3頁目「サンタ・ニンジャ」

「知ってるかい、メアリー」


「なにかしら、ジョージ」


「日本という国では、ニンジャがサンタクロースをやっているらしい」


「まぁ! なんてこと!」


「僕も最初聞いた時には驚いたよ。けどね、よくよく考えてみると納得が行くんだよ。どうやら〝ニン・ジツ〟には、ステルス機能搭載で煙突から屋内に侵入するというびっくりぽんなスキルがあるらしい」


「エクセレント! 素晴らしいわ、ジョージ! ニンジャってサイコー!」


「あぁ……だが一つだけ気をつけないといけないんだ」


「気をつけないといけないこと?」


「そう。サンタ・ニンジャの侵入に気づいても、けっして目を開けてはならない。ましてやその人物の覆面下の素顔を尋ねてはならないのさ……」


「わかってるわ、ジョージ。だってその覆面の下には、子供たちが大好きなあの人の素顔が隠されてるんですものね」


「違うんだ、メアリー、そうじゃないんだ……」


「? どういうことなの?」


「サンタ・ニンジャがやってきた時に目を覚ましているとね。一撃で首をはね飛ばされてしまうのさ」


「!?」


「だから、日本の子供たちのクリスマスは、毎年が命がけなんだ。どれだけプレゼントに胸が高鳴っても、逸る気持ちを抑えつけてでも眠らないといけない。だってそうじゃないと、二度とプレゼントを手にする機会は訪れないのだから……」


「な、なんて恐ろしい国なの……! 日本ってこわい!!」


「けどそれこそワビ・サビの神髄ってやつなのさ、メアリー。日本に行く機会があったら覚えておくといいよ。日本で冬場にマフラーを撒いている子供たちは、みんなニンジャからの一撃を警戒してるんだ。あれ、実はクサリ・カタビラだから」


「すごいのね、ジョージって物知りだわ。ステキ」


「いやいや、そんなことないって。ただの一般常識だよ」



 完。

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