれはラブレターって事?」

水羽が尋ねる。

俺は無言で頷く。

「だ、だとしたら何で真っ黒なの?

それにこれじゃ差出人も分からないし・・・・」

菜名瀬が言う。俺は今思っていた考えが正しい事を確信した。

「まず真っ黒な理由から話しましょう。

普通ラブレターにしろ手紙は白い紙を使う事が多い。

でも奈津芽君は、心理学に詳しく

白が味気無かったり軽く感じる事を知っていた。

味気なかったり軽く感じては中身が伝わらないと思ったんでしょう。

でもラブレターに多いピンクを使えばラブレターだって一目で分かる。

それは避けたかった。そこで黒です。

黒は重く感じたり丈夫な印象を与えたりします。

この手紙の内容を重く受け取ってほしかった彼は黒にしたんです。

それに彼は赤部屋のことも知っていた。

もし菜名瀬さんが怖くなって赤部屋に行けば絶対に

謎が解けると思ったんでしょう。

次に誰から送ってきたのかを分かるようにどうやってしたか。

簡単です。この『月がきれいですね』は

夏目漱石がI LOVE YOUを和訳した言葉です。

そして彼の苗字は字が違えども奈津芽。

この学校にその読みをする名前の生徒はいない。

もし菜名瀬さんが和訳について知っていたらすぐピンときたし

赤部屋に行ったら行ったで解けるはずだと分だってとこでしょう」

俺は長々と解説した。

「後は二人で話してください」

そう言って俺たちは出て行く。

「ちょっと氷馬。帰っちゃっていいの?」

水羽が言う。何を心配しているかなんて簡単だ。

要は二人のてん末についてだ。

「大丈夫。

あの二人同じ部活だし二人ともお互いが好きだから。

きっと今回の事で付き合い始めるんじゃないかな。」

そうしてその日は解散になった。


そして帰り道。

俺は考えた。

アコンの恋を応援する方法を。

そしてふと思う。

さっきの二人は多分同じ中学や小学校じゃない。

クラスは同じだがそれだけじゃない。

同じ部活だ。

つまり部活はかなり絆を深める事が出来る。

もしこれが出来れば

アコンは|群集(モブ)の中の一人じゃなくなる。

よしこれだっ。俺はそう考える

俺は翌日アコンと会議をした。

「さてじゃあ第3回対水羽作戦会議(仮)をはじめる」

俺が言う。

「ねえその会議名どうにかならないの?」

アコンが突っ込む。

「そうだなそれは思うがそんな事よりも

作戦を考えなきゃだからな。」

俺は言う。

更に俺が咳払いをする。

「改めて作戦会議を始める。

さて、アコンいい案はないか?」

俺がアコンに尋ねる。

時分でも何を急にと思うが

こういうときでもアコンは真剣に考える。

「えっと・・・・・・・。

駄目思いつかない。」

とはいえ答えを出すのは無理なようだ。

「そうか、じゃあこないだイメチェンしてから少し経ったけど

水羽との距離は縮まったか?」

俺が聞く。ここはアコンの感覚によるんもんだいだが

俺としては立ち絵すらないモブキャラNPCから

立ち絵が辛うじてあるモブキャラNPCに格上げされたと思っている。

「う、うん。少しは。」

アコンが言う。まあそんなとこだろう。

「そう思って俺は新しい策を考えた。」

俺はそこまで言った所で自分の勉強机からメモ帳を出した。

あ、ちなみに今日も俺の家で絶賛会議中である。

「いいかアコン、お前は今立ち絵がないモブキャラから

立ち絵のあるモブキャラにランクアップした。

そして次に狙うのはサブヒロインやメインヒロインじゃないが

攻略対象になるモブキャラを目指す。

いや出来ればサブヒロインまで一気に行きたい。

そこで、アコンが水羽と同じ部に入ればいいと思う。

そうすれば一緒にいられる時間が増えるから

攻略対象には確実にあがれる。」

俺は言う。ただこれには圧倒的な問題点がある。

「ねえ水羽君って何部に入ってるの?

それとも入ってない?」

アコンが尋ねてきた。

「ゲーム部兼謎解き部だ。

俺とマーガレットと水羽がいる。」

俺が頬を掻きながら言う。

「え、3人だけ?」

アコンが言う。

ああ、痛いところを・・・・・・

「ああ、そうだ。

アリス先生に校内の問題を解決する為に謎解きをする事と

赤部屋で我慢する事を条件に出され作った部だ。

特例として3人でやっている。

そこでその部を解散して新しい部を作る。」

俺は堂々と言う。

いや、実際思いつきだ。

「解・・・・散?

良いの?勝手に」

アコンが言う。

「大丈夫だ元々この部自体俺がつくろうって言い始めて

水羽が協力してくれてそれにマーガレットがついてきて

里中がギリこれなかっただけだ。

あいつらは人数稼ぎってだけ。」

俺が言う。

あ、これは思いつきの嘘じゃないぞ。

「それで、何部を作るの?」

アコンが尋ねてくる。

また痛いところを・・・・・・・

「考えてない。思いつかないか?

出来ればマッタリ系。」

俺がアコンに尋ねる。

「服部君って結構勢いで生きてるね」

アコンが言う。

痛いところばっかつくな!!

そう思う、俺。

「まあな。で何かないか。」

俺が再び聞く。

「うーん・・・・・・・

こ、告白部とか。」

アコンが言った。

冗談である事は分かりきっていた。

だが俺は言う。

「よしそれで決定。

で、何するんだ?」

俺はホント勢いだけの奴だな。

「え、何っていや冗談だから・・・・」

アコンがあわてて言う。

「それでも何か考えてたんだろ」

俺が言う。

「えっと・・・・・

告白を応援する部・・・・?」

アコンが言う。

俺はにやりと笑いながら言う。

「良いなそれ。

アリス先生を顧問にすれば良いしな。

それならアリス先生もやってくれるだろう。

また赤部屋だろうけど・・・・・・

それに頭の回りだけは早いアリス先生だ

告白部って付いてりゃ

何の為に作ったのか分かるだろ。

ああ見えて生徒の恋とか応援する人だからな。」

そして次の問題に取り掛かる。

「じゃあ部長はアコンお前がやるんだ。

そして俺と水羽と後は・・・・・

いっそのことお前のライバルでは入れそうな奴は入ってもらうか。

里中とマーガレットかな。

後は委員長の炎(|炎 菜月(ほむらなつき))がいるけどあいつは忙しそうだからな。」

なぜ忙しいのか。それは委員長の仕事である事に変わりないんだが

詳しく言うと5月下旬に新しい委員長の選挙があり

引継ぎやら選挙活動やらがあるからだ。


という事でその日は名前を挙げて解散となった。



アコンを見送ってから俺はすぐに水羽に電話した。

「どうしたの氷馬?」

数回の呼び出し音の後水羽の声が聞こえた。

「勇人俺は今の部をやめて

新しい部を作ろうと思う。」

俺が言う。こういう時絶対に頭ごなしに水羽は否定しない。

「良いけど、何部を作るの?

今の部じゃ駄目なの?」

水羽はいった。

「ああ、今の部だと少ない青春を有効活用できないと思うんだ。

それで告白部を作ろうと思う。

というかそう考えている奴がいる。

俺ともう一人な。

それで今回はそいつに部長を任せようと思う。

入ってくれるか?」

俺はたずねる。

だが答えは決まっている。

「うんいいよ。

たまに顔出せないときもあるけど。

マーガレットにも言っとく?」

やっぱりだ。水羽はいい奴なんだ。

例えば俺がすべての元凶でも

この世界の主人公はやっぱり水羽だ。

「おう。頼む。

いつもありがとうな。」

俺が礼を言った。

「いいよ。だって氷馬の頼みだもん。」

水羽はそういった。

その後俺は電話を切った。


翌日。俺はその日の昼休みにすぐに

アリス先生に廃部届けを出した。

依頼人が来ないためだ。

更に新しい部を作るから顧問になってもらえっるようにも頼んだ。

その後まだ時間があったので部員を集める事にした。

まずは里中だ。

マーガレットはきっと水羽の話を聞いて

入部を決めているだろう。

「なあ、九十九。」

俺は里中を呼ぶ。

俺は何故かいつも里中の事を心の中で考えるとき(あ、別に妄想とかじゃないぞ)

九十九とはいえない。

だが日常生活で里中と呼ぶと怒られるんだ。

「何?」

里中が昼食を食べるのを1度やめてこっちを向く。

「九十九、部活入らないか?

前作ったのじゃなくて告白部って言う部活。

俺と水羽と多分マーガレットとアコ、じゃ無くて森川が今入る予定なんだけど。

別に来れない日とかがあっても良いから」

俺の必死の説得によって里中は入る事を決めた。

何で必死になるかって?

そんなの簡単、部費の為。部員が増えるほど部費も増えるからな。

いやそれだけじゃない。

キャラの濃いメンバーに囲まれる事でアコンのキャラを濃くする&

水羽にアコンがその中の一人である事を認識させるのが狙いだ。

「じゃあ今日の放課後赤部屋で。」

俺が言った言葉に里中は一瞬びくっとした様だが元気に返事をした。

俺は人数がそろった事に満足し教室に戻った。


そして放課後。

俺たちは赤部屋に集まった。

マーガレット、水羽、里中、アリス先生。

それともう一人予想外の人がいた。

炎菜月だ。なぜここにいるのか。

俺は一瞬考えたが、すぐに理解した。

「服部。酷いではないか。

部を作るなら誘ってくれれば良いじゃないか。」

何となく不服そうに炎は言う。

先に説明せねばなるまい事がある。

炎は俺や水羽と同じ中学だった。

そしてそこでも生徒会会長をやっていた。

だが炎は異常なほどに規則に縛られていた。

日に日に校則を厳しくし

いつの間にか生き地獄へと変わった。

これも生徒会の力が強いのがいけないのだが

この辺の学校は全部

「権力を持っても乱用しないような教育」の一環として

とても権力を持たせている。

話がずれたので戻す。

そうして厳しくなった炎に何か取り付いている事に気がついた

水羽は俺とともにその何か(結果的には

悪魔だったのだが)を払ったのだった。

それからというもの炎は水羽のことが好きなのだ。

「いや、忙しいと思ってさ」

俺が言う。

「水臭い事を言うな。

友達たるもの己が忙しくても

友が何かをしようとするなら手伝うのが世の摂理。

私も協力させてもらう。」

炎が言う。

たくよくそんな臭い台詞言えるな。

やっぱ炎はすげぇよ。

「部長、どう思う?」

俺はアコンに言う。

「え、わ、私?

え、えっと・・・・」

アコンがあわてて言う。

「森川、どうだ私をこの部に入れてくれないか?」

炎が言う。

「えっと、うちの部は来るものは拒まない主義なので

勿論歓迎します。」

アコンが言った。

アコンは部長をやる事を不安に思っていたが

意外としっかりとしている。


こうして俺たち告白部は作られたのであった。



俺たち告白部が作られてから少しが過ぎた。

今日は5月2日だ。

俺たち告白部はあれから活動し始めようとしている。

が、何一つ依頼がこない。

だが忙しくなければないほど

アコンが落ち着いて水羽といられる。

と思っていたのだが最近水羽は来ていない。

あ、勿論部にって事な。

ああ見えてまじめだから学校は休まない。

そして今日もいつもの面子が居る。

まず俺。そしてアコン。

それと水羽が居ないのは説明したとおりだ。

がそれを発端にマーガレットと里中も居ない。

いつもマーガレットは来ているので

今日は用があるんだろう。

そもそもマーガレットは水羽にゾッコンとかじゃない。

うん。説明しておいたほうが良いだろう。

一応はじめに言う。

これはモテない俺の思い込みじゃない。

分かってくれたなら説明する。


マーガレットは1年の秋、うちの高校に転校して来た。

そして俺に話しかけてきた。

「あなたは運命の子ですか」と。

意味わかんないだろ?

その問いに俺は「違う」と答えた。

それから数日してマーガレットは居なくなった。

どこに言ったのかというと魔界だ。

俺たちは色々会って魔界やら異界を行き来していた。

そのため『あっち側』に言ってる事が分かった。

マーガレットは魔界で業火の魔王ディアセントの妃になろうとしていた。

その妃になろうとする行為というのはすなわち人ならざるものになろうとする事だった。

それを俺たちは止めた。

そして結果的にディアセントを倒した。

即ち殺した。

こういうことは初めてじゃなかった。

マーガレットは本当にディアセントを好いていた。

というか、誰かを好いている自分を好いていた。

今までマーガレットはひどい環境にいたらしくそのせいで人を好く事が出来なくなったという。

そんな時ディアセントが優しく手を差し伸べたんだという。

全くどんな世界の魔王でもやりそうな行為だ。

まあ色々あった。んでもってディアセントを好けなくなったマーガレットは

水羽を好く事にしたというわけだ。

こう考えても水羽はゲームの主人公としか思えないだろ?


とこんなところだ。

さて続きをはじめる。

えっとどこからだったっけか。

ああそうだ。マーガレットが今日に限っていない云々だったな。

んで次に炎だがより一層忙しさが増し最近はあまり来ていない。

が、水羽や里中と比べると来ている。

4日に1回ぐらいは。

それといつもは来ていないアリス先生が今日珍しく来ている。

今日は視察らしい。

まあいつも通り伸びたりして怠けている。

まあそんなわけで今居るのはアコンと俺とアリス先生だ。

今よく考えるとマーガレットはアリス先生の事が嫌いだったし

そのせいでこないのかもな。

何の連絡も無く授業が終わって慌しく出て行ったのもそれが原因かもな。


さてそんなわけなのだが

活動開始!!!!!

と張り切ってからというものいまだに何もやる事がない。

個々で本を読んだり話したりしている。

今日はマーガレットも居ないのでいつも以上に沈黙の時間が多い。

そんな気まずい沈黙の途中。

ピピッ。とスマホの呼び出し音が鳴る。

「誰だ?」

俺は制服のポケットからスマホを取り出す。

あ、勿論授業中は電源オフにしているぞ。

あ、聞いてないって?そうか。うん。

まあいい。それにしてもこのタイミングで電話は気まずい。

俺は誰からの電話か見るより先に赤部屋を出る。

「気まずい。」

俺は出てからすぐに声を漏らす。

さて、このタイミングでかけてくるKYな輩は誰だ?

と俺はイラつき混じりで電話に出る。

どうやらマーガレットからだ。

「もしもし?」

可愛げな声が聞こえる。

マーガレットだ。

「もしもしじゃねぇ。

なんつうタイミングで電話してきてんだ!!」

俺は軽く注意をする。

結構な声で。

「な、何かを言うか。

折角勇気を出して言おうとしたのに・・・・。

お前など知らぬ。

いや末代まで祟る。

わが最高峰の呪い、『ディアセロウケルンバカルセントクラスル』で

お前の一族をみなに焼身自殺の衝動を与えてやる。」

マーガレットが言う。

はあ、またわけの分からない事を言い出した。

まあ、魔王とか呪いとかそういうのが存在するのは事実だが

そもそも呪い系魔法をか弱い?(いやか弱くない?)

女の子一人でしかも魔法世界(魔法の元マナの豊富な世界)

じゃないこの世界で使うなんて不可能だ。

俺や水羽だってこっちじゃ全属性の魔法の一番下級のものしか使えないんだから。

「はいはい、分かったよ。

それで用件は?」

俺が聞き流し尋ねる。

「な、はいはい分かったとは何だ!

われが折角伝達魔法以外で話しかけてやったというのにその言い草は何だ。

祟るだけじゃ許せぬ。

我が最高峰の魔術、『チェストブラスター』を今すぐにでも使って

二度と立ち上がれなくしてやる。」

再びマーガレットが言う。

さてそろそろ分かっていると思うが

マーガレットは馬鹿だ。勉強は学年で俺と1,2位を争うほどなのだが

なんというかそれを全く無にし、更に馬鹿と思わせるほど

馬鹿だ。いや、馬鹿というより

考えが浅い人間だというべきだろう。

「そうかじゃあまたな」

俺が言う。もうめんどくさい。

「へ、ま、待ってくれ。

話しがあるといっておろうぞ」

マーガレットが引き止める。

「なんだ、早く言え」

俺が言う。

俺としてもアコンとアリス先生のみを赤部屋に残すのは怖い。

「な、うう。分かったかよく聞け。

今日の夜7時。

駅前の時計台広場で待つ。

来い」

そうマーガレットが言った。

そして電話が切れた。



俺はこのまま赤部屋に入るのが嫌だった。

なんせ気まずい。

だがアコンをこのまま放置するのは確実に危険だ。

そこで仕方が無く俺は赤部屋に戻った。


そしてその日の夜。

ちょうど6時半を回ったころ

俺は家を出た。

家から駅前まで25分かかる。

更に何かあったときの事も考えて

この時間に出た。

ただ、俺は嫌な予感がしかしなかった。

何故か教えてやろうか?

俺の予言魔術初級『バルン』がそういっているからだ。

ちなみにこの魔術はその1日後までに自分に不幸があるか調べる魔術だ。

さてこうして俺は自転車を走らせ駅前に来た。

そしてやや躊躇いながら

時計台広場に向かう。

そこにはマーガレットが居た。

「お、おうマーガレット

どうしたんだ?」

俺が尋ねる。

こいつは先手必勝なタイプだからな。

出鼻くじけば楽勝だ。

「な、氷馬。

お前1分早いではないか」

マーガレットが言ってくる。

「はあ、あのな1分ぐらい良いだろ。」

俺が言う。

こいつ相手に熱くなっちゃいけないのは分かってる。

「う、五月蝿い。駄目なものは駄目なのだ。

こっちにだって心の準備が・・・・・・・・」

マーガレットが言う。

途中から声が小さくなったので聞き取れない。

「ココロの準備?

まさかお前また新しい魔術を・・・・」

俺が良い、そして一歩下がる。

「な、何をふざけて・・・・・・・・

こっちは・・・・・のに」

マーガレットが言う。

たださっきより更に聞きにくい。

「そうかじゃあすまんな。

じゃあまた明日な」

俺が言う。

マーガレットはこう言われるのに弱い。

「な、ま、待って。」

マーガレットが言う。

随分あわてているようだ。

「じゃあ用件を言え」

俺が言う。

いや別に用事があるとか

マーガレットが嫌いとかじゃないんだ。

ただいやな予感がするだけ。

「そ、その前に少し話さないか?」

マーガレットが言う。

俺は考える。マーガレットは今日異常に緊張している。

だとしたら用件はなんだろうか?

「そ、その・・・・。

氷馬は、か、彼女とか居るのか?」

マーガレットが言う。

マーガレットらしくなかった。

何でってマーガレットは人の恋を詮索するような奴じゃないからだ。

「い、いねぇよ。

悪いか?付き合った事ないのは?」

俺は言う。

そう、俺は今どころか

今までの人生すべてで人と付き合った事がないのだ。

「そ、そうか・・・・・。

別に悪いとかじゃない・・・・。」

マーガレットが言う。

何となく分かってきた。

マーガレットの用件が。

ただ、それは有り得ないのだと思う。

「あのだな」

マーガレットはいつも異常に可愛い目でこちらを見てきた。

「その、

もし良いのなら私と付き合ってくれ」

マーガレットが言う。

俺も予想していたがまさかこうなるとは。

さてここで一つ問いが生まれる。

「なあマーガレット水羽はどうしたんだ?」

俺が聞く。

「そもそも私が水羽を好んでいるのは

愛している人がいなくなったから。

つまりその代役だ。

新しい想い人が出来たというのに

代役をつける必要はない。」

マーガレットがいう。

何でだろう。

俺はマーガレットに親近感を持っていた気がしたのだ。

里中以上に。

だが今までマーガレットを彼女にするなんて考えても見なかった。

「俺で良いのか?」

俺は聞く。

何で俺なんかを。そう思う。

「何でってその・・・・。

お前が一緒にいてくれたからだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。って何を恥ずかしい事を・・・・」

マーガレットがいう。

やばい。可愛すぎる。

「いいぞマーガレット。

喜んでお前の彼氏になってやる」

俺はマーガレットを抱きしめた。

マーガレットは、恥ずかしがっていたが

やがて気を許してくれた。

やっと何かに持ってもらった気がした。


翌日。

マーガレットの同意の下俺は

赤部屋で付き合い始めた事を発表した。

いたのはマーガレットと俺と炎とアコンだが。




翌日。

俺はアコンと電話で話した。

「すごいね服部君。私もがんばらなきゃ」

その言葉の意味が俺には分かる。

「まあな。

さあ、今度はお前の番だ。

頑張って水羽を落とすんだからな」

俺が言う。

その後少し話してから

電話を切った。



その日の夜。

俺は熟睡していた。

そしてその中でまた会った。

誰にかって?月鴉にだ。

何のようなのかはじめは分かんなかった。

「おう月鴉どうしたんだ?」

俺が聞く。すると月鴉は顔色を変えて言う。

「冬までもたない。

せいぜいもって6月の終わりまでだ。」

月鴉が言う。

俺はその意味を理解していた。

だが理解したくなかった。

「何で?何でだ」

俺がつぶやく。

「すまない。何者かが直接お前に干渉してきて

いる。おそらく神だが、この感じ紙が人に変化しているとしか・・・」

月鴉が言った。

人に変化・・・・?

だとしたら誰が?

「気をつけろ。ホントに消しにかかってきた。

いつ消えてもおかしくない状態だ。」

月鴉が言う。

「多分やつらはお前が真の人の可能性を見せようと

消すのをやめない。

だから覚悟しておけ。いいな・・・。」

その月鴉の言葉を最後に俺は目覚めた。

だが、俺は学校に行く気分になれなかった。

怖かった。だから俺は外に出た。

親にばれても無視して飛び出した。

誰かに助けてほしい。

でも怖い。

だから俺は走った。

そして結局とある神社の前に来た。

そこは俺と水羽が始めて異界に行った場所だ。

俺たちはそこでかくれんぼをしていた.

俺はここが好きだった。

性格にはここの近くにある草むらが好きだった。

そこに隠れていた。

小さいころだけどな。

でも何故か俺はそこに隠れた。

スマホも何にももってきてない。

一応着替えはしたがそれだって適当だ。



しばらくたった。

俺はずっと隠れていた。

するとかさかさって音がした。

そして現れた。

水羽と里中とマーガレットとアコンが。

「どうしたの?氷馬。」

水羽が言ってくれた。微笑んでくれた。

そこに皆がいた。

「やっぱり氷馬何か隠しているでしょ。」

水羽がいった。

「例えば自分が運命の子とか」

運命の子・・・・・・・・・。

そういえばマーガレットも言っていたな。

運命の子か。

・・・・。今思えばそれって『イザナギ』の事なのかもな。

「ああ、そうだ。

やっぱ敵わないなお前には」

俺は言う。

ホント敵わない。ホント。

「気をつけて氷馬。

運命の子は、神の作り出した失敗作。

全力で消しにくる。」

水羽はまるですべてを知っているようだった。

「話してもいいか全部」

俺はもうすぐ消える事、自分が『イザナギ』である事などを

洗いざらい話した。

「そっか。

やっぱすごいね氷馬は。

僕たちも手伝うからね。一人じゃ抱え込めないもん。」

水羽が言ってくれた。

それに続いて里中、マーガレット、アコンも

協力を決意してくれた。



俺には仲間がいてくれる。

だから動いていける。



翌日。俺は学校に行った。

するとすでに生徒会長を決める選挙の広報活動で

あたりはいっぱいだった。

俺は思う。

もし消えたとしてアコンと水羽にくっつけさせなければ

俺はただ存在したかすら分からなくなる。

そんなのはいやだ。

ならくっつけさせる。

俺は朝早くアコンを呼び出した。

「いいかアコン。お前は生徒会長選挙に出る」

俺はいきなり言う。

「へ?」

アコンが聞き返す。

「いいかインパクトが一番って言ったろ。

なら生徒会長というポジションを得るんだ。」

俺が言う。

全く思いつきの奴だ俺は・・・・・。

「うんいいけど・・・。」

アコンが言った。

思いつきでも数うちゃ当たるだろ。


という事でアコンは放課後赤部屋で

公約を発表する事となった。

勿論出馬届けは出した。

案外潔かった。




放課後。

今日は珍しく全員そろっている。

というか水羽に聞いた所

里中と俺について話し合っていたらしい。

つまりは俺が最近おかしいと思ったんだろう。

「えっと皆に言いたい事があります。

私、森川幸は生徒会長選挙に立候補します。」

アコンが皆を集めて言う。

炎は今年も立候補するらしいので

ライバルだ。

「私が生徒会長になったあかつきには

どの生徒も皆が楽しく暮らせるように

学校中をきれいにします。」

アコンが公約を言う。

なんというか普通だ。

ひねりがない。

「ど、どう?」

緊張していたのかアコンが崩れる。

「うーん・・・・。

ひねりがない。普通すぎる。

実際きれいにしたぐらいで楽しく過ごせるか?」

俺がだめだしする。

「うむ、確かのそのとおりだ。

もう少し大きな事をやるように印象つけないと

イメージが低くなってしまう。」

炎が言う。

「そっか・・・・・。」

アコンがしょぼくれてる様子を見せる。

「じゃあ、皆はどんな事をすると楽しく暮らせる?」

アコンが聞く。

うん。いい決断だ。

「もっと魔術を打ちやすくして欲しいな」

とマーガレット。

「今のままで十分」

と水羽。

「うーん、しいて言えばゲームとアニメを学校でも見たり

やったりできるようにしてほしい。」

と里中。

「皆が笑っているだけでいい」

と炎。

決断はいいが聞く相手が違ったな。

誰一人かぶってない。

「皆違うんだ・・・・。」

アコンも困っているようだ。

「いいじゃないか。

それが部長の公約だよ。

皆違う事を許す事こそが。

皆違うって気がついたからこその公約だ。」

炎がいいアドバイスをくれた。

「なるほど・・・・・・。

皆さん聞いてください。

私が生徒会長になったら

皆が違うという事を理解して

みんなの意見を聞いて

みんなの願いをかなえていきます。」

アコンがまとめた。

全く炎様様だな。

「そういえば炎も今年出るんだろ。

今年の公約は何にするんだ?」

俺が聞く。

「それはだな・・・・」

炎は若干戸惑っているようだった。

「私が生徒会長になったなら

より自由な学校を目指し

制服制度を廃止する。

更にかつてこの地で行われていたという

舞踏会を毎月行う。」

炎は堂々としていた。

公約もしっかりとしている。

この公約の何を迷ったのか?

「さすがだな。

堂々としている。」

俺が批評するかのように言う。

「うん。委員長はこういうの得意だもんね。」

と里中が言う。

「森川さんも良かったけど

委員長もうまいね」

と水羽。

アコンはというと・・・・

ただ呆然と立ち尽くしていた。

勝ち目がないと踏んだか?

「やっぱり諦めてないんだな。」

俺が言う。

諦めてないというのは舞踏会の事だ。

「ああ、去年は交渉が長引いて結局駄目だったからな。

今年こそは絶対な」

ここまで炎が舞踏会を推しているのかというと

彼女は西暦700年くらいにこの地方でやっていたという

舞踏会が好きなのだ。

そしてそれをやるために

校則と五月蝿くなり

取り付かれ

それでもまだ思いが絶えてないからだ。

再開したら面白そうだなと思う。

そしてその日は解散となった。

「なあ、お前。

今日の7時に時計台広場に来い」

マーガレットが言った。

俺はいやな予感がしたが了承した。


そして7時。

俺はちょうどの時間にたどり着いた。

そこにはマーガレットがいた。

ベンチに座りぐたっとしている。

近づくと床にマーガレットのスマホが落ちているのに気づく。

「マーガレット?」

俺はマーガレットをのぞく。

すると頭から血が出ていた。

それだけじゃない。

確実に凍死していた。

血が凍り今にも凍てついたオーラがこちらに来そうだ。

「どういうことなんだ。」

俺はつぶやく。

そして思い出す。

マーガレットは俺を運命の子だといった。

そして今俺を呼び出した。

俺はマーガレットのスマホを拾い何か情報かメモがないか調べる。

するとそこに1つのメモを見つけた。

俺はメモを開く。

そこには「8年前氷馬たちが関わった事件が始まり

神はあの時氷間たちに会うはずの『|柊真白(ひいらぎましろ)』を殺した。

彼女が助かればこの事件は終わっていた。」と無機質に書かれていた。

俺はマーガレットが死んでいる事を確信した。

ここで救急車を呼んでも意味はない。

が、恋人であり仲間であるマーガレットの死体をここにおいておくのは嫌だった。

でも、ここで呼んだらおそらく疑われる。

少しだが傷口にも触れてしまったからな。

それじゃあ、神の思い通りだ。

そうやって捕まえたところを消す。

なら、その手には乗らない。

俺は水羽に電話をかけた。

勿論隠れてな。

「水羽、時計台広場でマーガレットが死んでる。

多分神の仕業だ。

多分救急車を呼んでも意味ない。

でもここに置いてけぼりにするのはやだ。

そこでお前に頼みたい。」

俺は親友に頼った。

勇気があって優しい親友に。

「分かった。でも氷馬はどうするの?」

水羽が聞く。

「俺は今から異界に行く。

そして時を戻す。

8年前がすべての始まりだったんだ。

俺は時を巻き戻せるからな。

そしたらよろしくな相棒。」

俺は異界に行くとき必ず呼んだ水羽の呼び方を使った。

これには強い覚悟が含まれている。

「うん。分かった。

ただ気をつけて。氷馬は何でも一人で背負うからさ。

マーガレットの事、今までの事、

全部一人で背負おうとしているだろうけど

自分のせいだって思えるほど

人間一人の力はたいした事ないんだから。

皆で背負えればいいんだよ。

忘れないでね」

水羽と挨拶をして俺は異界に向かった。

世界で一番マナの多い世界『ヴァルハラ』へ。



今終わった学園生活。

ただ、きっと続きがある。

要するに8年前に遣り残した事があるんだ。

それさえやればいいんだ。

だがきっとこれは長いたびになるだろう。

不安だ。どんな大きなものが待っているのか?

「氷馬は何でも一人で背負うからさ。

マーガレットの事、今までの事、

全部一人で背負おうとしているだろうけど

自分のせいだって思えるほど

人間一人の力はたいした事ないんだから。

皆で背負えればいいんだよ。

忘れないでね」

不意に水羽の言葉がを思い出す。

8年前。小3の水羽も

きっと一緒に考えてくれる。

きっとつかむ。

皆で笑ってそして最後には皆で恋して

ずっと一緒にいつまでも笑える未来を。




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