⑥
「ん……ぐ」
なんとか飲み込んだ錬金石に体力を通す。
胃液で僅かに溶け出した錬金石の成分を血流に乗せて全身に巡らせる。
これで俺は……俺自身が素材になった。
「両手両足、強化」
握った拳は自身でも痛い程に強い。そのままタックルをして扉を破った。
*
突然壊れた扉に全員の手が止まった。ここがチャンスだ。手足の力を強化して近くにいた男に殴りかかる。
「うわ……うわうわうわ!」
走り出した筈が跳躍並みに飛んでしまう……が、そのまま拳が男に当たり壁にぶち当たる。
恐らくこいつは気を失った、確認する時間すら隙になる。もう一人……
足の強化だけをそのままに、肩を強化。拳はいらない、俺はただ……
「ぶつかるだけだ!」
男を肉壁にする事でダメージは軽減できた。残るはアナグマ一人。
自分に行使しているとはいえ錬金術。体力は使う、加減もわからず使っていたからこれが最後になるだろう。
ならば……持ってけるだけ持ってけ。
「錬金対象、全身……強化!」
ぶつかるだけでもいいが最後の一撃。たとえ片腕が潰れようともコレで決めなければならない。
さっきまでの二回で大体の感覚は掴んだ。アナグマと俺の距離ならば届くのに一秒も要らない、前へ飛び出すと同時に……拳を振り下ろす!
「……え?」
振り下ろした拳は空を切る。飛んだ先にアナグマがいない。そのまま壁にぶつかって倒れこむ。
避けれる速さでは無かった筈だ。だとすれば彼は……
「動きが素人だ。身体能力が高くても予測出来るならば脅威に値しない」
アナグマが俺を片足で踏む。
「この距離なら流れ弾もあるまい」
こめかみに硬くて冷たい四角が当たる。
「チェックメイトだ、青年」
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