ポストクレジット

Curtain call

「隆也!」

 わたしが何度呼んでも彼はピクリとも動かない。死んだわけでは無いみたいだけど……

「生命力を使い果たしている、動く事はないだろう」

 後ろから告げたキミア先生に縋るように確認する。

「治療は……出来ないんですか」

「そう言う問題じゃない。壊れていなくとも電気が無ければ機械は動かない、それと同じだ」

「じゃあ、生命力を分ければ」

「無駄だ。錬金石での生命力の受け渡しは効率が最悪だ、仮に渡したとしても数日持たずに二人死ぬだけだ」

「じゃあ、何処かから生命力を」

「調達すると? そんな事ができるか?」

 そう、そもそも他の生物の生命力を取り出す事なんて出来やしない。何かで生命力を作り出すことも……

「…………」

 頭の中で全てがつながる。たった一つの、この物語をハッピーエンドに向かわせる道筋が。

「諦めろ、辛い事だろうがな」

「キミア先生、隆也はどれくらい持ちますか?」

「このまま放っておけば一日と持たん。だがワタシがつきっきりで延命措置を施せば……一月は持つ。もちろん目は覚さない、このままの状態だが」

「お願い、出来ますか」

「覚悟を決める時間くらいは必要か……いいだろう」

 キミア先生は早足で錬金の準備を済ませる。

「コカナシ、サポート頼む」

「わかりました」

 わたしはソレを横目に歩き出す。

「トモノ、何処へ……」

「ハンス・グレーテに行ってきます」


 *


 一週間後、わたしはアルカロイドに戻ってきた。準備は整っている、後は成功するかどうか……

「別れの準備は済んだか」

 汗だくの先生がわたしを見るなりそう言った。

「いえ、別れではありません」

「何を言っている」

「助けます」

「どうやって」

「賢者の石を作ります」

 ビルケが使っていたあらゆるエネルギーを生命力に変換する石、それを使えば生命力は生み出せる。

「素材はどうする。殆どは代用できるが龍の血だけは必須だぞ」

「それなら、ここに」

 小人の村で貰った宝石のような塊。村では龍の目と言われていたけれど……龍の目のみが残るとは考えにくい。ならばコレは……

「龍の血です」

「……なるほど、しかし変換元はどうする。人一人を生かすだけに必要なエネルギーは」

「子供の成長するエネルギー……ですよね」

「ああ、どうするつもりだ」

「それも、アテがあります」

 成長するエネルギーを持て余し、それによって困っている生物をわたしは隆也から聞いていた。

「……来ました」

 アルカロイド中に地響きのような音が鳴る。

 地震などでは無く、一匹の犬が走っただけである。

 かつてハンスで暴れていた白狼、いや大犬。彼が名付けたその名は……イアン。

「身体を蝕む程の成長エネルギー、しかもタカとのコネクトも残っている……」

 キミア先生は少し笑い、汗を拭う。

「いいだろう、賢者の石を作ろうじゃないか」

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