今を紡ぎ、明日へ繋げる物語
第17歩 『紡ぐ』
ーーー気まずい・・・・・・・・・!
背後から聞こえる水音一つ一つがレイの神経を撫でる。
今二人は背中を向け合って、湯船につかっていた。
もちろん気恥ずかしさから無言。
頭が真っ白になって話題が何も思いつかない。
振り向けばそこに全裸の異性がいる。
ーーーあぁ、なんか、ぼーっとしてきた・・・。
「あの、レイさん・・・」
「ほひゃ?!」
突然の呼びかけに反応しきれずに変な声が出た。
「れ、レイさんは、言ってくれましたよね。私のことが、す、すす、好きっ・・・・・・・・・だって」
「え、う、うん・・・」
改めて口にされることに若干の気恥ずかしさを感じ、レイは頭をかく。
「私はレイさんに、助けて頂きました。救って頂きました。私は・・・・・・・・・」
そこから、フラエは黙りこくってしまう。
次の言葉が紡げずにいるのだろう。
レイは待った。
フラエが話し始めるまで。
数分が経過した。
そして、フラエは口を開く。
「私はっ・・・・・・・・・!」
意を決したように立ち上がる。
レイは跳ねる水音を背中で感じながら、フラエの次の言葉を待った。
「私は、れ、レイさんのことが・・・・・・!」
そしてーーーーーーーーー。
フラエは倒れた。
風呂場の熱気と、極度の緊張により思いっきりお湯の中に顔面から突っ込んだ。
◆◆◆
「んっ・・・・・・・・・うぅ?」
「あ、起きた?フラエ」
あれから、レイは倒れたフラエを抱え、部屋に運んで介抱していた。
「あれ・・・・・・?私・・・」
フラエは自分の体を見下ろし、気づく。
「ふっ、服着てる!?なっ、えっ!?」
「んー、ごめん。流石に裸のままじゃダメだからね」
レイの言葉にフラエの顔が赤く染まる。
「じゃ、じゃあ私、レイさんに、裸・・・見られ・・・・・・!うぅううぅーーううう!!」
ーーーというか、お風呂場で見ちゃって
たんだけど・・・。
ベッドの上で悶えるフラエにレイは声をかける。
「それでね?フラエ。さっき、君が言おうとしてたこと、なんだけど・・・」
「は、はい。分かりました。言います」
フラエは少し俯きながら、言葉を紡ぎ、繋いでいく。
「私は、レイさんに助けられました。あの時のレイさんは、本当に、かっ、格好良かった・・・です」
向かい合う二人の顔は耳まで染まっている。
「私は・・・・・・」
「レイさんが、・・・好き」
フラエが紡いだその言葉は暖かく、レイの心に染み渡っていった。
俯くフラエに、レイは今の気持ちを紡ぐ。
「ありがとう。僕も、フラエが好きだ」
二人は顔を見合わせて笑いあった。
しばらく、頬の熱が冷めることはないだろう。
想いは今を紡ぎ、明日へ繋がっていく。
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