第2話 魔王現る

「……と言うわけだ。皆の意見を聞きたい」


 幹部たちを呼び寄せ、説明をする。


「あの、魔王様」


 リザードマンが手を上げる。


「もし採用された場合、我々の名を遺していただけるのでしょうか?」

「無論だ。歴史書には発案者として載せる予定だ」


 幹部たちから声が上がる。


「では、我こそはと言う者はいるか?」


 大魔導師の声に幹部たちから次々と手が挙がった。


「ゴーレムよ。発言を許す」

「まずは出迎える際の演出が肝心かと」

「ほう?」

「霧の中から現れる。雷と共に現れる。業火の中から現れるなど、不気味さや荘厳さと共に出現するのはボスらしいかと思います」

「良い意見だ。褒めてやるゴーレム」

「はっ、ありがたき幸せ!」


「しかし魔王様。最終決戦が玉座の間だと天変地異の類は使いづらいのでは?」


 大魔導師の提言に魔王はしばし考え込む。


「……うむ。城が崩壊するか火事になりかねんな」

「となれば霧の演出が最良でしょうか?」

「それで行こう」


「恐れながら」

「どうしたスライム」


 スライムが集団の中で飛び跳ねながら主張する。


「霧の演出だと常に湿気が高くなるものと思われますが」

「……確かにカビだらけの城は嫌だな」

「では、闇の演出などいかがでしょう?」

「闇か……その中から余が現れるのも不気味さを際立たせるな」


「恐れながら」

「どうしたシャドー」


 柱の陰からシャドーが現れる。


「真っ暗闇では城内の通行に支障が」

「お前は見分けがつかなくなるな……うむ。生活環境を壊すのはよくない」

「では、逆に明るくするのはいかがでしょう?」

「逆転の発想だな。面白い」

「では、シャンデリアなどを追加しておきましょう」


 手が挙がる。


「恐れながら」

「何だセイレーン」

「静寂の中の登場も悪くないと思いますが、やはり魔王様の登場ですから音楽くらいは特別な物を用意するべきだと思います」

「うむ。悪くないな、大魔導師」

「はっ、それでは楽団を周囲に配置いたします」

「歌も欲しいな。セイレーン、お前が歌え。最終決戦に相応しい格調高いものをな」

「はっ!」

「では、最終決戦はライトアップした玉座の間で魔王様が登場。演出は音楽と歌で決定といたします」

「大義である」

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