魔王軍重要案件決定会議

結葉 天樹

第1話 招集

「暇だ」


 玉座にもたれながら魔王は呟く。


「暇ですな」


 その傍らで大魔導師が頷いた。


「世界征服の進行状況は?」

「はっ。既に世界の大半は魔王様の領土に」

「順調だな」

「順調でございます」


 世界征服を開始して数か月。

 圧倒的な魔王の軍勢の前に、人間の土地は次々と侵略されていた。


「そう言えばそろそろ出て来んのか?」

「何がですか?」

「その……あれだ。そう。勇者だ勇者」

「報告は聞いておりませんな」


 魔王は残念そうに溜息をついた。


「少しは張り合いが欲しいものだな」

「ところで魔王様。もし魔王様の元へと勇者たちが辿り着いた時、どう出迎えるかお考えで?」

「む……いや、考えてなかった」

「それはいけません。どちらかが倒されるとしても、最終決戦は歴史に残ります。その際に妙な言動が残っては恥と言うもの」

「それはまずいな。よし、今のうちに考えておくとしよう」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る