走る、走る、走る、走る。

 二人はアテもなく走った。

 一日の間にいくつかの街を渡り、日が落ちた頃にアルスが来ないであろう町外れの宿でようやく止まる。



 宿のベッドに倒れ込んでキミアはピクリとも動かなかった。

「…………」

 動けやしない、何をどう動けば良いかもわからない。ただ師匠について行ってただけだから何もわからない。

 時折コカナシが様子を伺ってきている気配がするが、そちらに目を向ける事もできない。



 そんな数時間が流れ、痺れを切らしたコカナシがキミアの肩を叩く。

「…………」

 キミアは無視を決め込むがコカナシは止めない。

「……放っておいてくれ」

 肩にしつこく衝撃が来る。数分間続いたそれにキミアは勢いよく起き上がりコカナシの手を払う。

「放っておいてくれって言ってるだろ!」

 パチン、と予想以上に強い音にキミアはほんの少し冷静になる。

「すまん……」

 転んだコカナシはスカートの埃を払い、床に落ちた封筒を拾ってキミアに差し出す。

『キミアへ』その筆跡はゲンの物であった。

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